GLP-1受容体作動薬

27/10/2018

GLP-1受容体作動薬

GLP-1受容体作動薬の作用

インクレチン作用のいいとこどりがGLP-1受容体作動薬

食後に小腸上部から分泌されるインクレチン(GLP-1,GLP)は両者ともインスリン分泌を促す作用があり、血糖値を下げます。その一方、GLP-1には

「もうお腹いっぱいだ。これ以上食べなくて良い。」

という信号を出すことで、食欲を抑え、過食しにくくする作用があります。また、胃内容物排出遅延と言って、食べたものがなかなか腸に降りて行かないようになります。ですから、これがうまく生きれば

「食欲抑制作用」「減量作用」

となります。GLP-1受容体作動薬はこれを人工的に強めてあげようという薬剤です。

GLP-1受容体作動薬とDPP-4阻害薬の違い

もう一方のGIPには脂肪の蓄積作用があり、体重を増やしてしまいます。DPP-4阻害薬(飲み薬)はGLP-1とGIPの両者を増強するため、体重減少作用、食欲抑制作用はありません。

ですから、GLP-1受容体作動薬はインクレチン作用のいいとこ取りをした薬剤といえます。

GLP-1受容体作動薬の副作用

食べ過ぎが防げて、痩せることのできるGLP-1受容体作動薬ですが、効果が強過ぎれば嘔気嘔吐、食が細くなりすぎる、また腸の動きが落ちて便秘ということになってしまいます。

このようなGLP-1受容体作動薬の副作用は、使い始め特に出やすいです。吐き気、下痢、便秘などの胃腸症状が初期にあらわれることがあります。多くの場合、しばらくするとおさまりますが、症状が気になる場合はご相談ください。

低血糖

GLP-1受容体作動薬は空腹時には働かず、食事をとって血糖値が高くなったときに働くため、低血糖を起こしにくいといわれています。ただし、SU薬やインスリンと一緒に使う場合は低血糖に注意が必要です。

その他

発売当初、膵臓癌が増える可能性があると懸念されていましたが、その後様々なデータが集まり、危険は低いと考えられるようになりました。膵臓癌のリスクはSU剤などと同等、変わらないとされています。

Incretin based drugs and the risk of pancreatic cancer: international multicentre cohort study.
Azoulay L, et al. BMJ. 2016;352:i581.

同様に、急性膵炎のリスクも懸念されていましたが、その後の研究でその恐れはないと考えられるようになりました。

インクレチン関連薬(DPP-4阻害薬とGLP-1受容体作動薬)は急性膵炎リスクを上昇させない。インクレチン関連薬と急性膵炎リスクの関係を他の経口糖尿病治療薬2剤以上併用と比べた、2型糖尿病患者150万人以上を対象とした国際多施設コホート症例対照研究

Association Between Incretin-Based Drugs and the Risk of Acute Pancreatitis.
JAMA Intern Med. 2016 Oct 1;176(10):1464-1473.

また、げっ歯類でGLP-1受容体作動薬によって甲状腺C細胞腫瘍(甲状腺髄様癌)が認められたため、甲状腺髄様癌リスクを高める可能性があるとの報告が出ていましたが、ヒトC細胞にGLP-1受容体はほとんどないことから、影響は少ないと考えられています。