妊娠中に甲状腺のしこりが見つかったら?|エコー・穿刺・良性・悪性の見分け方|しもやま内科

「妊娠中の健診で甲状腺にしこりがあると言われた」「エコーを撮ったら結節が見つかったんですが、赤ちゃんに影響は?」——妊娠中に甲状腺のしこりが見つかって、不安になる妊婦さんも多いです。実際、妊娠中の甲状腺結節はそれほど珍しくなく、多くの場合は問題ありません。

📘 まず結論(要点まとめ)

  • 妊娠中に甲状腺のしこりが見つかっても、大半は良性です。
  • エコーで形・大きさ・血流を評価し、不安な所見があれば穿刺細胞診を検討します。
  • 妊娠中の穿刺は基本的に安全で、良性と判断されれば経過観察で十分なことが多いです。
  • 悪性が疑われる場合も、妊娠週数に応じた適切なタイミングで治療を行います。

この記事のポイント(2026年最新)

  • 妊娠中の甲状腺結節は健診や産科でのエコーで偶然見つかることが多く、悪性の確率は低いです。
  • 診断の第一歩は甲状腺エコー。不安心な結節があれば穿刺細胞診を検討します。
  • 妊娠中の穿刺細胞診は局所麻酔+超音波ガイド下で安全に行えます。
  • 良性と判断されれば無理な検査・治療は行わず、適切な経過観察で安心していただけます。
  • 悪性が疑われる場合は、妊娠週数・腫瘍の進行度に応じて手術時期を決定します。

※日本甲状腺学会・ATAガイドラインに基づいています。

妊娠中の甲状腺結節の特徴

妊娠中は女性ホルモンの影響で甲状腺がやや大きくなりやすく、健診や産科でのエコーで結節が偶然見つかることがあります。実際のところ:

  • 妊娠中に新たに結節ができるわけではありません(既にあったものが見つかる)
  • 甲状腺結節の90%以上は良性です
  • 妊娠そのものが結節を悪化させることはほとんどありません
  • ただし、妊娠中に見つかる結節は念のため専門的な評価が大切です

エコーで見極める「良性・悪性のリスク所見」

甲状腺結節の評価で最も重要なのはエコー所見です。以下の項目を組み合わせて総合判断します。

  • 内部エコー:「低エコー(周囲より暗い)」はリスク↑
  • 石灰化:「微小石灰化(点状)」は特に要注意
  • 境界:「境界不整」「前後径>左右径(taller-than-wide)」
  • 血流:内部血流の豊富さ
  • リンパ節:頸部リンパ節に異常がないか

※ TI-RADS(甲状腺エコーの悪性度を5段階で評価する分類)を参考に、穿刺の適応を判断します。TR3以上で穿刺を検討し、TR4・TR5では積極的な精査が必要です。

穿刺細胞診(FNAC)が必要な場面

以下に該当する場合は、穿刺細胞診をご検討ください。

  • 高リスクエコー所見(上記)が1つでもある
  • 短期間(例:6か月で体積50%以上増加)の明らかな増大傾向
  • 頸部リンパ節に疑わしい所見(皮質肥厚・石灰化など)を伴う
  • 過去のエコーで「経過観察」とされたが、現在不安な所見が出た

FNACは局所麻酔+超音波ガイド下で細い針(22~25G)を用いて実施。痛みは採血程度で、当日帰宅可能です。結果は「良性」「悪性」「判定保留」「不適切」に分類され、必要時は再穿刺や遺伝子検査(専門施設連携)を検討します。

※ 妊娠中の穿刺は基本的に安全ですが、出血リスク抑制のため産科連携が必要です。妊娠初期・後期は避ける場合もあります。

妊娠中に発見されたらどうする?

