バセドウ病眼症の治療について
バセドウ病眼症とは
バセドウ病眼症とは、甲状腺に関連する抗体が眼球の周りにある脂肪や目を動かす筋肉の中に存在し、それが標的となって炎症が起こるものです。バセドウ病でも甲状腺機能低下症(橋本病)でも、また甲状腺機能が正常であっても「甲状腺眼症」は起こり得ます。バセドウ病の治療によって甲状腺機能異常が治ると眼も治ると思いがちですが、それは正しくありません。甲状腺の治療と眼の治療は切り離して考えなければなりません。
バセドウ病眼症は珍しくない
バセドウ病の男女比は1:5で、女性の約500人に1人がバセドウ病とされます。また、橋本病においては男女比が1:20であり、圧倒的に女性に多い病気です。年齢層はバセドウ病が20~30代、橋本病は50代に多くみられます。甲状腺機能の異常による全身の症状が目の症状よりも先に現れるのか、それとも目の症状が先に現れるのかは患者さんによってさまざまです。そのため目の異常を訴え眼科を受診して初めて甲状腺機能異常が見つかる場合もあります。バセドウ病眼症の初めの症状は、まぶたの腫れや赤み、目の奥の痛みや重さなど眼窩部の炎症性浮腫を反映した症状が主です。したがってバセドウ病眼症の初期の場合、眼科の病気でよくありがちな結膜炎や眼精疲労との区別がつきにくく眼科医でも診断が困難なこともあります。
甲状腺機能が正常化すれば眼症は治る?
バセドウ病の治療薬として用いられるチアマゾールやプロピルチオウラシルを内服すると、甲状腺機能亢進症は改善します。甲状腺機能亢進症が正常になると眼瞼後退は改善することが多いのですが、ほかの眼症はあまり変わらないことが少なくありません。しかし、甲状腺機能亢進症を放っておくと、眼科での治療がうまくいかないため、甲状腺に対する治療は不可欠です。治療を始める前に、どの程度眼が障害されているのか、どういうタイプの障害なのかを調べる必要があります。これは、バセドウ病の眼障害に詳しい眼科の先生におかかりになった方が良いでしょう。また、治療を始める場合でも、治療によって眼の障害がどの程度よくなったかを正確に判断しなければいけません。これも、専門の眼科の医師でなければ難しいといえます。
バセドウ病眼症を悪化させる原因
第一は喫煙です。バセドウ病の患者さんで喫煙される方は、そうでない方に比べて眼球突出の程度が強いとされています。第二に寝不足、第三はストレスです。禁煙を続け、就寝時間を増やしただけでまぶたの腫れや目の奥の痛みが改善した症例は数多くみられます。これら以外ではっきり眼症と関係があるものはあまりわかっていません。現在のところ、バセドウ病眼症の原因がわかっておらず予防法もありません。しかし、甲状腺の治療をしている間に悪くなっていくことはあまりなく、早い時期に検査と治療を受ければ軽いうちに押さえてしまうことができます。