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甲状腺がんには乳頭がん・濾胞がん・髄様がん・未分化がんの4種類があります。乳頭がんが全体の90%以上を占め、予後は比較的良好です。ただし進行するとリンパ節転移や再発リスクがあります。
📋 要点まとめ
- 甲状腺がんは大きく4種類に分類される:乳頭がん・濾胞がん・髄様がん・未分化がん
- 乳頭がんが全体の90%以上を占め、予後が最も良好
- 濾胞がんは血行性転移に注意が必要
- 髄様がんはRET遺伝子変異による遺伝性が関与することがある
- 未分化がんは極めてまれだが、予後不良で迅速な対応が必要
- 船橋市のしもやま内科では甲状腺専門医が適切な評価と連携治療を提案
「甲状腺にしこりが見つかり、もしかしたらがんかもしれない」—— そんな不安を抱えていませんか?
甲状腺がんと一口に言っても、その種類によって性質や進行速度、治療方針、予後が大きく異なります。まずは自分がどのタイプのリスクに当てはまるのかを知ることが、適切な治療への第一歩です。当院では甲状腺専門医が超音波エコーと穿刺吸引細胞診を駆使し、正確な診断と最適な治療方針をご提案します。甲状腺のしこり全体像については「甲状腺のしこり(総論)」のページもご参照ください。

甲状腺がんの分類(病理組織型)
甲状腺がんは、顕微鏡で見た細胞の形(病理組織型)によって大きく4つに分類されます。それぞれ発生頻度や生物学的特性が異なり、治療法や予後も変わります。
| 分類 | 発生頻度 | 特徴 | 予後 |
|---|---|---|---|
| 乳頭がん | 約90%以上 | リンパ節転移を起こしやすいが進行は緩やか | 極めて良好 |
| 濾胞がん | 約5% | 血行性転移(肺・骨など)に注意 | 比較的良好 |
| 髄様がん | 約1~2% | カルシトニン産生、RET遺伝子変異関連 | やや注意が必要 |
| 未分化がん | 1%未満 | 急速に増大・浸潤、極めて予後不良 | 不良 |
この他に「低分化がん」というまれなタイプも存在しますが、臨床的には上記4型を理解しておくことが重要です。
乳頭がん(Papillary Thyroid Carcinoma)
甲状腺がんの約90%以上を占める最も一般的なタイプです。特徴として、進行が非常に緩やかで、適切な治療を行えば予後は極めて良好です。10年生存率は95%以上と報告されています[1]。
特徴
- 顕微鏡下で乳頭状(パピラリー)の構造を示す
- 女性に多く、20~50歳代で発見されることが多い
- 超音波エコーでは低エコー域、微細石灰化(砂粒腫)が特徴的
- 多発性・両側性に発生することもある
リンパ節転移
乳頭がんは他の甲状腺がんと比べてリンパ節転移を起こしやすいという特徴があります。頸部のリンパ節に転移を認めることが多く、初診時すでに40~60%の症例でリンパ節転移がみられるとも言われています[2]。しかし、リンパ節転移があっても予後は良好であり、適切な頸部郭清術を行うことで管理可能です。遠隔転移(肺、骨など)はまれで、全体の5%以下とされています。
治療
標準治療は手術(甲状腺全摘または葉切除)です。腫瘍の大きさやリンパ節転移の有無、患者の年齢や妊孕性などを考慮して術式を選択します。手術後は甲状腺ホルモン薬(チラージンなど)の内服によるTSH抑制療法と、定期的な採血・エコーによるフォローアップが重要です。転移や再発がある場合は放射性ヨウ素(RAI)治療を追加します[1]。
微小乳頭がん(マイクロパピラリー)について
1cm以下の微小乳頭がんは、特に予後が良好で、進行が極めて遅いことが知られています。高齢者や合併症がある場合などは、すぐに手術をせずに経過観察(アクティブ・サーベイランス)を選択することも可能です[3]。
濾胞がん(Follicular Thyroid Carcinoma)
甲状腺がん全体の約5%を占めるタイプです。乳頭がんに比べると頻度は低いですが、特徴的な転移経路を持つため注意が必要です。
特徴とリスク
- 顕微鏡下で濾胞状の構造を示す
- 細胞診(FNA)での良性・悪性の判定が難しい(被膜浸潤や血管浸潤の有無で判断)
- 血行性転移を起こしやすく、肺・骨・脳などへの遠隔転移リスクがある
- リンパ節転移は乳頭がんより少ない
診断と治療
濾胞がんは穿刺吸引細胞診で「濾胞性腫瘍」と判定されることが多く、良性か悪性かの確定診断には手術による切除標本の病理検査が必要です。治療の基本は手術(甲状腺全摘)であり、高リスク症例では術後に放射性ヨウ素治療を追加します[4]。
濾胞がんの10年生存率は約90%と比較的良好ですが、遠隔転移を起こした場合は予後に影響するため、術後の経過観察は特に重要です。
髄様がん(Medullary Thyroid Carcinoma)
甲状腺がん全体の約1~2%とまれなタイプです。甲状腺のC細胞(傍濾胞細胞)から発生し、カルシトニンというホルモンを産生することが特徴です。
特徴
