授乳中の甲状腺薬|チアマゾール(メルカゾール)・チラーヂンS(LT4)の安全性と母乳育児

甲状腺のことでお悩みの方へ

甲状腺は喉の下にある小さな臓器で、体の代謝(エネルギーの使い方)を調整する「甲状腺ホルモン」を作っています。妊娠・不妊治療中は、このホルモンのバランスが特に大切になります。

船橋市のしもやま内科では、甲状腺の血液検査とエコー検査を行い、必要に応じて薬の調整を行っています。

このページの役割

授乳期(産後)の甲状腺薬の考え方をまとめています。妊娠中の薬剤の使い分けは、関連ページをご覧ください。

関連ページ

▼ 詳細な医療情報(医療従事者向け)

授乳期の甲状腺薬:安全性とフォロー(LT4/チアマゾール/PTU)

授乳中はレボチロキシン(LT4)は基本的に安全です。抗甲状腺薬は「最少用量」と「授乳直後の内服」を軸に、母体TSH/FT4の再評価と、必要時のみ乳児フォローを共有します。

要点まとめ(産婦人科外来で迷うところだけ)

  • LT4:母乳移行は極少。授乳は原則継続し、6–8週でTSH再評価。LactMed
  • 抗甲状腺薬:「最少用量」+「授乳直後内服」。可能なら次回授乳まで3–4時間空ける。LactMed(MMI)
  • 用量目安:MMI(チアマゾール)〜20mg/日、PTU〜450mg/日が“低〜中等量”の目安としてよく用いられる。ATA 2017
  • 乳児:ルーチン採血は原則不要。体重増加・哺乳力・活動性などを共有し、症状が続くときのみ小児科で検討。LactMed(MMI)
  • 紹介の目安:用量が増える/FT4高値が続く/症状強い/TRAb高値が疑われる場合は内科へ。ATA 2017

産婦人科外来でよくある悩みは「授乳を続けてよいか」「どの薬をどのタイミングで飲ませるか」「乳児の採血が必要か」です。
ここでは、授乳を止めずに安全域で管理するための実務ポイントを1ページにまとめます。

1) LT4(レボチロキシン)は授乳中に基本“継続OK”

  • 安全性:LT4は母乳中にごく少量で、通常用量で乳児への有害事象は報告上きわめて稀です。LactMed: Levothyroxine
  • TSH再評価:産後は必要量が変わることがあるため、目安として6–8週でTSH/FT4を再確認します。ATA 2017 Guidelines
  • 内服のコツ:空腹時内服。鉄・カルシウム・マグネシウム・PPI・大豆製品で吸収低下があり、投与間隔を確保します(例:LT4と鉄/Caは4時間以上)。

2) 抗甲状腺薬(MMI/PTU)は「最少用量」+「授乳直後内服」

  • 基本方針:授乳は原則継続しつつ、母体の甲状腺機能を保つ最少用量を目指します。ATA 2017 Guidelines
  • MMI(チアマゾール):母乳曝露を減らすには授乳直後に内服し、次回授乳まで3–4時間空けるのが実務的です。LactMed: Methimazole
  • 用量目安:低〜中等量としてMMI〜20mg/日PTU〜450mg/日が目安としてよく引用されます。ATA 2017
  • PTU:一部状況で選択されますが、母体側の肝障害リスクには注意し、漫然長期化を避けます。LactMed: Propylthiouracil

3) 乳児フォローは「ルーチン採血より“成長発達の見守り共有”」

  • 日常観察:体重増加曲線、哺乳力、傾眠・興奮、発汗・下痢傾向、皮疹。
  • 採血の要否:原則は不要で、成長発達の定期健診での確認が推奨されます。LactMed: Methimazole
  • 検討する状況:哺乳不良・体重停滞・傾眠が強いなどが持続する場合に、小児科で甲状腺機能を検討します。
  • 共有項目:母体の薬剤名・用量・内服時刻、採血結果、症状推移を母子手帳や紹介状で共有。

よくあるご質問(FAQ)

