妊娠を望む女性へ 〜潜在性甲状腺機能低下症と不妊のお話〜
妊娠を希望しているけれど、なかなか授からない――その背景に「甲状腺の働き」が関係していることがあるのをご存知でしょうか?
実はよくあること ― 不妊と甲状腺機能の関係
不妊治療を受けている女性の中には、甲状腺の異常が見つかる方が少なくありません。甲状腺ホルモンは女性の身体の代謝や月経周期に深く関わっており、その働きが乱れると排卵障害や着床不全を引き起こす可能性があります。
中でも注意したいのが、潜在性甲状腺機能低下症という、見た目は健康でも体内ではホルモンバランスが崩れ始めている状態です。
潜在性甲状腺機能低下症とは?
甲状腺ホルモン(FT4など)の値は正常でも、脳から甲状腺への刺激ホルモン(TSH)が基準よりもやや高くなっている状態を「潜在性甲状腺機能低下症」といいます。
この状態は、自覚症状がほとんどないため見過ごされがちですが、妊娠を希望する方や妊婦さんにとっては、見逃してはいけない重要なサインです。
なぜ問題なのか?
妊娠においては、甲状腺の働きが少しのズレでも影響を及ぼすことがあります。たとえ甲状腺ホルモンが正常であっても、TSHが高めであるだけで以下のリスクが指摘されています。
- 排卵がうまく起こらず、妊娠しにくくなる
- 流産率が上がる
- 胎児の神経発達に影響を及ぼす可能性がある
そのため、妊娠を希望する段階からTSH値の最適化を図ることが重要です。
妊娠時に推奨されるTSH目標値
以下の表に示すように、妊娠の時期に応じてTSHの目標値は異なります:
妊娠時期 | 推奨TSH目標値 |
---|---|
妊娠前〜妊娠初期(12週まで) | 2.5 μU/ml 以下 |
妊娠中期(13〜27週) | 3.0 μU/ml 以下 |
妊娠後期(28週以降) | 3.0 μU/ml 以下 |
これらの目標に沿って、必要に応じて甲状腺ホルモン補充療法(チラーヂンSなど)を行います。
あなたにできること
妊娠を考えたとき、婦人科や不妊治療の一歩手前で、まず内科的な視点での健康チェックが重要です。特に30代以降で妊娠を希望している方は、甲状腺機能のスクリーニングをおすすめします。
- 過去に流産の経験がある
- 月経が不規則
- 橋本病を指摘されたことがある
- 甲状腺の自己抗体(TPO抗体・Tg抗体)が陽性
これらに当てはまる方は、妊娠前からTSH値の管理を行うことで、妊娠率の改善や流産予防が期待できます。
ご相談ください
しもやま内科では、甲状腺ホルモンの測定や超音波検査を通じて、妊娠を見据えたホルモン管理をサポートしています。
「ホルモン値が正常だったから大丈夫」と思わず、TSHの数値も含めてトータルにチェックしてみませんか?
ご不安のある方は、ぜひ一度ご相談ください。