HbA1cとグリコアルブミンを使い分ける

25/05/2017

HbA1cとグリコアルブミンを使い分ける

HbA1c グリコアルブミン 違い

HbA1cを知ろう

HbA1cは赤血球に含まれるヘモグロビンに結合した糖の割合を示します。赤血球の寿命は120日であるため2-3ヵ月前から採血時までの間、血糖コントロールが悪ければたくさん糖が結合するのでHbA1cは高くなり、血糖コントロールが良ければ糖の結合が少なく、良い値になります。

グリコアルブミン GA を知ろう

グリコアルブミン (GA)は血液中のタンパク質のなかで一番多いアルブミンに結合した糖の割合を示します。アルブミンの半減期が17日であるため3週間前から採血時までの平均血糖値を反映します。HbA1cと同様、血糖コントロールが悪ければ高く、良ければ低くなります。

GAを3で割ったらHbA1c

血糖が安定している場合、GAはHbA1cの約3倍です。

例)GAが18%なら、HbA1cはおおよそ6%だと思って下さい。

ただし・・・

両者の存続期間が違うため、3倍の法則が通じるのは2ヵ月以上にわたり血糖値が安定している場合に限ります。血糖値が改善あるいは悪化するにつれてGAの方が迅速に変動することから、HbA1cとGAは乖離する(かけ離れてしまう)ことが珍しくありません。

両者の特性の違いを踏まえて言いますと、HbA1cは長期の指標として血糖コントロールが安定した患者さんのの血糖管理に用いられます。また、糖尿病の診断にも用いられます。

一方、GAはやや短期の指標として糖尿病治療を開始した時、経口糖尿病薬を開始した時、インスリン導入した時など、糖尿病治療の開始や治療法の変更、治療効果の確認に役立ちます。血糖が変動が激しい糖尿病例や糖尿病の治療開始後など血糖の変動が激しい場合、妊娠時などより厳密な血糖コントロールを必要とする場合はHbA1cとGAを併用することが望ましいとされています。通常はHbA1c,GAのいずれか1項目を月1回しか保険で検査することができませんが、妊娠中の患者さん、1型糖尿病患者さん、経口血糖降下薬の投与を開始して6月以内の患者さん、インスリン治療を開始して6月以内の患者さんは、もう一項目を月1回に限り別に算定できます。

HbA1cは万能ではない!

過去2-3ヶ月の血糖コントロール状況の指標であるHbA1cは便利な指標ですが、万能ではありません。うまく病状を反映できないケースがあることを知っておいて下さい。

貧血の患者さん、貧血からの回復後間もない患者さん

貧血ではそもそもヘモグロビンが下がってしまうので、HbA1cは実力以上に低く出ます。また、貧血からの回復期には赤血球をたくさん造って対応しようとするため、相対的に若い赤血球の比率が高まります。肝硬変や溶血のある場合、腎不全でエリスロポエチン製剤を投与している場合、加齢による腎機能低下例も同様です。HbA1cは見かけ上低値に傾くので血糖コントロールを見誤らないように注意が必要です。このような時はグリコアルブミンが有用です。

反対に、乳び血症やアルコール多飲ではHbA1cは実力以上に高く出てしまいます。

肝硬変、甲状腺機能低下症

肝硬変では肝臓でのアルブミンの産生・分解能が低下するため,グリコアルブミン値が上昇します。甲状腺機能低下症でも同様です。グリコアルブミンはHbA1cよりも短期の血糖変動をより鋭敏に反映するので、血糖コントロールが急激に悪化している局面では両者の比がより大きくなり、逆に急速に血糖コントロールが改善している場合には両者の比がより低くなります。また肝硬変では前述の理由でHbA1cが低値に、グリコアルブミンが高値に傾くため、両者の比が大きくなります。

肝硬変の場合、HbA1c、グリコアルブミンの両者ともに正確な血糖コントロール状態を反映しないので、両者を比較することによってより正確な病態把握につなげることができるはずです(上記に記載した条件を満たせば同月に両方検査できますが、現実には難しいでしょう)。