階段を上ると息切れがする、足がむくむ——これらの症状は心不全の代表的なサインです。心不全は「心臓のポンプ機能が低下する病気」で、早期発見と適切な治療で症状を安定させることができます。心配な症状がある方は、早めの受診と検査をご検討ください。
心不全は心臓のポンプ機能が低下する病気です。息切れ・むくみ・体重増加・疲れやすさなどの症状があり、日常生活での体重管理と塩分制限が治療の基本です。
心不全は「心臓のポンプ機能の低下」によって、全身に血液を十分に送ることができなくなる状態を指します。心臓から十分な血液が送り出せないと、体内に水分がたまりやすくなり(うっ血)、息切れやむくみといった症状が現れます。息切れやむくみは加齢や疲労と見過ごされがちですが、実は心不全のサインであることも少なくありません。
このページでは、船橋市のしもやま内科が、循環器専門医の視点から心不全に関するよくある質問に丁寧にお答えします。心配な症状がある方は、早めの受診と検査をご検討ください。

しもやま内科では、心エコー・頸動脈エコー・ホルター心電図・心電図・レントゲン・採血を活用し、心不全の診断と管理に取り組んでいます。気になる症状がある方は、お早めにご相談ください。
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心不全とは?——HFrEF・HFpEF・HFmrEFの違い
心不全は、心臓のポンプ機能が何らかの原因で低下し、全身に十分な血液を送り出せなくなる病気です。大きく分けて以下の3つのタイプがあります。
| 分類 | 左室駆出率(LVEF) | 特徴 |
|---|---|---|
| HFrEF(収縮不全) | 40%未満 | 心臓の収縮力が低下。虚血性心疾患や心筋症が原因に。 |
| HFmrEF(中間域) | 40-49% | HFrEFとHFpEFの中間的な領域。治療反応性が期待できる群。 |
| HFpEF(拡張不全) | 50%以上 | 心臓の硬さが増し、拡張期に十分な血液を取り込めない。高血圧・糖尿病・肥満・高齢者に多い。 |
HFpEFは近年急速に患者数が増加しており、今や心不全全体の約半数を占めるとされています。HFpEFの診断には心エコーによる拡張能評価やBNP値の測定が重要です。治療薬もHFrEFとは一部異なるため、正確な分類が治療方針の鍵となります。
心不全の症状——増悪のサインと具体的な対応
心不全の代表的な症状は以下の通りです。特に短期間での体重増加(3日間で2kg以上)は体内に水分がたまっているサインであり、増悪の前触れとして重要です。
- 息切れ(呼吸困難):階段昇降や歩行で出現。進行すると安静時や夜間の息苦しさ(発作性夜間呼吸困難)に。
- むくみ(浮腫):両側の足首・下腿に現れやすい。指で押すとへこむ(圧痕浮腫)。
- 体重増加:数日で1-2kg以上の増加があればうっ血のサイン。
- 疲れやすさ・全身倦怠感:臓器への血流不足による。
- 夜間頻尿:日中は腎血流が低下し、夜間臥床時に尿量が増えるため。
- 食欲不振・腹部膨満感:消化管のうっ血による。
【すぐに119番が必要なサイン】
- 急に息苦しくなり、座っていないと息ができない(起座呼吸)
- ピンク色の泡状の痰が出る(肺水腫)
- 意識がもうろうとする
- 胸の強い痛みを伴う
上記以外でも、「いつもと違う」と感じたら早めの受診をご検討ください。特に体重が急増している場合は、早めに医療機関へ連絡しましょう。
心不全の治療——薬物療法の最新知見
心不全治療はこの10年で大きく進歩しました。かつては利尿薬とジギタリスが中心でしたが、現在は心臓のリモデリング(悪化する構造変化)を抑制する薬剤が中心となっています。
主な治療薬
| 薬剤分類 | 代表薬 | 主な効果 |
|---|---|---|
| ARNI | サクビトリルバルサルタン | ACE阻害薬+ネプリライシン阻害の2つの作用で、HFrEFの死亡率・入院率を従来のACE阻害薬よりさらに低下。 |
| SGLT2阻害薬 | ダパグリフロジン・エンパグリフロジン | 糖尿病の有無にかかわらず、HFrEF・HFpEF双方で心不全入院リスクを低減。現在の標準治療の一角。 |
| β遮断薬 | ビソプロロール・カルベジロール | 交感神経の過剰な興奮を抑え、心筋保護と心機能改善に寄与。 |
| MRA | スピロノラクトン・エプレレノン | アルドステロンの作用を阻害し、心臓の線維化進展を抑制。 |
| 利尿薬 | フロセミド・トルバプタン | うっ血症状(むくみ・肺うっ血)の改善に即効性。症状に応じて調整。 |
これらは単独ではなく、患者の状態に応じて組み合わせて使用します(ガイドライン・ダイレクテッド・メディカル・セラピー:GDMT)。特にARNI・β遮断薬・MRA・SGLT2阻害薬の4剤併用は、HFrEFにおいて標準的な治療戦略となっています。