- カルシトニンとCEA(癌胎児性抗原)が腫瘍マーカーとして有用
- RET遺伝子変異による遺伝性(MEN2型)が約25%に関与
- 散発性(遺伝性ではない)が約75%
- リンパ節転移を起こしやすく、発見時すでに転移がある場合も少なくない
遺伝性髄様がん(MEN2)
髄様がんの約4分の1は、RET遺伝子の生殖細胞系列変異によって引き起こされる遺伝性のものです。これはMEN2(多発性内分泌腫瘍症2型)という症候群の一部として発症することが多く、褐色細胞腫や副甲状腺機能亢進症を合併することがあります。家族歴がある場合は、遺伝カウンセリングと遺伝子検査が推奨されます[5]。
治療
基本は手術(甲状腺全摘+頸部リンパ節郭清)です。髄様がんの細胞は放射性ヨウ素を取り込まないため、RAI治療は効果がなく、手術による完全切除が最も重要です。進行例では分子標的薬(バンデタニブ、カボザンチニブなど)が使用されることがあります[5]。
10年生存率は約75~80%で、乳頭がん・濾胞がんよりはやや低いものの、早期発見・手術により長期生存が期待できます。
未分化がん(Anaplastic Thyroid Carcinoma)
甲状腺がん全体の1%未満と極めてまれなタイプですが、最も予後不良で、発症からの生存期間中央値は約6か月とされています[6]。
特徴
- 急速に増大し、周囲の組織(気管・食道・反回神経)に浸潤する
- 高齢者に多く、既存の乳頭がん・濾胞がんから転化することがある
- 頸部の急激な腫脹、呼吸困難、嗄声(声のかすれ)、嚥下障害で発症
治療
診断後、即座に集学的治療を開始する必要があります。手術単独での根治は難しく、化学療法・放射線療法を組み合わせた集学的治療が行われます。近年では免疫チェックポイント阻害薬や分子標的薬を用いた治療の有効性も報告されています[6]。ただし、発見が遅れた場合は緩和ケアが主体となることもあります。
未分化がんは極めて進行が速いため、頸部の急激な腫れや呼吸困難がある場合は、すぐに救急外来を受診してください。
⚠️ 緊急を要する場合
甲状腺が急に大きくなった、呼吸が苦しい、声がかすれた、食べ物が飲み込みにくい——これらの症状がある場合は、速やかに医療機関を受診してください。特に急激な症状の進行は未分化がんの可能性もあり、迅速な対応が必要です。夜間・休日の場合は救急車(119番)を遠慮なくご利用ください。
各がん種の治療法の違い
甲状腺がんの種類によって治療戦略は大きく異なります。以下に主な違いをまとめます。
| 乳頭がん | 濾胞がん | 髄様がん | 未分化がん | |
|---|---|---|---|---|
| 手術 | 葉切除または全摘 | 全摘が基本 | 全摘+リンパ節郭清 | 限定的(根治困難) |
| RAI治療 | 有効(転移・再発時に) | 有効 | 無効 | 無効 |
| TSH抑制療法 | 重要 | 重要 | 不要 | 不要 |
| 分子標的薬 | 一部の進行例で | 限定的 | 有効例あり | 併用療法の一部として |
| 経過観察(非手術) | 微小癌では選択可 | 原則なし | 原則なし | なし |
再発リスクと経過観察
甲状腺がんは治療後も長期的なフォローアップが欠かせません。
再発リスクの層別化
日本甲状腺学会のガイドラインでは、甲状腺がん(特に乳頭がん・濾胞がん)の再発リスクを以下の3段階に分類しています[1]。
- 低リスク:腫瘍が甲状腺内に限局、リンパ節転移なし、遠隔転移なし → 再発率1~5%
- 中リスク:微少なリンパ節転移あり、被膜外浸潤あり → 再発率5~20%
- 高リスク:明らかなリンパ節転移多発、被膜外浸潤高度、遠隔転移あり → 再発率20~50%
術後のフォローアップスケジュール
一般的な経過観察の目安は以下の通りです。
- 術後1年目:3~6か月ごとにエコー・採血(TSH、Tg、TgAb)
- 術後2~5年目:6~12か月ごとにエコー・採血
- 術後5年以上:年1回のエコー・採血(低リスクの場合)
- 高リスク例ではより頻回のフォローと、定期的な画像検査(CTなど)が必要[1]
予後データ(生存率)
甲状腺がんの予後は種類によって大きく異なります。以下は主な統計データです。
| がん種 | 5年生存率 | 10年生存率 |
|---|---|---|
| 乳頭がん | 約98% | 約95% |
| 濾胞がん | 約95% | 約90% |
| 髄様がん | 約85% | 約75~80% |
| 未分化がん | 約10%以下 | 極めて低い |
※数値は診断時の病期や年齢、治療内容により大きく変動します。上記はあくまで統計的な目安です。
必要な検査や治療の詳細は「甲状腺のしこり(総論)」、術後の経過については「甲状腺がん術後・RAI治療後フォローアップ」のページをご覧ください。
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📄 よくあるご質問(FAQ)
甲状腺がんの種類はいくつありますか?
