授乳期の甲状腺薬:安全性とフォロー(LT4/チアマゾール/PTU)

授乳期の甲状腺薬:安全性とフォロー(LT4/チアマゾール/PTU)

授乳中はLT4は安全、抗甲状腺薬は最少用量で授乳直後投与が基本。母体のTSH再評価と、必要に応じた乳児フォローを共有します。

🔎 要点まとめ

  • 授乳可否:LT4は授乳可。抗甲状腺薬(MMI/PTU)は最少用量で授乳直後に投与。
  • 用量と採血:開始・増減後は6–8週でTSH/FT4再評価。HRTや鉄剤・Ca製剤併用にも注意。
  • 乳児フォロー:体重増加・哺乳力・傾眠/興奮の変化を小児科と共有。必要時のみ甲状腺機能を確認。

授乳期の甲状腺治療は、母体の安定化を優先しつつ乳児への薬剤曝露を最小化する運用が基本です。本ページでは、レボチロキシン(LT4)・チアマゾール(MMI)・プロピルチオウラシル(PTU)の授乳中の使い方、採血間隔、乳児フォローの共有ポイントを実務目線で整理します。

授乳期の甲状腺薬(LT4・チアマゾール・PTU)の安全性と使い方を整理し、授乳直後投与や6–8週のTSH再評価、乳児の体重・哺乳・覚醒度の観察ポイントを示した青基調インフォグラフィック
授乳期の甲状腺薬:LT4/MMI/PTUの安全性とフォロー(6–8週でTSH再評価)

授乳可否の整理

薬剤 授乳可否 実務ポイント
LT4(レボチロキシン) 授乳可 母乳移行は極少。空腹時内服を基本。鉄剤・Ca/マグネシウム製剤は2–4時間あける。
MMI(チアマゾール) 授乳可(最少用量) 授乳直後に投与し、1日用量をできるだけ分割最少化。中等量までを目安に。児の傾向観察を共有。
PTU(プロピルチオウラシル) 授乳可(最少用量) MMI同様に授乳直後投与。母体の肝機能を定期チェック。

用量設定と採血間隔(母体)

  • 開始・増減後の再評価:原則6–8週でTSH(±FT4)を再検。中毒症の初期コントロール時は短めに再評価。
  • 目標設定:低下症では自覚症状・合併症(脂質・妊娠希望など)に応じたTSH目標を設定。
  • 相互作用:LT4は鉄剤・Ca/マグネシウム・PPI・大豆製品で吸収低下。投与間隔を確保。
  • 投与タイミング(抗甲状腺薬):授乳直後に内服→次回授乳までの血中濃度低下を狙う(分割は最少に)。

乳児フォローの共有

  • 日常観察:体重増加曲線、哺乳力、傾眠・興奮、発汗・下痢傾向、皮疹。
  • 検査の要否:原則は不要。哺乳不良・体重停滞・傾眠強いなどが持続する場合のみ、小児科で甲状腺機能を検討。
  • 情報共有:母体の薬剤名・用量・投与時刻、採血結果、症状推移を母子手帳や紹介状で共有。

よくあるご質問(FAQ)

授乳中のLT4は本当に安全ですか?
はい。LT4の母乳移行は極少で、通常用量では乳児への影響は報告上きわめて稀です。空腹時内服と相互作用回避(鉄・Caなど)に留意し、6–8週でTSH再評価を行います。
MMIとPTUはどちらを選びますか?
いずれも授乳は可能です。最少用量の原則と授乳直後投与を守れば母乳中濃度は低く抑えられます。PTUでは母体の肝機能チェックを継続します。
採血はどのくらいの間隔で見ますか?
開始・用量変更後は6–8週を基本にTSH(±FT4)を確認します。中毒症の初期や症状変動時はより短周期で再評価します。
乳児側はどのようにフォローしますか?
基本は日常観察(体重曲線・哺乳力・覚醒度など)で十分です。異常が持続する場合のみ小児科で甲状腺機能の確認を検討します。

しもやま内科(船橋市)
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ご相談は:047-467-5500

👨‍⚕️ この記事の監修医師

下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医/日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医/日本循環器学会 循環器専門医/日本老年医学会 老年病専門医・指導医/日本甲状腺学会 甲状腺専門医糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。