日常生活の管理——自分でできること
心不全の治療は薬だけではありません。日々の自己管理が症状の安定と増悪予防に直結します。
① 体重測定が最も重要
毎朝、決まった時間(排尿後・朝食前)に体重を測り、記録しましょう。3日間で2kg以上の増加、あるいは1週間で2-3kg以上の増加は、体内に水分がたまっているサインです。増加傾向が見られたら、塩分の摂りすぎや水分管理の乱れを振り返り、必要に応じて医師に相談してください。
② 塩分制限(1日6g未満)
心不全の患者さんでは、原則1日6g未満の食塩制限が推奨されています。味噌汁は1日1杯まで、漬物や加工食品(ハム・かまぼこ・インスタント食品)は控えめに。減塩調味料や香辛料を活用し、薄味に慣れることが大切です。尿Na/K比検査で自分の食塩摂取量を「見える化」することも効果的です。
③ 水分管理
軽症〜中等症の心不全では厳格な水分制限は不要とされていますが、重症例や低ナトリウム血症がある場合は1日1,000〜1,500mL程度の制限が必要になることがあります。主治医の指示に従いましょう。
④ 体重コントロールと適度な運動
肥満は心臓に負担をかけます。また、運動制限が必要な急性期を除き、心臓リハビリテーション(心リハ)が強く推奨されています。心リハでは医師や理学療法士の指導のもと、ウォーキングや自転車エルゴメーターなどの有酸素運動を安全に行います。心リハにより、運動耐容能の向上・QOL改善・再入院率低下が期待できます。
心不全と併存疾患
心不全患者さんは、他の病気を合併していることが多く、それぞれが相互に影響を及ぼし合います。
- 糖尿病:心不全の重要な危険因子です。血糖コントロール不良は心筋障害を促進します。SGLT2阻害薬は糖尿病治療と心不全予防の両面で有用です。
- 慢性腎臓病(CKD):心不全と腎機能低下は密接に関連し、「心腎連関」と呼ばれます。利尿薬の効果が変わったり、電解質異常をきたしやすくなるため、定期的な採血検査が欠かせません。
- 睡眠時無呼吸症候群(SAS):心不全患者の40〜60%にSASの合併が指摘されています。睡眠中の低酸素状態は心臓に負担をかけ、心不全を悪化させます。いびきが強い、日中の眠気がある場合は検査が推奨されます。
- 高血圧:心不全の最大の原因の一つ。血圧コントロールが心不全予防・治療の基盤です。
予後と長期管理——心不全と向き合う
心不全は「治る」というより、適切な治療と生活管理によって長期にコントロールする慢性疾患です。適切な治療により、多くの患者さんが安定した日常生活を送ることができます。一方で、急性増悪による入院を繰り返すと徐々に心機能が低下していくため、増悪予防が最も重要です。
心不全の重症度はNYHA分類(I〜IV度)やBNP値で評価されます。定期的な外来受診と心エコー・採血検査で状態を把握し、治療を継続的に最適化することが長期予後の改善につながります。地域連携パスや在宅医療との連携も選択肢の一つです。
🩺 心不全に関するよくあるご質問
心不全とはどのような状態ですか?
初期症状には何がありますか?
心不全は治る病気ですか?
HFpEF(拡張不全)とHFrEF(収縮不全)の違いは?
SGLT2阻害薬はなぜ心不全に効くのですか?
しもやま内科ではどのような検査が受けられますか?
心不全の主な原因は何ですか?
治療で使われる薬は?
心不全と睡眠時無呼吸(SAS)の関係は?
生活で気をつけることは?
いつ受診すべき?注意が必要なサインは?
高齢者の心不全の特徴は?
心不全の最終段階ではどのような症状が出ますか?
循環器の症状でお悩みの方へ
👨⚕️ この記事の監修医師
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医/日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医/日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年科専門医・指導医/日本甲状腺学会 甲状腺専門医
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最終更新日:2026-08-28
👨⚕️ この記事の監修医師
下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年科専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医
糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。