甲状腺がんは主に4種類に分類されます。最も多い乳頭がん(約90%以上)、濾胞がん(約5%)、髄様がん(約1〜2%)、未分化がん(1%未満)です。この他に低分化がんというまれなタイプもあります。
乳頭がんの予後はどのくらいですか?
乳頭がんの予後は極めて良好です。10年生存率は95%以上、適切な治療を行えば完治も十分期待できます。ただし進行した場合はリンパ節転移や再発リスクがあるため、定期的なフォローアップが重要です。
濾胞がんとはどのようながんですか?
濾胞がんは甲状腺がん全体の約5%を占めるタイプで、血行性転移(肺や骨などへの遠隔転移)を起こしやすい特徴があります。細胞診での確定診断が難しい場合があり、手術後の病理検査で確定診断されます。10年生存率は約90%と比較的良好です。
髄様がんの特徴は何ですか?
髄様がんは甲状腺のC細胞から発生するまれながんです。カルシトニンというホルモンを産生するため、血中カルシトニン値が腫瘍マーカーとして有用です。約25%でRET遺伝子変異による遺伝性(MEN2型)が関与します。放射性ヨウ素治療は無効で、手術による完全切除が最も重要です。
未分化がんの治療はどうなりますか?
未分化がんは極めて進行が速く、診断後すぐに集学的治療(化学療法・放射線療法・手術の組み合わせ)が必要です。近年では免疫チェックポイント阻害薬や分子標的薬の有効性も報告されています。ただし発見が遅れると緩和ケアが主体となることもあります。生存期間中央値は約6か月とされています。
甲状腺がんは遺伝することがありますか?
すべての甲状腺がんが遺伝するわけではありません。乳頭がんや濾胞がんの大部分は遺伝性ではありませんが、髄様がんの約25%はRET遺伝子変異による遺伝性(MEN2型)です。家族性の非髄様性甲状腺がんもごくまれに報告されています。家族歴がある場合は遺伝カウンセリングが推奨されます。
甲状腺がんの生存率はどれくらいですか?
甲状腺がん全体では5年生存率約95%、10年生存率約90%と非常に良好です。ただし種類によって異なり、乳頭がんは5年生存率約98%、濾胞がん約95%、髄様がん約85%、未分化がんは10%以下です。診断時の病期や年齢によっても変動します。
甲状腺がんの再発リスクはどのくらいですか?
再発リスクは病期やリスク分類によって異なります。低リスク例では再発率1〜5%、中リスク例で5〜20%、高リスク例で20〜50%とされています。術後は定期的なエコー検査と採血(サイログロブリン測定)によるフォローアップが推奨され、多くは再発なく長期安定します。
甲状腺がんと良性のしこり(結節)の違いは何ですか?
良性のしこり(腺腫様甲状腺腫や嚢胞など)はがん細胞を含まず、増殖がゆっくりで転移することはありません。甲状腺がんは悪性の細胞から構成され、周辺組織への浸潤や転移の可能性があります。超音波エコーと穿刺吸引細胞診で鑑別可能です。良性と診断された場合は基本的に経過観察となります。
甲状腺がん術後のフォローはどのように行いますか?
術後は定期的なエコー検査と血液検査(TSH、サイログロブリン、サイログロブリン抗体)で経過を観察します。術後1年目は3〜6か月ごと、2〜5年目は6〜12か月ごと、以降は年1回が目安です。高リスク例ではより頻回のフォローとCTなどの画像検査を追加します。甲状腺ホルモン補充とTSH抑制療法も併せて行います。
📚 関連ページ
急な症状(呼吸困難・嚥下障害など)がある場合は、夜間・休日を問わず救急車(119番)を遠慮なくご利用ください。
👨⚕️ この記事の監修医師
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年科専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医
糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。
参考文献
[1] 日本甲状腺学会 甲状腫瘍診療ガイドライン 2022
[2] 日本内分泌外科学会 甲状腺癌取扱い規約 第9版
[3] Ito Y, et al. World J Surg. 2010;34(1):28-35.
[4] NCCN Guidelines® Thyroid Carcinoma. Version 2.2024
[5] Wells SA Jr, et al. Thyroid. 2015;25(6):567-610.
[6] Smallridge RC, et al. Thyroid. 2012;22(3):245-253.
最終更新日:2026-08-26
👨⚕️ この記事の監修医師
下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年科専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医
糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。