甲状腺機能亢進症と不妊症

06/10/2017

甲状腺機能亢進症と不妊症

最近では甲状腺機能亢進症が早期発見され治療されるため、甲状腺機能亢進症に伴う月経異常の頻度は65%から21.5%と劇的に減少しています。不妊症女性における甲状腺機能亢進症の頻度に関する質の高い報告は少なく不明な点が多くありますが、原発性もしくは続発性不妊症の0.9~5.8%に甲状腺機能亢進症が関与していると報告されています。

甲状腺機能亢進症が不妊症を引き起こすしくみ

甲状腺機能亢進症女性においては,血中テストステロン、アンドロステンジオンが上昇し、テストステロン→エストラジオール(E2)への変換だけでなく、アンドロステンジオン→エストロン(E1)への変換も増加します。それに加えて、17-β-エストラジオールと性ホルモン結合グロブリン(sex hormone-binding globulin:SHBG)との結合親和性が増加し、17-β-エストラジオールがクリアランスされにくくなります。これらの現象によって,甲状腺機能亢進症女性では血中エストロゲン値はが甲状腺機能正常女性の2~3倍となります。また、甲状腺機能亢進症女性では、性腺刺激ホルモン放出ホルモン(gonadotropin releasing hormone:GnRH)による性腺刺激ホルモン(gonadotropin:Gn)の分泌反応が増強するためにGnの基礎分泌レベルが上昇し、月経周期全期問において血中黄体形成ホルモン(luteinizing hormone:LH)レベルは上昇し、LHサージが起こらなくなるために無排卵、無月経となります。von Basedowは1840年に発表した論文の中で無月経が甲状腺機能亢進症の初発症状の1つであると紹介しました。Bensonらは221名の甲状腺機能亢進症女性の58%に希発月経もしくは無月経を、5%に頻発月経(月経周期が24日以内に短縮した状態)を認めたとしています。さらに着床においては、子宮内膜細胞の増殖・分化を促進する作用を有する17-β-エストラジオールの分泌が排卵前期に増加する必要がありますが、甲状腺機能亢進症では先述のごとくSHBGと17-β-エストラジオールの結合親和性が増加し、遊離型17-β-エストラジオールが減少してしまうために着床が障害されてしまいます。

甲状腺機能亢進症女性が妊娠した場合のリスク

甲状腺機能亢進症合併妊娠は稀ではなく、頻度は0.1~0.4%とされ、バセドウ病が原因として最多で妊婦の0.4%で認められます。甲状腺機能亢進症女性が妊娠した場合、流死産、早産、胎児発育不全や妊娠高血圧症候群のハイリスクです。特に、Millarらは妊娠第1三半期、第2三半期に甲状腺機能亢進を認めていれば、たとえ妊娠第3三半期に甲状腺機能正常であっても早産、胎児発育不全、妊娠高血圧症候群の発症リスクは,妊娠全期間を通して甲状腺機能正常であった妊婦と比して有意に増加すると報告しています。妊娠前に甲状腺機能亢進症を診断し治療することで,産科異常症や新生児甲状腺機能異常の発生を抑制できる可能性があるため,妊娠前に甲状腺機能検査を行っておくことが望ましいでしょう。