食物依存性運動誘発性アナフィラキシー:FDEIA

食物依存性運動誘発性アナフィラキシー(FDEIA)は、特定の食物を摂取した後に運動が重なることで起きるアレルギー反応です。誘因の重なりを避け、必要時はエピペンを携帯しましょう。

FDEIA(食物依存性運動誘発アレルギー)|運動会で発作に苦しむ女子高校生とエピペンを準備する看護師|しもやま内科
FDEIA(食物依存性運動誘発アレルギー)|運動会で発作に苦しむ女子高校生とエピペンを準備する看護師

食事と運動が重なることでじんましん・呼吸困難・血圧低下などの強いアレルギー反応(アナフィラキシー)が起きる病態を、食物依存性運動誘発性アナフィラキシー(FDEIA)といいます。激しい運動に限らず、比較的軽い運動でも生じることがあります。

食物依存性運動誘発性アナフィラキシー(FDEIA)とは

FDEIAは、特定の食物アレルギーを持つ方が食物の摂取後に運動をすることを契機として、アナフィラキシー症状(じんましん、呼吸困難、血圧低下、意識消失など)を引き起こす病態です。運動により体内の肥満細胞からヒスタミン等が放出され、気管支収縮・血管透過性亢進が起きること、また食後はアレルゲン吸収が高まることが関与すると考えられています。

FDEIAの特徴

① 食物の摂取が必要

特定の食物を食べた後2〜3時間以内に運動すると、じんましんや呼吸困難、血圧低下などの急性アレルギー症状(アナフィラキシー)を起こすことがあります。日本では小麦が原因食物として最も多く、成人のFDEIAの大半を占めると報告されています。

小麦のアレルゲンは、水溶性蛋白(アルブミン・グロブリン)と不溶性蛋白(グルテン:グリアジン・グルテニン)に大別されます。特異IgE検査では「小麦」「グルテン」が該当し、ω5-グリアジン特異IgEは小麦依存型(WDEIA)の診断に有用です。

② 運動後に症状が出現

症状は通常、運動後数分〜数時間の範囲で現れます。強度が必ずしも高くなくても発症する点に注意が必要です。

③ 主な症状

  • 発疹・じんましん・かゆみ
  • 呼吸困難、喘鳴(ゼーゼー)
  • 咽頭喉頭の腫脹による嚥下・発声困難
  • 動悸・頻脈、血圧低下、めまい・失神
  • 腹痛、悪心・嘔吐

予防・管理のポイント

誘因を重ねない(トリガー回避)

  • 運動前2〜3時間は、原因食物(疑い含む)を摂取しない。
  • アスピリンなどNSAIDsアルコール月経などは発症リスクを高めうるため、これらが重なる状況での運動は避ける。
  • 食後は安静を基本とし、状況により運動をさらに遅らせる(医師の指示に従う)。

関連:口腔アレルギー症候群(OAS)

エピネフリン自己注射(エピペン)の携帯

アナフィラキシー既往がある、または医師が必要と判断した場合はエピペンを常に携帯し、使用方法を理解しておきましょう。学校・職場・家族へも情報共有をおすすめします。

症状が出たときの対応

  1. 運動を即中止し安静、同伴者がいれば救援を要請。
  2. 皮膚症状主体で軽症の場合は抗ヒスタミン薬内服を検討。
  3. 呼吸器症状・循環器症状(息苦しい、声が出にくい、ふらつく等)を伴う場合、ただちにエピペン使用
  4. エピペン使用の有無にかかわらず、症状が進行/再燃することがあるため早急に医療機関を受診

検査と診断の考え方

  • 血液検査:特異IgE(小麦・グルテン・ω5-グリアジンなど)
  • 問診:原因食物、摂取から運動までの時間、運動強度、併用薬(NSAIDs 等)、アルコール、月経などの重なり
  • 負荷試験:必要時、専門施設で安全管理下に実施を検討

よくある質問(FDEIA)

運動のどれくらい前までなら食べても大丈夫ですか?
一般に2〜3時間は空けることが推奨されます。個人差があるため、医師の指示に従ってください。
エピペンはいつ使えばよいですか?
息苦しさ、声が出にくい、咳込みが強い、ふらつき・意識が遠のくなど呼吸器/循環器症状が出たら直ちに使用します。
抗ヒスタミン薬を毎日飲むと予防になりますか?
症状が頻回な方では、医師の判断で予防的内服を検討します。自己判断での継続は避け、外来で相談してください。
原因が小麦かどうか調べられますか?
特異IgE(小麦・グルテン・ω5-グリアジン)が参考になります。食事・運動・誘因の重なりも合わせて総合的に評価します。

☎ ご相談・受診のご予約

しもやま内科(船橋市芝山) TEL: 047-467-5500

📍 アクセス
千葉県船橋市芝山4-33-5/京成バス「大慶山」バス停 徒歩1分/駐車場7台あり

👨‍⚕️ この記事の監修医師

下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医/日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医/日本循環器学会 循環器専門医/日本老年医学会 老年病専門医・指導医/日本甲状腺学会 甲状腺専門医

11/03/2025