速効型インスリン分泌促進薬
速効型インスリン分泌促進薬(グリニド)の特徴
即効型インスリン分泌薬を総称してグリニド Glinide といいます。発売順にナテグリニド、ミチグリニド、レパグリニドという薬剤名となっていて、総称がグリニドです。
グリニド薬はスルホニル尿素よりも吸収が速いため効果が速く現れ、また短時間で効果がなくなります。このため食直前に服用することで、食後に一時的に血糖が高くなる食後高血糖を改善することができます。
日本人の(糖尿病ではない正常な人の)インスリン分泌能は、欧米人に比べて低いという特徴が知られています。
また日本人の糖尿病患者さんは、食後のインスリン分泌が血糖上昇に比べて遅い例が多いという重要な特徴があります。
この弱点を補うのがグリニド系薬剤で、短時間のインスリン分泌作用を持っています。膵臓のインスリンを分泌する力がある程度残っている患者さんに効果があります。服用してから効果が早くあらわれるので、食後の高血糖の改善に適しています。
空腹時血糖を下げるSGLT2阻害薬と併用すると、空腹時・食後ともに血糖が抑えられてうまく行くことが多いです。
グリニドの副作用
グリニドの副作用として最も注意が必要なものは低血糖ですが、SU剤に比べて相対力価が低く作用持続時間が短いため、その頻度は少ないです。肝・腎障害のある患者では低血糖が発生するリスクが高まるため慎重に使用使用します。透析患者にはナテグリニドは禁忌、ミチグリニドおよびレパグリニドは慎重投与となっています。グリニド系薬剤は、食後の服用では効果が減弱することが分かっており、食前の服用が重要です。α-GIと同様に食直前の服薬が重要ですが、逆に20~30分前の服用では、低血糖の可能性があります。
レパグリニド(シュアポスト)とクロピドグレル(プラビックス)の相互作用に注意
レパグリニドとクロピドグレルの併用によって重大な低血糖が起きる懸念があります。レパグリニドの代謝には主にCYP2C8という酵素が関与していますが*、クロピドグレル投与によりCYP2C8は時間依存性かつ強力に阻害されることが知られています。さらに、その代謝物であるクロピドグレルアシル-β-D-グルクロニドがCYP2C8を阻害することも示されています。CYP2C8が阻害されるということは、レパグリニドが代謝されないということなので、効果が長く強くなってしまうため、重大な低血糖を招きます。
*シュアポスト錠 0.25 mg,0.5 mg 医薬品インタビューフォーム改訂第 7 版.2016