シックデイとは、糖尿病患者さんが風邪や発熱、感染症などで体調不良になった状態のことです。体調不良時はストレスホルモンが分泌され血糖値が乱高下しやすく、1型・2型ともに注意が必要です。特に1型糖尿病の方はインスリンがゼロのためケトアシドーシス(DKA)のリスクが高く、正しい対応が命を守ります。このページでは、1型・2型それぞれのシックデイ対応をまとめています。
シックデイとは——体調不良時の血糖コントロールの重要性
糖尿病の患者さんが風邪やインフルエンザ、胃腸炎、その他の感染症で体調を崩した状態を「シックデイ(sick day)」と呼びます。体調不良時には、ストレスホルモン(カテコラミンやコルチゾール)の分泌が増加し、血糖値が上昇しやすくなります。一方で、食事が摂れないことによる低血糖のリスクもあり、血糖値は乱高下しやすい状態になります。
シックデイの対応を事前に知っておくことで、緊急入院を防ぎ、安全に自宅で療養できる可能性が高まります。特に1型糖尿病でインスリン治療中の方は、自己判断でのインスリン休薬が命に関わるため、正しい知識が欠かせません。
1型糖尿病患者のシックデイ対応
1型糖尿病の方は膵臓がインスリンをまったく作れないため、シックデイの対応が2型とは大きく異なります。最も重要な原則は「インスリンは絶対にやめない」ことです。
1型糖尿病シックデイの4つの基本原則
① インスリンは絶対に自己判断でやめない
食事が摂れなくても、インスリンは必要です。「食べてないから打たなくていい」は非常に危険です。体調不良時はむしろインスリン増量が必要なケースもあります。
② 血糖値をこまめに測る(2〜4時間おき)
血糖値の動きが読めないからこそ、頻回に測定して把握するのが安全です。CGM(持続血糖モニター)を使用している方は、アラート設定を確認しておきましょう。
③ 尿ケトン体をチェックする
ケトン体測定試験紙を持っている方は、シックデイには必ずチェックしてください。陽性(+以上)になったら早めに医療機関に連絡しましょう。
④ 水分をしっかり摂る(1時間あたりコップ1杯)
糖分の入っていない飲み物(水・麦茶・経口補水液)を少しずつこまめに摂取します。
1型糖尿病——受診が必要なサイン(すぐに連絡!)
- 血糖値250mg/dL以上が続き、下がる気配がない
- 尿ケトン体が陽性(+以上)
- 吐き気や嘔吐がある
- 腹痛がある
- 意識がボンヤリしてきた
- 息が甘い果物のような臭い(アセトン臭)
- 38度以上の高熱が続く
- 下痢や嘔吐で水分が摂れない
これらはDKA(糖尿病性ケトアシドーシス)のサインです。夜間や休日でも、ためらわずに119番へのご連絡をおすすめします。
2型糖尿病患者のシックデイ対応
2型糖尿病の方は、膵臓がインスリンをある程度分泌できるため、1型と比べて緊急性は低い場合が多いですが、決して油断はできません。
2型糖尿病シックデイの対応原則
① 内服薬・インスリンは自己判断で中止しない
特にSGLT2阻害薬(ジャディアンス、フォシーガなど)を服用中の方は、食事が摂れない状態で服用を続けると「正常血糖ケトアシドーシス(euglycemic DKA)」のリスクがあります。シックデイ時は医師の指示に従い、場合によっては一時的に休薬することもあります。
② 血糖値を測る(1日4回以上を目安に)
血糖値の変動を把握することが安全なシックデイ管理の第一歩です。
③ 十分な水分補給
発熱や下痢で脱水になりやすく、高血糖をさらに悪化させます。糖分のない水分をこまめに摂りましょう。
④ 食事が摂れない時の対応
経口摂取が困難な場合でも、糖分を含む飲料(スポーツドリンクの薄め液や経口補水液)で最低限のカロリーと水分を補給することがあります。詳細は主治医の指示に従ってください。
2型糖尿病——受診が必要なサイン
- 血糖値300mg/dL以上が続く
- 吐き気・嘔吐がある
- 下痢が1日5回以上続く
- 水分がまったく摂れない
- 38度以上の発熱が2日以上続く
- 意識の変化がある
SGLT2阻害薬服用中の特に注意
SGLT2阻害薬(ジャディアンス、フォシーガ、カナグル、ルセフィ、デベルザなど)を服用中の方は、軽度の血糖上昇でもケトアシドーシスを起こす可能性があります(正常血糖ケトアシドーシス)。シックデイ時は医師の指示に従い、場合によっては休薬をご検討ください。
シックデイの事前準備——普段からできる備え
- かかりつけ医の連絡先を確認しておく
- 緊急時の連絡先を携帯電話に登録しておく
- シックデイ対応のメモを常に携帯する
- 予備の検査薬やインスリンを確認しておく
- CGMや血糖測定器のバッテリー・センサー在庫を確認
- 経口補水液(OS-1など)を常備しておく
特に1型糖尿病の方は、普段から主治医と「シックデイ対応計画」を決めておくことをおすすめします。「何度血糖を測るか」「インスリンをどのくらい増やすか」「どんな時に受診するか」——これを事前に決めておくだけで、いざという時に慌てずに対応できます。
まとめ
シックデイ対応のポイントは、「インスリンを自己判断でやめない」「こまめに血糖を測る」「受診のサインを知っておく」の3つです。糖尿病専門医と事前に対応計画を決めておくことで、いざという時に慌てずに対処できます。お困りの際は、早めに主治医にご相談ください。
シックデイに関するよくある質問(FAQ)
シックデイではインスリンを増やすの?減らすの?
2型糖尿病でもシックデイに注意が必要ですか?
シックデイで食事が摂れない時はどうすれば?
SGLT2阻害薬はシックデイに休薬すべき?
シックデイでCGMは使える?
シックデイの紧急連絡、夜間でもしていい?
胃腸炎で嘔吐が続く場合の対応は?
シックデイに解熱剤は使っていい?
受診をご検討の方、お気軽にご相談ください
月・火・木・金 9:00〜12:00 / 14:45〜17:30 土 9:00〜12:00
診療時間外・緊急時は、119番へのご連絡もご検討ください
最終更新日:2026-08-28
👨⚕️ この記事の監修医師
下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年科専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医
糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。