要点まとめ(劇症1型糖尿病)
- 劇症1型糖尿病 は、発症から数日以内にインスリン分泌が枯渇する急性進行型。
- 初期症状 は感冒様症状や多飲・倦怠感など。迅速な診断とインスリン補充療法が不可欠。
- 診断基準 には糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)、低HbA1c(過去1〜2か月の血糖平均値)、著明なインスリン分泌低下が含まれる。
- 治療 はインスリン療法+持続血糖モニタリング(持続血糖モニタリング(CGM))、持続皮下インスリン注入療法(CSII)が有効。
- 生活指導 として低血糖対策、食事管理、ストレス軽減が重要。
- 日本での有病者数 は5,000~7,000人、年間発症は約300人と推定。
劇症1型糖尿病とは
劇症1型糖尿病(Fulminant type 1 diabetes)は、 発症から数日以内に膵β細胞がほぼ完全に破壊 される極めて進行の速い1型糖尿病です。日本での報告が多く、 発熱・腹痛・咽頭痛などの感冒様症状 の後に、急激な高血糖と糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)を来すことが特徴です。 初期症状としては、 口渇・多飲・倦怠感・呼吸の異常 などが見られ、早期に対応しなければ命に関わることもあります。
スクリーニング基準(疑うべき状況)
項目 | 内容 |
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発症の速さ | 糖尿病症状が1週間以内に急速に出現 |
血糖値 | 初診時 288mg/dL 以上 |
HbA1c(過去1〜2か月の血糖平均値) | 8.7%未満 |
インスリン分泌指標 | 尿中Cペプチド(インスリン分泌の指標)<10μg/day または 空腹時Cペプチド(インスリン分泌の指標)<0.3ng/mL+負荷後<0.5ng/mL |
診断基準(以下すべてを満たす)
項目 | 内容 |
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① ケトーシス/糖尿病性ケトアシドーシス(DKA) | 発症後1週間以内に出現 |
② 血糖・HbA1c(過去1〜2か月の血糖平均値) | 血糖288mg/dL以上かつHbA1c(過去1〜2か月の血糖平均値)<8.7% |
③ Cペプチド(インスリン分泌の指標) | 尿中Cペプチド(インスリン分泌の指標)<10μg/day または空腹時<0.3ng/mL+負荷後<0.5ng/mL |
疫学(日本における状況)
項目 | 内容 |
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頻度 | 年間報告数は数百例 |
全1型糖尿病の割合 | 約20%が劇症型 |
好発年齢 | 30?50歳代を中心に、20代・60代にも見られる |
性差 | やや女性に多い傾向 |
治療と今後の管理
劇症1型糖尿病では、 早期のインスリン治療が生命を左右 します。インスリン分泌が完全に失われるため、 生涯にわたるインスリン補充療法 が必要です。持続皮下インスリン注入(持続皮下インスリン注入療法(CSII))や持続血糖測定(持続血糖モニタリング(CGM))の導入が推奨される場合もあります。
患者さんへ
風邪のような症状の後に急な多飲・多尿・倦怠感 があれば、すぐに医療機関を受診してください。早期発見と治療が命を救います。
治療と管理に関する情報
インスリン療法の開始と管理
劇症1型糖尿病の発症後、インスリン分泌が急速に低下するため、早期のインスリン補充療法が必須です。初期治療では、超速効型インスリンや基礎インスリンを使用することが一般的です。治療目標として、目標血糖値(例:空腹時血糖100?130 mg/dL、食後血糖180 mg/dL以下)を設定し、定期的に評価することが必要です。
血糖モニタリング
持続血糖モニタリング(持続血糖モニタリング(CGM))の使用が劇症1型糖尿病の管理においてどのように役立つかを説明します。持続血糖モニタリング(CGM)を使用することで、血糖のリアルタイムでの変動を把握でき、治療の調整がしやすくなります。持続皮下インスリン注入ポンプ療法(持続皮下インスリン注入療法(CSII))を併用することで、インスリンの連続的な投与が可能となり、血糖コントロールがより精密に行えます。
急性期の管理
劇症1型糖尿病の急性期には、糖尿病性糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)(DKA)を予防し、迅速に対応することが重要です。インスリン補充療法と適切な補液による電解質管理が必要となります。血糖値が非常に高い場合や、ケトン体が増加している場合は、緊急の治療が必要です。
患者教育と生活指導の強化
低血糖時の対応
低血糖症状(震え、発汗、頭痛、めまい、動悸など)を早期に認識し、適切に対応することが重要です。低血糖時は、グルコースや砂糖を摂取することで血糖値を回復させる必要があります。自己管理の一環として、血糖値の定期的なチェックを行い、低血糖の予防策を講じることが大切です。
日常生活での注意点
食事療法では、糖質制限とカーボカウントを取り入れることが有効です。特に、食事後の血糖値上昇を抑えるために、インスリン投与と食事のタイミングを調整することが求められます。また、運動を行う際は、血糖測定を事前に行い、運動後に低血糖を防ぐための対策を講じることが大切です。
ストレス管理
ストレスが血糖に与える影響について説明し、ストレスを軽減するための方法(リラクゼーション技法、趣味の時間など)について触れます。これにより、患者が自己管理しやすくなり、血糖コントロールが改善されます。
日本における劇症1型糖尿病の疫学
年間発症数と有病者数の推定
急性1型糖尿病の約20%が劇症1型糖尿病と推定されており、急性1型糖尿病の年間発症率はおよそ1.5/10万人とされています。これに基づくと、劇症1型糖尿病の年間発症数は全国で約300人前後と推定されます。
日本内分泌学会の2009年の調査では、劇症1型糖尿病の患者数は5,000~7,000人と推計されています。
出典
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