骨粗鬆症は骨の密度(骨密度)と骨の質が低下し、骨折のリスクが高まる病気です。加齢や閉経後の女性ホルモン(エストロゲン)の減少が主な原因で、初期には自覚症状がほとんどありません。骨密度検査(DXA法)で診断し、食事・運動・薬物療法を組み合わせて予防・治療を進めます。船橋市のしもやま内科では、患者さん一人ひとりのリスクに合わせた治療計画をご提案します。

骨粗鬆症とは?
骨粗鬆症(osteoporosis)は、骨の量(骨量)が減り、骨の質(骨強度)も低下することで、わずかな衝撃でも骨折しやすくなる全身性の骨疾患です。WHO(世界保健機関)の診断基準では、若年成人の平均骨密度と比較して標準偏差(SD)が-2.5以下の場合に骨粗鬆症と診断されます。特に閉経後の女性と高齢男性に多く、放置すると日常生活の質(QOL)を大きく損なう可能性があります。
骨粗鬆症の原因
骨は常に「骨形成(骨を作る)」と「骨吸収(骨を壊す)」を繰り返して新陳代謝(リモデリング)しています。このバランスが崩れ、骨吸収が骨形成を上回ると骨密度が低下します。主な原因は以下のとおりです。
- 加齢:誰でも加齢とともに骨密度は減少します。特に70歳以上では急激に低下しやすい。
- 閉経後のエストロゲン低下:女性ホルモンのエストロゲンには骨吸収を抑える働きがあります。閉経によりエストロゲンが急減すると、骨吸収が促進されます。
- カルシウム不足:骨の主成分であるカルシウムの摂取が不足すると、骨形成に必要な材料が足りなくなります。
- ビタミンD欠乏:ビタミンDはカルシウムの吸収を助ける重要な栄養素です。日光を浴びる機会が減ると欠乏しやすくなります。
危険因子
以下の項目に該当するほど骨粗鬆症のリスクが高まります。複数当てはまる方は早めの検査をおすすめします。
- 家族歴:両親や兄弟に大腿骨頸部骨折の方がいる
- 低体重:BMIが18.5未満
- 喫煙:喫煙は骨密度低下の独立した危険因子です
- 過度の飲酒:1日あたり純アルコールで20g以上(日本酒1合程度を超える量)
- ステロイド薬の長期使用:関節リウマチや喘息などの治療でステロイドを長期内服している
- その他:糖尿病・関節リウマチ・慢性腎臓病・胃切除後など
症状
骨粗鬆症は「沈黙の病気(silent disease)」と呼ばれ、初期にはほとんど症状がありません。骨密度がかなり低下してから以下の症状が現れます。
- 骨折:特に背骨(脊椎圧迫骨折)、大腿骨近位部(股関節)、手首の骨折が代表的です
- 背中や腰の痛み:脊椎圧迫骨折による慢性的な痛み
- 身長の低下:脊椎がつぶれることで2〜3cm以上低くなることがある
- 姿勢の変化(猫背・円背):背骨の弯曲が強くなる
診断 — 骨密度検査とFRAX
骨粗鬆症の診断には骨密度測定(DXA法)が標準的に用いられます。DXAは「デキサ」とも呼ばれ、腰椎と大腿骨近位部の骨密度をX線で測定し、若年成人平均(Tスコア)との差で評価します。検査時間は約10〜15分、被曝量もわずかです。
さらに、FRAX®(骨折リスク評価ツール)では、年齢・性別・体重・身長・骨折歴・家族歴・喫煙・飲酒・ステロイド使用・関節リウマチの有無などから、今後10年間の大腿骨頸部骨折・主要骨折の確率を計算できます。当院では骨密度検査の結果と合わせて総合的に治療方針を決定します。
治療薬の種類
骨粗鬆症の治療薬は、作用機序により「骨吸収抑制薬」と「骨形成促進薬」に大別されます。患者さんの骨密度・年齢・骨折リスクに応じて最適な薬剤を選択します。
- ビスホスホネート製剤(アレンドロネート・リセドロネート・ゾレドロン酸など):骨吸収を抑制する第一選択薬。週1回または月1回の内服、年に1回の点滴など用法が多彩。
