妊娠中の甲状腺結節はどう判断する?エコー評価とFNAのタイミング|産婦人科向け初期対応

妊娠中の甲状腺結節:エコー所見でリスクを見極め、FNAは「必要性×安全性」で判断します

  • 第一選択は頸部超音波(被ばくなし)で、形態所見とリンパ節を評価します。
  • 悪性が強く疑われる所見・急速増大・圧迫症状がなければ、妊娠中は経過観察第2三半期以降のFNA、または産後評価が実務的です。
  • FNAが必要な場合は安全性を担保できる連携施設で実施し、結果に応じて妊娠中の方針(待機/第2三半期手術検討)を整理します。

このページで確認できること(外来3分)

  • 妊娠中に見つかった甲状腺結節のエコー評価ポイント(悪性疑い所見・リンパ節)
  • FNAを急ぐ条件/待てる条件、実施するなら第2三半期を中心に考える理由
  • 産科外来で迷いやすい紹介の目安(急速増大・嗄声・圧迫症状など)
  • 妊娠中に避ける検査(放射性ヨウ素関連、造影CTの扱い)

※本ページは医療者向け(for-obgyn)の初期対応メモです。患者さん向け説明は必要に応じて別紙化してください。

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1. まず何をするか:産科外来の初動(結節を見つけた当日)

⏱ 1分クイックリファレンス(迷うところだけ)

  • 頸部エコー(結節+リンパ節)を最優先:被ばくなしで形態評価。
  • TSH+FT4(必要に応じFT3):機能異常の併存を確認(結節評価と並行)。
  • 赤旗(急速増大/嗄声/圧迫症状/病的リンパ節)なら早期に内分泌へ相談。
  • 問診・診察:増大速度、疼痛、嗄声、嚥下障害、呼吸苦、頸部被ばく歴、家族歴(甲状腺癌/多発性内分泌腫瘍など)。
  • 検査(基本):TSH・FT4(必要に応じFT3)。
  • 画像(基本):頸部超音波(結節:サイズ・性状+頸部リンパ節)。

2. 頸部エコーで見るポイント(悪性疑い所見の拾い上げ)

妊娠中の結節評価は「形態(悪性疑い所見)+リンパ節」が軸です。スコアリング(TI-RADS等)まで厳密に行わなくても、まずは高リスク所見の有無に集中すると実務的です。

高リスクを疑う所見(例)

  • 微細石灰化、縦長(taller-than-wide)、不整な辺縁、被膜外進展疑い
  • 著明低エコー(参考)
  • 病的リンパ節(丸い、門部消失、嚢胞変性、石灰化など)

※体系化はATA結節ガイドラインやACR TI-RADSの白書が参考になります。

3. 妊娠中に避けたい検査/代替案

  • 放射性ヨードを用いる検査・治療(シンチ、RAI)は妊娠中は避けます。
  • 造影CTは原則「必要最小限」(緊急性・代替可否・施設方針で調整)。
  • 超音波で不十分で深部進展評価が必要な場合は非造影MRIを検討(個別判断)。

4. FNA(穿刺吸引細胞診)の時期と考え方

FNAは妊娠中でも適応があれば実施可能です。一方、緊急性が低い場合は第2三半期産後に回して安全性と実務性を両立させる戦略が一般的です。
(ATA 2017)PubMed

妊娠中でもFNAを積極的に検討

  • 高リスク所見(微細石灰化・縦長・不整形など)
  • 急速増大
  • 嗄声など神経症状(反回神経麻痺疑い)
  • 圧迫症状(呼吸苦・嚥下障害)
  • 病的リンパ節を伴う
FNAを待てる(産後/第2三半期以降で可)

  • 良性を示唆する所見でサイズ安定
  • 圧迫症状なし
  • リンパ節異常なし
  • 産後精査でも臨床的不利益が少ないと判断

細胞診で悪性が示唆されても、腫瘍の挙動・週数・合併症を踏まえ、妊娠中は経過観察で産後手術を選ぶこともあります。手術を行うなら第2三半期が検討されます。

5. どの時点で内科(内分泌)へ紹介するか:判断基準

以下のいずれかに該当する場合は、早期の相談・紹介が実務的です。

  • 高リスク所見(微細石灰化・縦長・不整形・被膜外進展疑い 等)
  • 病的リンパ節を疑う
  • 急速増大嗄声圧迫症状(呼吸苦・嚥下障害)
  • 機能異常(TSH/FT4の逸脱)を伴い、治療要否や鑑別に迷う
  • 「FNAを今やるべきか」「産後まで待つか」の意思決定が難しい

6. 当院で可能な検査・対応(産科連携の実際)

  • 採血:TSH、FT4、FT3、TPOAb、TgAb、TRAb など(週数・背景に応じて)。
  • 甲状腺エコー:当日実施可(結節性状+頸部リンパ節)。
  • FNA(細胞診)が必要な場合:安全性を担保できる連携医療機関へ紹介します。

ご紹介・ご相談(産科の先生方へ)

しもやま内科(甲状腺内科)
TEL:047-467-5500 FAX:047-467-7500
「妊娠中の甲状腺結節(エコー/FNA相談)」とお伝えください。

※ Web予約のご案内は行っていません。お電話にてご連絡ください。

実際の外来診療では、結節の「悪性疑い所見」と「増大速度・症状」をまず整理し、緊急度が低いケースほど妊娠経過を優先して、FNAの時期や実施施設(連携先)を一緒に決めています。

FAQ(産科外来でよくある質問)

妊娠中に甲状腺結節が見つかったら、まず何を優先しますか?
第一選択は頸部超音波(結節+リンパ節)での形態評価です。被ばくがなく妊娠中でも安全に評価でき、悪性疑い所見の拾い上げに有用です。並行してTSH+FT4で機能異常の併存を確認します。
妊娠中のFNA(細胞診)は、いつ行うのが一般的ですか?
妊娠中でも適応があれば実施できますが、緊急性が低い場合は第2三半期を中心に検討するか、産後に回すことが多いです(週数と安全性を踏まえて個別判断)。
どんな所見・状況なら内分泌へ早めに紹介すべきですか?
高リスクのエコー所見病的リンパ節急速増大嗄声圧迫症状があれば早期相談が実務的です。
また「FNAを今やるべきか/産後まで待つか」で迷う場合も紹介の適応になります。
妊娠中に避けるべき検査はありますか?
放射性ヨードを用いる検査(シンチ等)や治療(RAI)は妊娠中は避けます。画像はまず超音波を基本とし、必要時に非造影MRIなど代替を検討します(個別判断)。

関連ページ(産科×内分泌:初期対応)


参考文献

  • Alexander EK, et al. 2017 ATA Guidelines for the Diagnosis and Management of Thyroid Disease during Pregnancy and the Postpartum.
    PubMed
    Publisher
  • ATA Patient summary: Thyroid nodules during pregnancy
    公式ページ
  • Tessler FN, et al. ACR TI-RADS White Paper (2017).
    PDF
  • 甲状腺腫瘍診療ガイドライン2024
    PDF
    Minds
  • 日本甲状腺学会:甲状腺疾患診断ガイドライン(医師向け)
    公式

👨‍⚕️ この記事の監修医師

下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年病専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医

糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年携わり、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。

01/10/2025