甲状腺内科

甲状腺眼症の治療

28/05/2016

甲状腺眼症

眼球突出などの眼の症状:甲状腺眼症はバセドウ病患者さんに発症することが最も多いのですが、橋本病患者さんにおいても発症することがあります。

バセドウ病に伴うものはバセドウ病眼症と呼んでいます。臨床的に明らかな眼球突出は、バセドウ病患者さんの10%程度です。眼瞼の異常も含めると30%程度になると言われています。なかでも眼に対する特別な治療を必要とする人はバセドウ病患者さん全体の約3~5%程度と推測されます。バセドウ病、その他甲状腺機能亢進症に伴う眼症状がある人は甲状腺眼症について経験のある内分泌専門医、内科医、眼科医の診察を早めに受けてください。

甲状腺眼症は甲状腺機能に比例して改善するわけではない

バセドウ病に伴う動悸、多汗、体重減少など特有の症状は甲状腺ホルモンの正常化に伴い消失します。ところが、眼症状は必ずしも甲状腺機能に比例して改善するわけではありません。TSAbが高値の場合は甲状腺眼症を発症するリスクが高くなりますが、低値や陰性の患者さんでも発症することがあります。残念ながら、甲状腺ホルモンを下げる薬や甲状腺の手術だけでは眼症状は良くならず、また甲状腺機能が正常になった後に眼症状が出現することもあります。甲状腺の明らかな腫れや甲状腺機能亢進症がなく眼症状だけ出現するバセドウ病さえあるのです。

甲状腺眼症に伴う実際の眼の変化

眼球の表面は角膜、結膜、眼瞼(まぶた)で被われており眼瞼をつり上げる筋肉(眼瞼挙筋)があります。眼球の後ろには脂肪組織、眼球を動かすための小さい筋肉(外眼筋)、視神経があります。バセドウ病になぜ眼の変化が起こるのかは未だよく判っていませんが、初期に起こる眼の変化は

  • 眼瞼挙筋のけいれんによって上眼瞼が下がりにくくなる
  • 外眼筋が炎症のために腫れる
  • 脂肪組織が増殖する
    などです。

このような一次的な変化に続いて次のような変化を生じます。すなわち眼瞼の腫れ、眼球突出、結膜のむくみや充血、流涙が見られるようになります。さらに眼球突出のために眼を閉じることが困難になれば角膜潰瘍ができることもあります。外眼筋の炎症のために左右の眼が協調して動かなくなると複視(ものが二重にみえる)、外眼筋が視神経を圧迫すると視力低下を起こします。このような症状の出方には個人差があり、一度にすべての症状が出るわけではありません。初期の段階に治療を始めることができれば、より効果的と思われます。

眼球突出などの眼症状は美容上気になることですし、視力に障害が出現すると生活の質(QOL)を低下させてしまいます。甲状腺眼症の治療は非常に大切です。

甲状腺眼症の検査

甲状腺機能検査を行います。それ以外に眼窩(眼球が収まっている部位)のCT撮影やMRI撮影を行って、目の裏の筋肉の腫れや炎症が起こっていないかを調べます。CTでは外眼筋の腫れ具合や眼球突出度を短時間で正確に評価することができます。MRIを使えば外眼筋の腫れ具合だけでなく、外眼筋の炎症が新しく活動性のものかどうかがよくわかります。眼科では視力、眼圧、眼球突出度の測定、眼球の動きを調べる検査の他、目の表面に傷が入っていないかどうか調べます。このような検査で治療前の状態の把握や治療効果の判定をします。

甲状腺眼症の治療

甲状腺眼症は喫煙で悪化するため、禁煙することが最優先です。外眼筋の炎症が新しい活動性のものであれば、まず炎症をはやく鎮めるための治療を行います。先述したように、甲状腺機能亢進症が改善すると甲状腺眼症も改善することがあるため治療を開始します。しかし、アイソトープ治療の後に甲状腺眼症が悪化することがあるため、甲状腺眼症の活動性が高い場合は薬物療法か手術療法を選択します。活動性眼症に対してステロイドホルモン薬のパルス療法(0.5~1g×3日間×3クール)を行いますが、重篤な肝障害の報告があり総量を8g以下に抑えることが推奨されています。パルス療法で効果不十分、もしくは合併症などでパルス療法が難しい場合は放射線療法(1-2Gy×10回)を行います。目を閉じられないほど眼球突出が著しい場合、ステロイドで視神経の圧迫が解除できない場合は眼球の後ろの骨を一部除いて眼窩内圧を下げる手術や眼球後部の脂肪組織を一部切除する手術(眼窩減圧術)が有効です。外眼筋周囲の癒着や瘢痕を切除したり筋肉の位置や長さを調節する手術は複視の改善に有効です。

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