冬は血圧が上がります。
寒さにより全身の血管が収縮するため、冬は夏よりも血圧が上がりやすくなります。運動不足で体重増加になりやすいこと、鍋物など塩分の多い食事が増える一方、発汗が減って塩分が排泄されず体内が塩分過剰になりやすいことも血圧上昇の要因となります。
高血圧は心筋梗塞などの心臓の病気や脳梗塞、脳出血などの脳の病気のリスクを高めます。厚生労働省のデータによると心臓の病気、脳血管の病気による1日あたりの死亡数は6~8月に比べて12~3月までの冬場が明らかに多く、1月が最多です。
高血圧は自覚症状がほとんどないので自分では気づかない方が多いです。血圧が高いと言われている方は、定期的に血圧を測定して数値を確認しましょう。
自宅で測定する場合の高血圧の基準
135/85mmHgを超える場合は高血圧です。
起床後の血圧が135/85mmHgを超える場合、脳卒中のリスクが高くなることが報告されています。高血圧の方は薬の服用の有無に関わらず、朝の血圧測定を心掛けて下さい。
冬に注意することは何ですか?
気温の低下が血圧の急上昇を招き、心筋梗塞や脳梗塞を起こします。
朝方の室温低下が早朝高血圧を起こすため、朝方に室内を温めることが大切です。暖房器具のタイマーを起床時間に合わせることも有効でしょう。
入浴時はできれば脱衣所にも暖房をおいて暖かくしておきましょう。寒いところから急に熱いお風呂に入るのも良くありません。39℃~41℃くらいのお湯にゆっくりと浸かるようにしましょう。洗顔や手洗いも冷たい水よりも温水で行うことをお勧めします。
飲酒は夜間の血圧を低下させるものの、逆に早朝高血圧が生じやすくなるので過度な飲酒には注意が必要です。
ウォーキングなど適度な運動には血圧を下げる効果がありますが、薄着は避け、暖かい服装で行いましょう。
塩分のとりすぎに注意し、薄い味付けを心がけましょう。麺類の汁は残し、加工食品やインスタント食品の摂取はできるだけ控えましょう。
多忙な生活や精神的な緊張の連続は血圧に悪影響を及ぼします。できるだけ息抜きをするよう心がけ、睡眠を十分にとりましょう。
▶ 睡眠時無呼吸症候群(SAS)と早朝高血圧の関係
SASは夜間の低酸素状態と覚醒反応により交感神経が活性化し、早朝の血圧を異常に上昇させることがあります。
日本高血圧学会ガイドライン(JSH2019)でも、早朝高血圧の原因の一つとしてSASが挙げられています。
CPAP治療によって早朝高血圧が改善する可能性があり、早朝高血圧を指摘された方はSASの検査を検討する価値があります。
服薬治療を受けている患者さんにも、早朝高血圧がみられることが少なくありません。原因は夕食後に服用した降圧薬の効果が、深夜や早朝には切れてしまうためです。この場合には薬の種類や服用時間などを変更する必要があるので、医師に相談してください。早朝高血圧をみつけるためには家庭での朝の血圧測定が大切です。朝の血圧が高い場合には、早朝高血圧を疑ってみましょう。
ご相談・受診をご希望の方へ
早朝高血圧は、年齢のせいと諦めてしまいがちな方が多いものの、治療によって大きく改善する可能性があります。
良くならずお困りの方はお気軽にご相談ください。
この記事の監修医師
下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長(船橋市)
- 日本内科学会 総合内科専門医
- 日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
- 日本甲状腺学会 専門医
- 日本循環器学会 専門医
- 日本老年医学会 老年科専門医・指導医
高血圧症、早朝高血圧症、血圧の季節変動についても、専門的な視点から診療を行っています。