糖尿病性腎症は、糖尿病の長期的な高血糖が原因で腎臓の機能が徐々に低下していく合併症です。進行すると、最終的には腎不全となり、人工透析が必要となるケースも少なくありません。現在、日本で人工透析を受けている方の約2人に1人が糖尿病を原因としているという現実があります。
糖尿病性腎症の進行を抑えるためには、早期発見と適切な管理が不可欠です。ここでは、糖尿病性腎症の進行を1期から5期のステージに分け、それぞれの段階でどのような変化が起こり、何をすべきかを分かりやすく解説します。
糖尿病性腎症のステージ別解説
糖尿病性腎症の進行度は、主に尿中のアルブミン(タンパク質の一種)の量と、腎臓の働きを示すeGFR(推算糸球体ろ過量)によって分類されます。
ステージ | 特徴(何が起きるか) | 対策(何をすべきか) |
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1期:腎機能亢進・早期腎症期
(eGFR ≥ 90 mL/min/1.73m²)
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2期:早期腎症期
(eGFR ≥ 90 mL/min/1.73m²)
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3期:顕性腎症期
(eGFR 60~89 mL/min/1.73m²)
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4期:腎不全前期
(eGFR 15~59 mL/min/1.73m²)
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5期:末期腎不全期
(eGFR < 15 mL/min/1.73m²)
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糖尿病性腎症の食事療法・生活習慣のポイント
どのステージにおいても、以下の食事療法と生活習慣のポイントは重要です。
- 塩分の摂取を制限:腎臓への負担を軽減し、血圧の上昇を防ぎます。加工食品や外食での塩分にも注意が必要です。
- 血糖値コントロール:HbA1c 7%未満を維持できるよう、継続的な努力が重要です。
- 血圧コントロール:血圧は目標値(130/80 mmHg以下、進行期では125/75 mmHg以下)を厳守するよう努めます。
- タンパク質の摂取量を調整:腎臓の負担を軽減するため、進行度に応じて適切なタンパク質摂取量について医師や管理栄養士と相談しましょう。
- 適切な運動療法:医師の指示を受けてから行いましょう。特に進行した糖尿病性腎症の場合、運動が逆効果になることもあります。
- 禁煙:喫煙は腎機能の悪化を促進するため、禁煙は必須です。
糖尿病性腎症の薬物療法
糖尿病性腎症の薬物療法は、レニン・アンギオテンシン系の薬剤(ACE阻害薬やARB)が基本となります。これらの薬剤は、血圧を下げるだけでなく、腎臓の保護作用も期待できます。近年では、SGLT2阻害薬など、腎保護作用を持つ新しい薬剤も登場しており、病状に応じて選択します。
詳細については、以下の記事もご参照ください。
糖尿病性腎症の薬物療法
糖尿病性腎症は、自覚症状が出にくい病気ですが、早期に発見し適切な治療を行うことで、進行を遅らせることが可能です。定期的な検査と医師の指導のもと、病気と向き合っていくことが大切です。
👨⚕️ この記事の監修医師
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年病専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医
糖尿病、内科一般、脂質異常症、亜鉛欠乏症などの栄養管理にも幅広く対応。
地域密着型の総合内科医として診療を行っています。