甲状腺眼症とは?目の腫れ・違和感・視力障害の原因に|船橋市の甲状腺専門医が解説

🔎 要点まとめ

甲状腺眼症は、甲状腺疾患に伴って目の腫れ・違和感・複視・視力障害を引き起こす自己免疫疾患です。炎症が活発な活動期にはステロイドや新薬テプロツムマブ、放射線治療が行われます。非活動期には眼窩減圧術や斜視手術などの機能回復手術が検討されます。禁煙や甲状腺機能の安定も重要です。専門医が総合的にサポートします。

甲状腺眼症(Thyroid Eye Disease: TED)は、甲状腺疾患に合併して発症する代表的な眼の自己免疫疾患です。眼窩組織の炎症により、眼球突出(眼球が飛び出す)、複視(ものが二重に見える)、まぶたの腫れ・後退、ドライアイ、さらには重症では視力障害まで多様な症状が出現します。

甲状腺眼症の症状と治療|船橋市の甲状腺専門医しもやま内科

どんな症状が出ますか?

  • 眼球突出(目が前に出る感じ)
  • 複視(ものが二重に見える)
  • ドライアイ、異物感、充血、痛み
  • まぶたの腫れ、まぶたが吊り上がる
  • 視力低下や視野欠損(重症例)

特に視神経が圧迫されると、最悪の場合は失明に至ることもあります。早期診断と治療が大切です。

原因は何ですか?

自己免疫の異常が原因です。甲状腺に対する自己抗体が、眼窩組織の細胞にも反応して炎症を引き起こします。バセドウ病に合併することが多いですが、橋本病などでも生じることがあります。喫煙は大きな悪化因子です。

どんな検査をしますか?

  • 眼球突出の程度測定
  • 視力・視野検査
  • 眼球運動の評価(複視の程度)
  • 眼窩MRI・CT(筋肉や脂肪組織の腫れの確認)
  • 血液検査(甲状腺機能、自己抗体)

治療はどうしますか?

活動期(炎症期)の治療

発症から半年〜2年ほどは炎症が活発な活動期です。この時期の治療が非常に重要です。

ステロイド療法

  • ステロイド・パルス療法: 高用量ステロイドを短期間集中的に点滴(週1回×12週など)
  • 経口ステロイド: 内服で炎症を抑える
  • 局所注射: 眼窩内に直接注射(保険適用外もあり)

副作用には、糖尿病悪化、感染症、肝障害、心血管系への影響などがあり、慎重な管理が必要です。

放射線治療

眼窩組織に放射線を照射して炎症細胞を抑えます。糖尿病網膜症の悪化リスクがある方には注意します。

テプロツムマブ(商品名:テッペーザ)

2024年に日本でも使用可能となった新しい分子標的薬です。インスリン様成長因子-1受容体を阻害し、眼球突出や複視改善に高い効果が期待できます。3週間ごとに計8回点滴します。聴覚障害や高血糖など副作用の管理が重要です。

非活動期(炎症が落ち着いた後)の治療

炎症が治まっても眼球突出や複視、まぶたの変形が残る場合は手術を行います。

  • 眼窩減圧術: 眼窩の骨や脂肪を削り、突出を改善
  • 斜視手術: 複視に対し外眼筋の位置を調整
  • 眼瞼手術: まぶたの後退や腫れ、逆さまつ毛の矯正
  • ボツリヌス毒素注射: 筋肉の緊張緩和(一時的効果、一部保険外)

その他の治療・生活管理

  • ドライアイ対策(点眼、眼軟膏)
  • 禁煙指導
  • ストレス管理、十分な睡眠
  • 甲状腺機能のコントロール

甲状腺眼症は放置してもよくなりますか?

軽症で自然軽快する例もありますが、中等症以上では放置せず、早期の治療介入が推奨されます。視神経圧迫による視力低下は不可逆になる場合があるため注意が必要です。

当院での診療について

しもやま内科では、甲状腺専門医が甲状腺眼症の早期診断・治療に対応しています。必要に応じて眼科専門医と連携し、総合的な治療方針を提案します。不安や悩みにも丁寧にお応えしますので、まずはご相談ください。

📄 甲状腺眼症に関するよくある質問(FAQ)

甲状腺眼症は命に関わる病気ですか?

ほとんどの場合命に関わることはありませんが、重症例では視神経が圧迫され失明に至る可能性があり、早期診断・治療が重要です。

眼球突出は元に戻せますか?

活動期の治療である程度軽快することもありますが、残存した場合は眼窩減圧術などの手術で改善を図ります。

複視は治りますか?

活動期が治まると軽減することもありますが、残る場合は斜視手術で調整します。完全に消失しないケースもあります。

手術は必ず必要ですか?

すべての方が手術を受けるわけではありません。症状の程度とご本人の希望を踏まえて検討します。

治療は痛みますか?

点滴治療や注射、手術の際は必要に応じて鎮痛・麻酔を行います。不安があれば事前に医師へご相談ください。

どれくらいの期間治療が必要ですか?

活動期は半年〜2年程度とされます。治療は数ヶ月〜年単位に及ぶ場合があります。

甲状腺眼症は再発しますか?

再燃することもありますが、禁煙や甲状腺機能の安定化、ストレス管理が予防に役立ちます。

新薬テプロツムマブは誰でも受けられますか?

活動期の中等症以上が適応となります。全身状態や合併症によって使用可否を判断します。

治療費が高額になりませんか?

高額療養費制度などの公的支援が活用できます。必要に応じてスタッフがご案内しますのでご安心ください。

家族や職場に病気を理解してもらえず辛いです。

外見の変化による精神的負担は大きいものです。当院では心理的サポートも含め丁寧にお話を伺います。

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💼 この記事の監修医師

下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年病専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。