- SERM(選択的エストロゲン受容体調節薬)(ラロキシフェン・バゼドキシフェン):骨にエストロゲン様作用を示し、骨吸収を抑える。特に閉経後女性に使用。
- 抗RANKL抗体(デノスマブ):RANKLというタンパク質を阻害し、破骨細胞の働きを抑える。皮下注射で6ヶ月に1回の投与。
- 抗スクレロスチン抗体(ロモソズマブ):骨吸収抑制と骨形成促進の両方の作用を持つ。骨粗鬆症性骨折の高リスク患者に使用。
- PTH製剤(テリパラチド):副甲状腺ホルモンを間欠投与して骨形成を促進する注射薬。骨折リスクが特に高い症例に選択。
食事療法
骨を強くするためには、以下の栄養素をバランスよく摂取することが重要です。
- カルシウム:1日700〜800mgが推奨。乳製品(牛乳・ヨーグルト・チーズ)、小魚(ししゃも・いわし)、大豆製品(豆腐・納豆)、緑黄色野菜(小松菜・ブロッコリー)に豊富。
- ビタミンD:カルシウムの腸管吸収を促進。鮭・サンマ・きのこ類・卵黄に含まれる。日光浴も重要(1日15分程度の手のひら露出が目安)。
- ビタミンK:骨のタンパク質(オステオカルシン)の活性化に関与。納豆・ほうれん草・ブロッコリーに豊富。納豆は特に含有量が多い。
- たんぱく質:骨のコラーゲン基質を構成。肉・魚・卵・大豆製品から十分に摂る。
運動療法
運動は骨密度の維持・向上と転倒予防に効果的です。骨折リスクに応じて無理のない範囲で行いましょう。
- ウォーキングなどの有酸素運動:週150分(1日30分×週5日)を目標に。骨に適度な負荷をかけることで骨形成を促す。
- 筋力トレーニング:スクワット・かかと上げ・椅子からの立ち上がりなどで下肢・体幹・背筋を強化。週2〜3回が目安。
- バランス運動:片足立ち(手を支えに)・タンデム歩行(つま先とかかとを一直線に)・ストレッチなどで転倒予防。
- 痛みがある場合や骨密度が極端に低い方は、医師に相談して運動強度を調整してください。
転倒予防 — 家庭でできる対策
骨粗鬆症の患者さんにとって転倒は骨折の最大の危険です。以下の対策を実践しましょう。
- 部屋の段差をなくす(コード類をまとめる・敷居のまたぎを減らす)
- 手すりの設置(階段・トイレ・浴室)
- 滑りにくい床材・マットの使用
- 夜間の足元照明を確保する
- 履きやすい靴(滑り止め付き)を選ぶ
- 視力低下がある方は眼鏡を適切に使用する
骨粗鬆症の合併症
骨粗鬆症による骨折は、特に高齢者の日常生活動作(ADL)を大きく低下させます。
- 大腿骨頸部骨折:歩行が困難になり、寝たきりや要介護状態につながるリスクが高い。手術とその後のリハビリテーションが必要。
- 脊椎圧迫骨折:背骨がつぶれることで慢性的な腰痛・身長低下・姿勢悪化をきたす。複数回起こると脊柱後弯(猫背)が固定化。
- 橈骨遠位端骨折(手首の骨折):転倒時に手をついて発生。比較的若い骨粗鬆症患者にも多い。
⚠️ 骨折時の対応(緊急時に注意)
以下のような症状がある場合は、無理に動かさず、速やかに医療機関を受診してください。
- 転倒後、強い痛みで動けない・体重がかけられない
- 腰や背中に強い痛みがあり、姿勢を変えられない
- 手足の形がおかしい・腫れがひどい
- 痛みで夜も眠れない
しもやま内科では診療時間内であれば緊急対応を行います。休診時は船橋市の救急医療機関をご案内しますので、まずはお電話(047-467-5500)でご連絡ください。
受診の目安
- 身長が以前より2〜3cm以上低くなった
- 背中が丸くなってきた
- 転倒しやすい/最近転んだ
- ステロイド薬を長期内服している
- 両親が大腿骨頸部骨折を起こした
- 閉経後の女性で骨粗鬆症が心配
よくある質問(FAQ)
骨粗鬆症は予防できますか?
