妊娠・出産と甲状腺の関係|妊活中から産後までの不安をサポート|船橋市のしもやま内科

🔊 このページの要約
甲状腺と妊娠・出産には深い関係があります。妊娠前に甲状腺の異常を見逃さないこと、妊娠中に適切なホルモン管理を行うこと、出産後のホルモン変化に備えることは、すべて母子の健康を守るうえで重要です。

    • 甲状腺ホルモン(特にFT4)は胎児の発育に欠かせない。
    • 妊娠初期は胎児の甲状腺が未発達なため、母体のホルモンが重要。
    • 甲状腺機能低下症は流産・早産・発達遅延のリスクを高める。
  • TSH目標値は妊娠希望者や妊婦ではより低め(2.5未満)が望ましい。
  • 橋本病やバセドウ病の既往がある方は特に専門管理が必要。
妊活・妊娠・産後における甲状腺管理を専門医が解説

🍼 妊娠を考えている方へ|まず知っておきたい甲状腺の知識

妊娠を考えている方、あるいはすでに妊娠中の方にとって、甲状腺ホルモンのバランスは非常に重要です。甲状腺ホルモンは代謝を整えるだけでなく、胎児の脳神経の発達にも欠かせません。不足していると、流産・早産・胎児発育遅延・妊娠高血圧症候群・妊娠糖尿病などのリスクが高まることが報告されています[1][2]

しかし、専門医のもとで甲状腺機能を適切に管理することで、これらのリスクは大幅に軽減することが可能です。妊娠前からの準備が肝心であり、「見逃されがちな潜在性甲状腺機能低下症」も含め、早期の評価と対応が推奨されます[1]

上の図では、妊娠前・妊娠中・産後それぞれの時期における甲状腺のケアのポイントをまとめています。ご自身やご家族の妊娠に備える際、ぜひご活用ください(しもやま内科作成)。

▶ 不妊治療中に甲状腺が心配な方へ

📖 参考文献

  1. 日本内科学会. 妊娠に伴う内分泌変化と甲状腺疾患. 内科. 2023;113(4):635-642.
    https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/113/4/113_635/_pdf/-char/ja
  2. MSDマニュアル プロフェッショナル版. 妊娠における甲状腺疾患.
    https://www.msdmanuals.com/professional/gynecology-and-obstetrics/pregnancy-complicated-by-disease/thyroid-disorders-in-pregnancy

妊娠期に多い甲状腺疾患

📚 引用文献

  1. Poppe K, Velkeniers B. Glinoer D. Thyroid disease and female reproduction. Clin Endocrinol (Oxf). 2007;66(3):309–321.
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17341274/

🔗 関連ページ:橋本病と妊娠・出産

橋本病(慢性甲状腺炎、甲状腺機能低下症)をお持ちの方は、妊娠・出産に際して特別な注意が必要です。妊活中、妊娠中、出産後の甲状腺管理について詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。

橋本病と妊娠・出産|妊活中・妊娠中・産後の甲状腺管理

妊娠希望時にチェックすべき甲状腺検査

一般に、妊娠を希望する段階ではTSHは2.5 μIU/mL未満を目標に管理します。また、抗体(抗TPO抗体など)が陽性の場合は、甲状腺機能の変動に注意し慎重な経過観察をおすすめします。

妊娠中の甲状腺管理

  • 妊娠初期(~妊娠12週)➡ TSH 2.5 μIU/mL未満を目標

  • 妊娠中期以降(妊娠13週~)➡ TSH 3.0 μIU/mL未満を目標(日本甲状腺学会2023年ガイドライン)

  • 定期的に4週ごとに甲状腺ホルモンを測定

  • 必要に応じて内服薬(チラーヂンなど)の調整

橋本病がある方の妊娠管理で大切なこと

橋本病(慢性甲状腺炎)は、妊娠中の甲状腺機能低下の原因として最も多い疾患です。症状が軽度でも見逃して放置すると、流産・早産・胎児の発育障害のリスクが高まります。適切に管理することで、こうしたリスクを大幅に減らすことができます。

