🔊 このページの要点
糖尿病性腎臓病(DKD)の進行を遅らせる鍵は「4ピラーズ」です。
①RAS阻害薬、②SGLT2阻害薬、③GLP-1受容体作動薬、④非ステロイド型MRAを、
生活習慣の改善と組み合わせ、腎・心を同時に守ります。

このページは、糖尿病性腎症(DKD)を「どう守るか」に焦点を当てた治療戦略の解説ページです。
DKDはHbA1cが良好でも進行することがあり、
beyond HbA1c
の視点(血糖変動・低血糖・血圧・生活習慣を含めた総合評価)が重要になります。
▶ 全体像(検査・治療・食事)を先に確認したい方:
DKD総合ガイド
糖尿病性腎臓病(DKD総合ガイド)の進行抑制では、
4つの柱(4ピラーズ) — RAS阻害薬、SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬、非ステロイド型MRA —
を生活習慣の改善と組み合わせて用いることが推奨されます。以下、患者さん向けに要点を整理します。
DKD治療の4ピラーズ(四本柱)
① RAS阻害薬(ACE阻害薬/ARB)
- 役割:糸球体内圧を下げ、尿蛋白を減らします。
- 期待効果:腎保護・進行抑制。高血圧の是正にも有効。
- ポイント:カリウム値・腎機能(Cr/eGFR)を定期チェックします。
② SGLT2阻害薬
- 役割:尿へ糖を排泄して血糖を下げるほか、腎循環を整えて腎・心を守ります。
- 期待効果:腎機能低下や心不全の悪化を抑える効果が報告されています。
- ポイント:尿路・性器感染、脱水、ケトアシドーシス(稀)に注意。体調不良時は一時中断を早めに相談。
③ GLP-1受容体作動薬
- 役割:食後高血糖の是正、体重減少、腎・心保護が期待できる注射薬(一部経口あり)。
- 期待効果:体重・血糖・心血管リスクの多面的改善。
- ポイント:悪心・嘔気・食思不振など消化器症状に注意。開始は低用量からゆっくり。
④ 非ステロイド型MRA(ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬)
- 役割:炎症・線維化シグナルを抑えて腎・心を保護する新しいタイプの薬。
- 期待効果:尿蛋白の減少、腎イベント・心血管イベントの抑制が期待されます。
- ポイント:血清カリウム上昇に注意。RAS阻害薬と併用時は特に定期採血を行います。
実践フロー:どう組み合わせる?(当院の基本方針)
- まずは生活習慣の最適化:減塩(目安6g/日未満)、体重管理、継続できる運動、飲水指導。
- 土台:尿蛋白(ACR)陽性または高血圧を伴う場合は RAS阻害薬 を基本に。
- 早期からの追加:eGFRが許す範囲で SGLT2阻害薬 を併用(脱水や感染に注意)。
- 体重・心血管リスクを踏まえ:肥満・動脈硬化リスクが高ければ GLP-1受容体作動薬 を検討。
- 尿蛋白が残る/腎・心イベント抑制を強化:非ステロイド型MRA を追加。K値と腎機能をこまめに確認。
※個々のeGFR・ACR・血圧・併存症・妊娠計画・低血糖リスク等で調整します。変更や中止は必ず主治医と相談してください。
生活習慣の改善は「もう一本の柱」
- 血糖:目標HbA1cを共有し、低血糖を避けながらフラットな血糖を目指します。
- 血圧:自宅血圧も活用して目標達成をサポート。
- 食事:減塩・たんぱく質量の適正化。腎機能に応じて栄養指導。
- 運動:有酸素+レジスタンスのバランス。体調不良時は無理をしない。
よくあるご質問(DKDと4ピラーズ)
4ピラーズは全員が4剤すべて必要ですか?
副作用が心配です。どう見守りますか?
市販薬やサプリは併用できますか?
発熱や食事が取れない時は薬をどうすればいいですか?
関連ページ
👨⚕️ この記事の監修医師
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年病専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医
糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。
※治療は個別性があります。自己判断での中断・増量は行わず、必ず主治医とご相談ください。