甲状腺がん術後のTSH抑制は再発リスクに応じて強さを決め、経過が安定すれば段階的に緩和します。
骨・心血管の副作用に配慮し、採血と画像を組み合わせて安全にフォローします。

「TSHをどこまで下げるの?」「骨や心臓に負担はない?」――術後のよくある不安に、専門医の視点でお答えします。最終的な目標設定は再発リスクと全身の安全性を両立する“個別化”が前提です。
TSH抑制の考え方(リスク別に“強さ”を調整)
- 再発リスクが高い方:術後早期はしっかり目の抑制から開始し、経過で段階的に緩和を検討。
- 中等度リスク:中等度の抑制を基本に、画像・腫瘍マーカーの推移を見て調整。
- 低リスク・安定期:“過度に下げ過ぎない”ことを重視し、必要最小限の抑制へ。
抑制度合いは、病理所見(浸潤、リンパ節転移の有無)、サイログロブリン(Tg)とTg抗体(TgAb)の推移、エコー/CT等の画像所見、RAI治療の有無などを総合して決めます。
骨・心血管への配慮(副作用リスクを最小化)
- 骨代謝:長期の過度な抑制は骨密度低下に注意。骨密度検査でフォローし、必要に応じて内科的介入(栄養・運動・薬物)を検討。
- 心血管:動悸・不整脈、心機能への影響に留意。症状や既往がある場合は心電図・心エコーで安全確認。
検査の間隔と見直しのタイミング
- 術後早期:TSH/遊離T4は短い間隔で確認、Tg/TgAbとエコーで再発徴候をチェック。
- 安定期:診療間隔を延長しつつ、異常シグナルがあれば早めに再評価。
- 妊娠・授乳:目標値や投与量が変わることがあります。産科と連携しながら管理。
いつ緩和・終了を検討するか
再発所見がなく安定が持続している場合、年単位の経過の中で段階的に緩和/終了を検討します。病理・ステージ・術後治療(RAI)の有無、画像・腫瘍マーカー推移を総合判断します。
内服(レボチロキシン)のコツ
- 空腹時内服が基本。鉄・カルシウム、制酸薬(PPI/H2ブロッカー)などは時間を空けると吸収が安定します。
- 自己判断での増減は禁物。採血結果と症状をもとに医師が調整します。
よくある質問
TSH抑制は「誰でも同じ強さ」で行うのですか?
いいえ。がんの再発リスクに応じて抑制度合いを個別に決めます。経過が安定すれば緩和する場合もあります。
“抑えめ”“しっかり目”はどう使い分けますか?
初期に強め→経過良好なら段階的に緩和、という流れが一般的です。最終判断は主治医が行います。
骨粗鬆症や心臓への影響が心配です。
長期の過度な抑制では骨密度低下や不整脈のリスクに注意が必要です。骨密度や心機能の検査を組み合わせて安全に管理します。
検査の頻度は?
術後早期は短い間隔で、その後は安定度に応じて延長します。異常シグナルがあれば前倒しで再評価します。
いつ抑制を緩和・終了しますか?
再発所見がなく安定が続く場合に、年単位の経過で段階的に緩和・終了を検討します。
飲み合わせの注意点は?
鉄・カルシウム、制酸薬は時間を空けると吸収が安定します。具体的な間隔は診察時にご確認ください。
妊娠・授乳中はどう管理しますか?
目標TSHや投与量が変わることがあります。産科と連携し、個別に安全な範囲で調整します。
ご相談は しもやま内科(船橋市)
お電話:047-467-5500
しもやま内科 院長 下山 立志(日本内科学会 総合内科専門医/日本糖尿病学会 専門医・指導医/日本循環器学会 循環器専門医/日本老年医学会 老年病専門医・指導医/日本甲状腺学会 甲状腺専門医)