授乳中に甲状腺薬を飲んでもいいの?母乳に影響はある?
はい、授乳中の甲状腺薬服用は基本的に安全です。以下の理由から、甲状腺薬は母乳育児を続けながら服用可能です:(1)チラーヂンS(LT4):母乳への移行量はごく微量(母体投与量の約0.1〜1%)で、乳児の甲状腺機能に影響しません。(2)メルカゾール(チアマゾール):15mg/日以下の投与なら乳児への影響は無視できるレベル。母乳移行率は約0.1〜0.5%。(3)PTU(プロパジール):母乳移行率はさらに低く約0.025〜0.077%。いずれの薬も、アメリカ小児科学会(AAP)で授乳中に使用可能と分類されています。ただし乳児の甲状腺機能が気になる場合は定期的なチェックをお勧めします。
チラーヂンS(レボチロキシン)は授乳中に飲み続けられる?
チラーヂンS(レボチロキシン / LT4)は授乳中も安全に服用を継続できます。重要なポイント:(1)母乳への移行量は母体服用量のわずか0.1〜1%で、乳児のTSHに影響を与えません。(2)橋本病・甲状腺摘出後などでチラーヂンSが必須の方:授乳中でも絶対に自己中断しないでください。(3)むしろ、授乳中は母体の甲状腺ホルモン需要が増加するため、場合によっては妊娠前より増量が必要なことも。(4)服用タイミング:朝食前30分または就寝前に一定の時間に服用。(5)授乳との関係:服薬後すぐに授乳しても問題ありません(乳汁中濃度はピーク後も微量のため)。服用を継続することで、母体の甲状腺機能を正常に保ちながら安全に授乳できます。
メルカゾール(チアマゾール)は授乳中に飲める?
メルカゾール(チアマゾール)は授乳中も服用可能です。ただし以下の条件を守る必要があります:(1)投与量:15mg/日以下であれば乳児への影響は無視できる。(2)30mg/日以上の高用量では乳児の甲状腺機能に影響する可能性があるため、可能な限り低用量でコントロール。(3)服薬タイミング:授乳直後に服用すると、次回授乳までに血中濃度が低下し、母乳移行量を最小化できる。(4)乳児への影響モニタリング:長期服用の場合は、乳児の定期的な甲状腺機能チェック(TSH・FT4)を推奨。(5)授乳中はバセドウ病の再発リスクが高いため、自己中断せず医師の指示に従って継続服用してください。
授乳中に甲状腺薬を飲み忘れたらどうする?
授乳中の甲状腺薬の飲み忘れ時の対応:(1)チラーヂンS:気づいた時にすぐ服用。次の服用時間が近い場合は1回飛ばして通常通り。ダブルドーズしない。(2)メルカゾール・PTU:同様に気づいたらすぐ服用、次が近ければ飛ばす。重要なのは継続であり、たまの飲み忘れは大きな問題になりません。予防策:(1)スマホのアラーム設定(2)毎朝の歯磨き後に服用する習慣化(3)薬ケースで曜日管理。どうしても飲み忘れが多い場合は、医師に相談して1日1回投与など調整可能か検討。自己中断は絶対に避けてください。
甲状腺薬を飲みながら授乳するときの注意点は?
甲状腺薬服用中に授乳する際の注意点:(1)服薬タイミング:可能であれば授乳直後に服用→次回授乳までに血中濃度が低下(2)乳児の観察ポイント:体重増加・機嫌・睡眠パターン・便の状態。(3)母親の体調管理:甲状腺機能を正常に保つことで、質の良い母乳分泌が維持できる。(4)定期的チェック:母親のTSH・FT4を定期的に測定(産後4〜6週、その後3〜6ヶ月ごと)。(5)乳児のチェック:長期・高用量の場合は乳児の甲状腺機能スクリーニングを検討。ほとんどの場合、甲状腺薬服用中の授乳は安全に行えます。不安な場合は甲状腺専門医と小児科医に相談しながら進めましょう。
授乳中にバセドウ病が再発したらどうする?治療は?
産後はバセドウ病の再発リスクが高い時期です(産後3〜6ヶ月にピーク)。授乳中に再発した場合の治療方針:(1)軽症〜中等症:メルカゾール(チアマゾール)15mg/日以下で治療継続しながら授乳可能(2)重症(FT4高値・症状強い):一時的に高用量(30mg/日)が必要な場合は、搾乳を併用しながら治療 (3)β遮断薬(プロプラノロール):動悸が強い場合に短期併用、母乳移行少量で安全。再発時は自己判断せず、甲状腺専門医に相談してください。適切な治療でバセドウ病をコントロールしながら、多くの方は授乳を継続できています。
橋本病でチラーヂンSを飲んでいるが、授乳中に増量が必要?
橋本病でチラーヂンSを服用中の方が授乳する場合、以下の点に注意が必要です:(1)授乳により母体の甲状腺ホルモン需要が増加するため、産後もチラーヂンSの継続が必要。(2)一部の方では産後4〜6週でTSHが上昇し、妊娠前より増量が必要になることがある。(3)産後4〜6週と12週にTSH・FT4をチェックし、必要に応じて用量調整。(4)授乳中は自己判断で減量・中止しないこと→母体の甲状腺機能低下は乳汁分泌にも影響。産後は定期的な甲状腺機能チェックと用量調整が、母乳育児を成功させる鍵です。
授乳中に甲状腺の検査(エコー・シンチ)はできる?
授乳中でも安全に受けられる検査と注意すべき検査:(1)甲状腺エコー(超音波)→安全性が高いとされています。放射線を使わないため授乳中でも制限なし。(2)血液検査(TSH・FT4・FT3・抗体)→安全。(3)穿刺吸引細胞診(FNA)→安全。局所麻酔のみで全身への影響なし。(4)甲状腺シンチグラフィ(放射性ヨウ素)→**授乳中は禁忌**。放射性ヨウ素が母乳に移行するため。シンチが必要な場合は一時的な授乳中止(約3〜7日間の搾乳破棄)または完全な授乳中止が必要。バセドウ病の診断がついている方は、シンチなしでも血液検査とエコーで管理可能な場合が多いです。
授乳中の甲状腺薬の管理は何科?しもやま内科では?
授乳中の甲状腺薬の管理は、甲状腺専門医(内分泌内科)で行います。しもやま内科の特徴:(1)院長が甲状腺専門医で授乳中の薬物療法に精通(2)チラーヂンS・メルカゾール・PTUすべての授乳中投与に対応(3)血液検査(TSH・FT4・抗体)を同日実施し即日結果説明(4)産婦人科・小児科との連携(5)産後も長期的なフォローアップを提供(6)母乳育児を希望される方に寄り添った治療計画。船橋市で授乳中の甲状腺治療をお考えの方はお気軽にご相談ください。