Step 1:エコー評価

甲状腺専門医によるエコー検査で、結節の大きさ・形・血流・リンパ節を総合的に評価します。

Step 2:穿刺細胞診の判断

エコー所見に基づいて、穿刺の必要性を判断します。良性パターンであれば経過観察、不安な所見があれば穿刺を行います。

Step 3:結果に応じた対応

  • 良性:経過観察。妊娠中は無理な手術は行いません。
  • 悪性が疑われる:妊娠週数・腫瘍の大きさ・進行度に応じて、出産後の手術や妊娠中期の手術を検討します。
  • 判定保留:再穿刺や分子検査(専門施設連携)を検討します。

良性・悪性の治療方針

良性の場合:

  • 基本的に経過観察で十分です。
  • 妊娠中は無理な手術や検査は行いません。
  • 出産後にエコー再検査を行い、変化がなければそのまま経過観察を続けます。

悪性(甲状腺がん)が疑われる場合:

  • 乳頭がん(最も多いタイプ):妊娠中の進行は通常遅いため、出産後に手術を行うことが多いです。
  • 腫瘍が大きい・進行が早い場合:妊娠中期(14~28週)に手術を行うことも検討されます。
  • 未分化がんや髄様がん:稀ですが、進行が早いため早期の対応が必要です。

※ 治療方針は妊娠週数・腫瘍の種類・進行度・ご本人の希望を総合的に判断します。産婦人科・甲状腺専門医・産科麻酔科などとの連携が大切です。

よくある質問

Q. 妊娠中の穿刺は胎児に影響しますか?
A. 基本的に安全です。局所麻酔のみで行い、超音波ガイド下で細い針を使用するため、胎児への影響はほとんどありません。ただし、出血リスク抑制のため産科医との連携が必要です。妊娠初期・後期は避ける場合もあります。

Q. 甲状腺結節があると自然分娩できませんか?
A. ほとんどの場合、自然分娩も可能です。結節そのものが出産に影響することはありません。ただし、巨大な腫瘍で気管を圧迫している場合は、分娩方法を産婦人科と相談することがあります。

Q. 良性でも手術が必要ですか?
A. 良性の場合は基本的に手術は不要です。ただし、巨大になって呼吸や飲み込みに支障が出た場合、または美容的な理由で希望される場合は、出産後に手術を検討することがあります。

Q. 妊娠中に抗甲状腺薬を飲んでいますが、結節の検査はできますか?
A. はい、可能です。バセドウ病や橋本病で薬を服用中でも、エコーや穿刺は問題なく行えます。ただし、抗凝固薬を服用中の場合は、穿刺前に担当医に相談してください。

Q. 出産後、結節は小さくなりますか?
A. 妊娠中のホルモンの影響で結節がやや大きくなることがありますが、出産後に元の大きさに戻ることもあります。出産後6か月以内にエコー再検査を行い、変化を確認します。

Q. 甲状腺がんの手術は妊娠中にできますか?
A. 乳頭がんで進行が遅い場合は出産後の手術が基本ですが、進行が早い場合や腫瘍が大きい場合は、妊娠中期(14~28週)に手術を行うこともあります。産婦人科・麻酔科との連携で安全に行えます。

院長の実績と専門性

下山立志は日本甲状腺学会 甲状腺専門医・糖尿病専門医・循環器専門医の三冠を取得し、年間480件以上の甲状腺診療実績があります。甲状腺結節の診断(エコー・穿刺細胞診)については、産科と連携しながら妊娠中の方にも対応しています。

⚠ 緊急性の判断と受診の目安

  • 首が急に腫れて呼吸が苦しい、飲み込みにくい → 今すぐお電話ください
  • 高熱+脈が速い+意識がもうろうとする → 救急外来119番へ
  • 結節の急激な膨張、強い痛み → 早急に受診してください

📞 047-467-5500

「妊娠中に甲状腺のしこりが見つかっても、大半は良性です」——適切な評価で安心してください。

月・火・木・金 9:00~12:00 / 14:45~17:30 土 9:00~12:00

☎ 047-467-5500

最終更新日: 2026年7月26日
監修: 下山立志(総合内科専門医・糖尿病専門医・循環器専門医・甲状腺専門医)
※2026年時点の最新ガイドライン動向を踏まえて解説しています。

📚 参考文献

  • 日本甲状腺学会 編「甲状腺疾患診療ガイドライン 2022」.
  • American Thyroid Association (ATA). “2015 Revised American Thyroid Association Management Guidelines for Patients with Thyroid Nodules and Differentiated Thyroid Cancer.” Thyroid, 2016;26(1):1-133.
  • Teixeira FV, et al. “Thyroid nodules in pregnancy.” Endocrinol Diabetes Nutr, 2018;65(1):47-56.

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最終更新日:2026-08-05

👨‍⚕️ この記事の監修医師

下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年科専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医
糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。

19/10/2025