循環器内科

急性冠症候群

急性冠症候群: Acute coronary syndrome

急性冠症候群

急性冠症候群

心臓の筋肉に血液を送る血管に血液が十分行かなくなること(心筋虚血=狭心症や心筋梗塞)が急に起こり、数日~数週間のうちに事態が急変する可能性があり、さらには心臓突然死を引き起こす重症な病態を総称して急性冠症候群といいます。

突然、心臓の冠状動脈の内部が閉塞または狭窄するにより引きおこされる症候群(N Engl J Med 1992; 326: 242)です。急性心筋梗塞、不安定狭心症、心原性突然死が含まれます。

急激な血圧上昇,脈圧や心拍数の増加などによる血行動態の変化や、冠攣縮や血管トーヌスの亢進などによる冠動脈血管内膜の粥腫(プラーク)の破裂やプラークびらんによる血栓形成により、冠動脈内腔を閉塞または狭窄をきたすことで引き起こされます。

プラークの進展と破綻

プラークの進展と破綻

虚血性心疾患とは?

虚血性心疾患とは、心臓の筋肉(心筋)が動くために必要な酸素や栄養を送る冠動脈に動脈硬化が進んだ結果、血液の流れが悪くなり、心臓がポンプ機能を担うために必要とする酸素の需要・供給バランスが崩れ、心筋の一部が酸素不足(虚血)になる病気のことです。

虚血性心疾患は、心臓突然死など生命予後にかかわる重大な病気であり、幅広い重症度の病態を含みます。大きく分けて、以下のとおり、安定狭心症と急性冠症候群があります。

安定狭心症

狭心症の症状が数ヶ月以上安定していて心筋梗塞への移行の心配が少ない狭心症であり、以下を総称して安定狭心症といいます。長年にわたり慢性的に経過しているため、検診や外科の手術前検査などで診断されることもあります。

労作性狭心症

冠動脈の動脈硬化によって生じた脂肪を含むプラーク・アテロームといわれる粥腫(じゅくしゅ:中にコレステロールを含むかさぶた状のもの)が進展し徐々に冠動脈が狭くなります。

歩行や階段、坂道を登った時、重いものを持ち上げた時など一定の条件下の運動(労作)で起こります。このような動きが血圧や心拍数を上げ、心筋はより多くの血液や酸素を必要としますが、冠動脈が狭いことにより心筋への供給がそれに応じきれず、一時的に酸素不足となり胸痛が出現します。安静や硝酸薬を舌下・スプレーすることで、心筋の酸素不足が改善し、通常数分から長くても15分程で症状が治まります。症状は午前中に多いといわれていますが、どの時間帯でも起こります。しかし、病気が進行すると少しの動作や安静時でも発作が起こるようになったり、発作の持続時間が長くなったり、発作が頻回になるなどの症状の悪化を認めます。この場合は、急性冠症候群への移行の可能性が考えられ、命にかかわるため、直ちに医療機関との相談が必要になります。このように、安定狭心症であっても変化することがあり、注意が必要です。

冠攣縮性(かん・れんしゅくせい)狭心症

冠動脈が一時的に痙攣(けいれん)して血液の流れが悪くなります。

運動よりも、ほぼ一定の時間帯の夜間や早朝・未明の安静時に症状が起こることが多いといわれています。また、飲酒や喫煙時に発作が多いともいわれています。発症頻度は我が国は欧米に比べて多く、性別は男性に多いといわれています。労作性狭心症と同様、硝酸剤の舌下・スプレーが有効です。症状が頻回になり、持続時間が長くなる場合は、労作性狭心症と同様、急性冠症候群への移行が懸念されるため、医療機関の受診が必要になる場合があります。

急性冠症候群

急性心筋梗塞

血栓で冠動脈が完全に詰まり、心筋が死んでしまう状態(壊死:えし)のことをいいます。そのため、重症な心不全や不整脈を引き起こし、心臓の機能も悪くなり、心臓突然死に至ることがある最も重症な状態です。

完全に冠動脈の血流が途絶え、心筋の一部に壊死が起こり始めます。壊死した心筋は再び元に戻ることはなく、胸痛は狭心症よりずっと激しく20分以上長く続き、硝酸薬の舌下・スプレーもほとんど効果がありません。また、不整脈や心不全も合併すると動悸や息苦しさも感じます。急性心筋梗塞では、命にかかわる、一刻を争う危険な状態ですので、直ちに救急車で救急治療の受けられる医療機関を受診し、治療を開始する必要があります。

予防が大切です

虚血性心疾患の原因として、高血圧、脂質異常症、糖尿病などの生活習慣関連疾患、肥満、メタボリックシンドローム、喫煙、精神的肉体的ストレスなどが挙げられます。日常の中等度な運動(1回30分以上、週3~4回)、食事制限(塩分、脂肪、アルコールの制限)、禁煙、適度な休日・休息などによる生活の改善、生活習慣関連疾患の治療が、虚血性心疾患の大切な予防になります。虚血性心疾患による死亡率は、将来さらなる増加が懸念されており、虚血性心疾患を発症した後も薬物療法とともに、生活習慣を積極的に改善することが、再発の予防、生命予後の改善に極めて重要です。

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