実際の外来診療では…
授乳継続の可否そのものよりも、「母体の病勢が落ち着いているか」と「薬の飲み方(授乳直後・最少用量・相互作用回避)」でトラブルが減ります。迷うときは、母体の採血推移と症状を添えて紹介いただくと調整が早くなります。

🚨 緊急を要する場合: 産後に急激な動悸・息切れ・意識障害・体重急激減少・脈拍120以上が続く場合はためらわずに 119番(救急車)へご連絡をおすすめします。

紹介・ご相談(産婦人科の先生方へ)
047-467-5500 | FAX 047-467-7500

※ Web予約のご案内は行っていません。お電話(診療時間外はFAX)でご連絡ください。

参考文献・出典

  1. LactMed: Levothyroxine. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK501003/
  2. LactMed: Methimazole. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK501024/
  3. LactMed: Propylthiouracil. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK501084/
  4. ATA 2017 Guidelines (pregnancy & postpartum). https://www.liebertpub.com/doi/10.1089/thy.2016.0457
  5. Rind J, et al. Hyperthyroidism in Pregnancy and Lactation. J Endocrine Soc. 2021. https://academic.oup.com/jes/article/5/4/bvab001/6067596

この記事の監修医師

監修:しもやま内科 院長 下山立志(総合内科専門医・糖尿病専門医・循環器専門医・甲状腺専門医)

最終更新日:2026年8月23日

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最終更新日:2026-08-28

👨‍⚕️ この記事の監修医師

下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年科専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医
糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。

01/10/2025