  • 妊娠初期ではTSH 2.5 μIU/mL未満を、妊娠中期以降ではTSH 3.0 μIU/mL未満を目安に管理します。

  • **FT4(遊離T4)**の値も重要で、必要に応じてレボチロキシン製剤(チラーヂン)での補充を行います。

  • 妊娠希望中の方(妊活中)や不妊治療中の方でも、TSHは2.5未満が推奨されます。抗体陽性例では特に注意が必要です。

適切に管理すれば、橋本病があっても安全に妊娠・出産することは十分可能です。ご自身の判断で服薬を中止せず、必ず医師の指導のもとで継続的にホルモン管理を行いましょう。

出典:日本甲状腺学会「妊娠と甲状腺疾患」、MSDマニュアル、伊藤病院・隈病院資料より編集

産後のフォローアップ

出産後は「産後甲状腺炎」が発症しやすく、無痛性甲状腺炎の一種としてホルモンが乱高下します[1]
疲労感や動悸、気分の不調を感じるときは、早めに受診して甲状腺機能をチェックしましょう。

📚 引用文献

  1. Alexander EK, Pearce EN, Brent GA, et al. 2017 Guidelines of the American Thyroid Association for the Diagnosis and Management of Thyroid Disease During Pregnancy and the Postpartum. Thyroid. 2017 Mar;27(3):315-389.
    https://www.liebertpub.com/doi/10.1089/thy.2016.0457

当院の診療体制

しもやま内科では日本甲状腺学会認定の甲状腺専門医が在籍し、くらもちレディースクリニック・船橋市立医療センター産婦人科と密に連携して、妊娠前から出産後まで一貫した甲状腺管理をサポートしています。

📄 よくある質問(FAQ)

Q. 甲状腺の病気があっても妊娠できますか?
A. 多くの場合、甲状腺機能を適切にコントロールすれば妊娠可能です。妊娠前からの管理が重要です。
Q. 妊娠中に甲状腺の薬を中止していいですか?
A. 自己判断での中止は危険です。バセドウ病などでは、妊娠中も内服の調整が必要になります。必ず専門医にご相談ください。
Q. 赤ちゃんに影響はありませんか?
A. 適切な治療と管理を受けていれば、胎児への影響は最小限に抑えられます。放置による未治療の方が大きなリスクとなります。
Q. 妊娠希望の場合、いつ甲状腺の検査をすればよいですか?
A. 妊活開始前の段階で一度、甲状腺ホルモン(TSH、FT4)や自己抗体(TPOAbなど)のチェックをおすすめします。
Q. 潜在性甲状腺機能低下症でも妊娠に影響しますか?
A. 潜在性でも、妊娠率の低下や流産リスクと関連するため、妊娠を希望する場合は治療介入が検討されます。
Q. 妊娠中の甲状腺ホルモン値の基準は通常と違いますか?
A. はい、妊娠期はホルモン動態が変化するため、妊娠週数ごとに適切な基準値(Trimester-specific reference range)が設けられています。
Q. 出産後にまた検査は必要ですか?
A. はい、産後は「産後甲状腺炎」のリスクがあるため、出産後6~12週頃の甲状腺ホルモン検査が推奨されます。
Q. 母乳に甲状腺の薬が影響しますか?
A. 一部の抗甲状腺薬(例:プロピルチオウラシル)は、母乳に移行しにくく、授乳中も使用可能です。ただし薬剤によって異なるため医師の指導が必要です。
Q. 甲状腺機能低下症だと不妊治療に影響しますか?
A. はい、TSHが高すぎると体外受精などの成功率に影響があるため、治療前にTSHを2.5以下にコントロールすることが推奨されます。
Q. しもやま内科では妊娠中や産後の甲状腺フォローは可能ですか?
A. はい、当院では妊娠中・産後の甲状腺管理も行っており、必要に応じて連携病院との連絡体制も整えています。

甲状腺全体のしくみや他の病気もまとめて知りたい方はこちら ▶

甲状腺の病気総論ページ

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しもやま内科では、妊娠中だけでなく、妊活・不妊治療中の方に向けた甲状腺管理についても専門的に対応しています。

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TSH・FT4・自己抗体の採血や、甲状腺エコー検査も当日対応可能です。必要に応じて、船橋市立医療センターやくらもちレディースクリニックと連携して治療方針を検討いたします。

船橋市・習志野市・鎌ヶ谷市・八千代市などからも多くの方が来院されています。

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👨‍⚕️ この記事の監修医師

下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年病専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医
糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。

10/07/2025