🔎 要点まとめ
- 甲状腺ホルモンは妊娠・胎児発育に不可欠
- 妊娠前からの甲状腺機能管理が重要
- バセドウ病・潜在性低下症・産後甲状腺炎などは正しい治療で妊娠継続可能
- 自己判断の薬中断は危険、専門医の診療が必要
- しもやま内科では産婦人科と連携した管理を行います
妊娠を考えている方、すでに妊娠中の方にとって、甲状腺ホルモンはとても大切です。代謝や胎児の脳神経発達を支える役割があり、不足していると流産や早産、胎児発育遅延のリスクが高まります。専門医のもとで甲状腺ホルモンのバランスを保つことが大切です。

甲状腺ホルモンと妊娠の関わり
妊娠初期の胎児は自分の甲状腺ホルモンを作れないため、母体のホルモンに依存します。母体に甲状腺機能の異常があると、胎児の神経系発達や妊娠の維持に影響を及ぼす可能性があります(日本甲状腺学会 妊娠甲状腺ガイドライン2023)。
妊娠期に多い甲状腺疾患
- バセドウ病:妊娠中の治療薬切り替えが必要 ➡ バセドウ病の解説
- 潜在性甲状腺機能低下症:妊娠率低下や流産リスクに関連 ➡ 潜在性低下症と妊娠の解説
- 無痛性甲状腺炎・産後甲状腺炎:産後のホルモンバランス変化に注意 ➡ 産後甲状腺炎の解説
- 橋本病:潜在性低下症に含まれる場合があり、自己抗体の管理が大切 ➡ 橋本病について
妊娠希望時にチェックすべき甲状腺検査
- TSH(甲状腺刺激ホルモン)
- FT4(遊離型サイロキシン)
- 抗TPO抗体、抗サイログロブリン抗体
- 甲状腺エコー
TSHは2.5μIU/mL未満を目標にし、抗体陽性例では慎重な経過観察をおすすめします。
妊娠中の甲状腺管理
- 妊娠初期 ➡ TSH 2.5未満を目標
- 妊娠中期以降 ➡ TSH 3.0未満を目標(日本甲状腺学会2023)
- 定期的に4週ごとのホルモン測定
- 必要に応じて内服薬の調整
橋本病がある方の妊娠管理で大切なこと
橋本病(慢性甲状腺炎)は、妊娠中の甲状腺機能低下の原因として最も多く、症状が軽度でも見逃すと流産・早産・胎児の発育障害のリスクが高まります。
- 妊娠初期ではTSH 2.5 μIU/mL未満を、妊娠中期以降では3.0未満を目安とします。
- FT4(遊離T4)も重要で、必要に応じてレボチロキシン(チラーヂン)での補充が必要です。
- 妊娠希望中の方(妊活中)や不妊治療中の方でも、TSHは2.5未満が推奨されます。
適切に管理すれば、橋本病があっても安全に妊娠・出産することは十分可能です。ご自身の判断で服薬を中止せず、医師の指導のもとで継続的にホルモン管理を行いましょう。
出典:日本甲状腺学会「妊娠と甲状腺疾患」、MSDマニュアル、伊藤病院・隈病院資料より編集
産後のフォローアップ
出産後は「産後甲状腺炎」が発症しやすく、無痛性甲状腺炎の一種としてホルモンが乱高下します。疲労感や動悸、精神的な不調を感じるときは早めに受診しましょう。
当院の診療体制
しもやま内科では日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医が在籍し、くらもちレディースクリニック・船橋市立医療センター産婦人科と連携して、妊娠前から出産後までの甲状腺管理をサポートしています。
📄 よくある質問(FAQ)
甲状腺の病気があっても妊娠できますか?
多くの場合、甲状腺機能を適切にコントロールすれば妊娠可能です。
妊娠中に甲状腺の薬を中止していいですか?
自己判断での中止は危険です。必ず専門医に相談してください。
赤ちゃんに影響はありませんか?
適切に治療すればリスクは大きく下げられます。胎児への影響も最小限に抑えられます。
出産後にまた検査は必要ですか?
産後甲状腺炎のリスクがあるため、必ず甲状腺検査をおすすめします。
甲状腺の病気総論ページ
👨⚕️ この記事の監修医師
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年病専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医
糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。