授乳と甲状腺薬:安全性・相互作用の一覧表

授乳中でも多くの甲状腺薬は安全に使用できます。 薬ごとの可否・注意点と、鉄・カルシウム・コーヒーなどとの飲み合わせの間隔を一覧表で解説します。

要点まとめ

  • レボチロキシン:授乳中に安全。鉄・Ca・Mg・胆汁酸吸着薬・コーヒー・大豆は時間をあけると吸収が安定。
  • MMI(メチマゾール/チアマゾール)・PTU:授乳中も原則可。最小有効量・分割投与・授乳直後内服が実践的。
  • β遮断薬:プロプラノロール/メトプロロールは比較的安全。アテノロールは避けるか慎重に。
  • ヨード含有薬:長期・高用量は乳児甲状腺機能低下の懸念。短期・必要最小限で運用。
  • 最終判断は個別最適:母体の重症度・乳児の状況で調整。疑問点は受診を。
授乳と甲状腺薬の安全性・相互作用を表す青基調のイラスト|しもやま内科
「授乳 × 甲状腺薬」— 安全性と飲み合わせの早見表

授乳と甲状腺薬の安全性一覧

一般論として、母乳中移行が少なく乳児影響が最小な用量・タイミングで内服すれば、多くの薬剤は授乳継続が可能です。以下は臨床現場での実務目安です(個別調整が前提)。

薬剤 授乳可否 実務上のポイント
レボチロキシン(チラーヂンS等) 母乳移行はごく少量。空腹での内服を基本に。鉄・Ca・Mg・胆汁酸吸着薬・コーヒー・大豆は時間をあけて。
MMI(メチマゾール/チアマゾール;メルカゾール) 可(原則) 最小有効量・分割投与。授乳直後に内服し次授乳まで時間を空けると乳児曝露がさらに低減。乳児の甲状腺機能フォローを検討。
PTU(プロピルチオウラシル) 可(原則) 母体肝障害リスクに留意。低~中用量、授乳直後内服、母体肝機能の定期チェック。乳児甲状腺機能の確認を検討。
β遮断薬(プロプラノロール/メトプロロール 等) 可(適正使用) 短期・少量で使用。乳児の徐脈・傾眠に注意。アテノロールは母乳移行が多めのため避けるor慎重に。
ヨード含有薬(ヨウ化カリウム、ルゴール液、造影剤 など) 要個別判断 高用量・長期は乳児の甲状腺機能低下の懸念。必要最小限・短期に限定。造影検査は基本的に授乳継続可とされるが、乳児側の事情で一時中断を選ぶことも。

飲み合わせの「時間をあける」早見表(主にレボチロキシン)

相手 推奨間隔 備考
鉄剤(Fe) 2〜4時間あける キレート形成で吸収低下。産後貧血治療中は時間調整が重要。
カルシウム(Ca)/ マグネシウム(Mg) 2〜4時間あける 総合ビタミン・制酸薬にも含有。成分表示を確認。
胆汁酸吸着薬(コレスチラミン等) 4〜6時間あける 吸着による吸収阻害が強い。時間を十分に空ける。
コーヒー 60分あける 同時摂取でレボチロキシン吸収低下。
大豆製品 食パターンを一定に保つ 長期的に用量調整で対応。摂取量を急に増減しない。

重要:ここに記載の可否や間隔は一般的な目安です。母体の病状・用量・乳児の状態で最適解は変わります。最終判断は主治医判断が必要です。

授乳と甲状腺治療の両立、当院でご相談ください。

症状・用量・他薬との兼ね合いを踏まえ、最適な内服タイミングと授乳計画をご提案します。

📞 047-467-5500(しもやま内科)

よくあるご質問

Q. 甲状腺薬のために授乳をやめる必要はありますか?
A. 多くの場合、不要です。薬剤選択・用量・内服タイミングを調整すれば授乳継続が可能です。
Q. MMIとPTU、授乳中はどちらが良い?
A. いずれも原則使用可能です。母体副作用・病勢・用量で選択します。当院で個別に最適化します。
Q. レボチロキシンはコーヒーと一緒に飲めますか?
A. 吸収低下を避けるため、コーヒーとは60分以上あけてください。
Q. 乳児の検査は必要?
A. 抗甲状腺薬やヨード使用時は、状況により乳児の甲状腺機能確認を提案することがあります。

👨‍⚕️ この記事の監修医師

下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医/日本糖尿病学会 専門医・指導医/日本循環器学会 循環器専門医/日本老年医学会 老年病専門医・指導医/日本甲状腺学会 甲状腺専門医授乳期の甲状腺治療における薬物療法は、個別調整で安全に両立可能です。お気軽にご相談ください。