潜在性甲状腺機能低下症と妊娠 ― 妊娠希望の女性へ
「TSHが少し高いと言われたけど、妊娠できますか?」
「潜在性甲状腺機能低下症と診断されたが、赤ちゃんは大丈夫でしょうか?」
このようなご相談は、当院で非常に多くいただきます。
潜在性甲状腺機能低下症は自覚症状がほとんどないため軽視されがちですが、妊娠を希望する女性にとっては非常に重要な疾患です。
このページでは、潜在性甲状腺機能低下症が妊娠に与える影響、当院の具体的な治療方針、目標とするTSH値などを詳しく解説します。
潜在性甲状腺機能低下症とは
TSH(甲状腺刺激ホルモン)が高値であるにもかかわらず、FT4(遊離サイロキシン)が正常範囲内にある状態を「潜在性甲状腺機能低下症」と言います。
症状がほとんど出ないため、健康診断や不妊検査で初めて指摘される方が少なくありません。
妊娠希望女性にとってなぜ重要なのか
妊娠初期(特に6週頃まで)は、胎児が自分で甲状腺ホルモンを作れないため、母親の甲状腺ホルモンが脳や神経の形成に大きく影響します。
潜在性甲状腺機能低下症の状態で妊娠すると、以下のリスクが上昇することが複数の研究で報告されています:
- 早期流産・習慣流産のリスク増加
- 妊娠高血圧症候群
- 胎児の発育遅延
- 妊娠糖尿病の合併
当院が推奨する妊娠前のTSH目標値
妊娠希望時の目標:TSH 2.0 μIU/mL未満(理想は0.5〜1.5)
日本甲状腺学会のガイドラインでは2.5未満とされていますが、当院ではより安全性を重視し、2.0未満を目標値としています。
特に以下の場合は積極的にチラーヂン®治療を開始します:
- TSHが2.5以上の方
- TSHが2.0以上かつ甲状腺抗体(TPOAbまたはTgAb)が陽性の方
- 過去に流産や不妊治療歴がある方
当院での実際の診療の流れ
- 初診時に甲状腺機能検査・抗体検査・甲状腺超音波検査を実施
- 必要に応じてチラーヂン®を開始し、4週間ごとに用量調整
- 目標値到達を確認してから妊活を再開するようご案内
- 妊娠判明後は速やかに連絡をいただき、用量を約30〜50%増量
- 妊娠中は原則月1回の定期フォロー(必要に応じて増回)
よくある質問(FAQ)
Q. TSHが2.3くらいですが治療した方がいいですか?
A. 妊娠を希望される場合は治療をおすすめします。当院ではTSH 2.0未満を目標としてチラーヂン®を調整しています。
Q. チラーヂンを飲むと胎児に悪影響はありますか?
A. いいえ。妊娠前に適切な量で甲状腺ホルモンを整えることは、胎児の健全な発達を守るためにとても重要です。妊娠中も安全に使用できます。
Q. 治療すれば流産のリスクは下がりますか?
A. 適切な治療により流産率が低下したという報告が複数あります。
Q. 治療を始めてから妊娠するまでどのくらいかかりますか?
A. 個人差がありますが、多くの方は4〜8週間程度で目標値に到達します。
院長からのメッセージ
「数値が少しだけ高いから大丈夫だろう」と放置してしまう方がとても多いのですが、潜在性甲状腺機能低下症は、早期に適切に対応すれば妊娠・出産の結果が大きく変わる疾患です。
当院では一人ひとりの背景を丁寧に伺いながら、安全で安心できる妊娠を目指した管理を行っています。
少しでも不安がある方は、どうぞ遠慮なくご相談ください。
ご予約について
当院は電話予約のみとなっております。
お電話の際に「妊娠希望の甲状腺の相談」とお伝えいただければ、スムーズに対応いたします。
TEL: 047-467-5500
関連ページ:
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橋本病と妊娠 |
バセドウ病と妊娠
最終更新日:2026-07-22
👨⚕️ この記事の監修医師
下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年科専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医
糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。