はい、予防可能です。若いうちから十分なカルシウム摂取(牛乳・小魚・豆腐など)、ビタミンD(日光浴・魚類)、ビタミンK(納豆・緑黄色野菜)を意識し、適度な運動(特にウォーキング・筋トレ)を習慣にすることが重要です。20代までに最大骨量を高め、その後は減少を緩やかにすることが予防の基本です。
骨粗鬆症の診断基準は?
骨密度検査(DXA法)で若年成人平均値(YAM)の70%未満、または既に脆弱性骨折がある場合に骨粗鬆症と診断されます。80%以上は正常、70〜80%は骨量減少(骨減少症)と判定されます。50歳以降の女性や、骨折歴のある方は検査をおすすめします。
骨粗鬆症の薬にはどんなものがありますか?
治療薬は大きく分けて骨吸収抑制薬(ビスホスホネート製剤・デノスマブ・SERMなど)と骨形成促進薬(テリパラチドなど)があります。患者様の年齢・骨密度・骨折リスク・腎機能などを総合的に評価し、最適な薬剤を選択します。注射薬(年1回・半年に1回など)もあり、通院頻度や服薬のしやすさに応じて選べます。
骨粗鬆症の治療はいつまで続けますか?
一般的には3〜5年間の継続治療が推奨されます。治療効果は定期的な骨密度検査で評価し、改善が見られれば減量や休薬(ドラッグホリデー)を検討することもあります。ただし自己判断での中断は骨折リスクを高めるため、必ず医師と相談してください。
骨粗鬆症の人が気をつけるべき生活上の注意点は?
転倒予防が最も重要です。家の中では段差をなくす・手すりをつける・滑りにくい床材にする・夜間は足元灯をつけるなどの環境整備をおすすめします。外出時は滑りにくい靴を履き、杖や歩行器の使用も検討しましょう。また、過度のアルコールと喫煙は骨密度低下を促進するため控えましょう。
骨粗鬆症の人はどのような運動をすればいいですか?
ウォーキングなどの軽い有酸素運動と、スクワット・かかと上げなどの軽い筋力トレーニングが推奨されます。骨に適度な負荷がかかることで骨形成が促進されます。ただし、腰を強くひねる運動や前屈する運動、ジャンプを伴う運動は骨折リスクが高まるため避けてください。運動開始前に医師に相談することをおすすめします。
骨粗鬆症の治療中にカルシウムサプリは必要ですか?
食事から十分なカルシウム(1日800mg)が摂取できない場合はサプリメントの併用を検討します。ただし過剰摂取は血管へのカルシウム沈着や腎結石のリスクがあるため、医師の指導のもとで適切な量を摂取することが重要です。食事からの摂取が基本で、足りない分をサプリで補う考え方が適切です。
骨粗鬆症は男性にもありますか?
はい、あります。女性に多いイメージがありますが、60歳以上の男性の約5〜10%が骨粗鬆症とされています。男性の場合、テストステロン低下・糖尿病・ステロイド長期使用・過度の飲酒などがリスク因子です。男性の骨粗鬆症は発見が遅れがちで、初めて気づくきっかけが骨折というケースも少なくありません。
骨粗鬆症と糖尿病の関係は?
糖尿病患者は骨質が低下しやすく、同じ骨密度でも骨折リスクが高いことが知られています。血糖コントロール不良の方や、糖尿病治療薬(特にチアゾリジン系薬剤)を使用中の方は骨粗鬆症のリスク評価が必要です。当院では糖尿病と骨粗鬆症を併せて管理することが可能です。
骨密度検査はどのように行いますか?
当院では骨密度検査を実施しております。検査は痛みがなく、数分で終了します。更衣の必要はなく、お着替え不要な場合は上着を脱いでいただく程度で検査可能です。健康診断や人間ドックで骨密度を測定された方は、結果をお持ちいただくと今後の経過観察に役立ちます。
この記事の監修医師
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医/日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医/日本循環器学会 循環器専門医/日本老年医学会 老年科専門医・指導医/日本甲状腺学会 甲状腺専門医
糖尿病や腎疾患など生活習慣病を含め、地域密着の総合内科診療を行っています。食事・運動などの生活指導と薬物療法を組み合わせ、継続可能な治療を重視しています。
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最終更新日:2026-08-28
👨⚕️ この記事の監修医師
下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年科専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医
糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。