食物依存性運動誘発性アナフィラキシー:FDEIA
食物依存性運動誘発性アナフィラキシー(Food-Dependent Exercise-Induced Anaphylaxis, FDEIA)とは、特定の食物アレルギーを持つ人が、食物の摂取後に運動することが引き金となって、じんましん、呼吸困難、血圧低下、意識消失などのアナフィラキシー症状が出現するものです。運動の強さは必ずしも激しいものでなくても起きることがあります。運動をきっかけに細胞からヒスタミンが放出されることで起きると考えられています。
FDEIAの特徴
食物の摂取が必要
ある特定の食物を食べた後2~3時間以内に運動するとじんましんや呼吸困難、血圧低下等の急性アレルギー症状(アナフィラキシー)を起こすことがあります。日本では、小麦がFDEIAを起こす原因食物の56%、成人では85%と最も高率です。
小麦のアレルゲンはアルブミン・グロブリン等の水溶性蛋白質とグルテンと呼ばれているグリアジン・グルテニン等の不溶性蛋白質の2つに大別されます。特異IgE検査では「小麦」「グルテン」が該当します。また、小麦によるFDEIA(Wheat-Dependent Exercise-Induced Anaphylaxis, WDEIA)ではグリアジン(特にω-5分画)が関与していると考えられ、特異IgE検査「ω5-グリアジン」はWDEIAの診断に有用です。
運動後に症状が現れる
症状は通常、運動後数分から数時間以内に現れることが多いです。
主な症状
- 発疹やじんましん
- 急激な呼吸困難
- 喉の腫れによる嚥下困難
- 心拍数の増加(頻脈)
- 低血圧
- 腹痛や吐き気
- めまいや失神
発生機序
運動や食事がきっかけとなって、肥満細胞という、アレルギー反応で重要な役割を担う細胞からヒスタミンという物質が放出されます。このヒスタミンが、気管支を収縮させて呼吸困難を引き起こしたり、血管透過性を高めて血管の外側の組織に体液を漏出させることで浮腫みや血圧低下を引き起こします。食事の後で運動をすることで、食物中に含まれるアレルゲンの吸収を高めることも誘因の一つと考えられています。
FDEIAの予防・管理
特定の食物を避ける
自分のアレルゲンを把握し、運動前にそれらの食物を摂取しないように注意することが重要です。
食事の後2時間は安静にして運動をしないことも発作を予防する上で重要です。
口腔アレルギー症候群もそうですが、アレルギーの症状は患者さんに誘因が重なった時により出やすい傾向があります。アスピリンなどのNSAIDsの服用、アルコールの摂取、女性の場合月経がリスクを増大させるといわれています。リスクが重ならないようにすることが大切です。
エピネフリンの携帯
アナフィラキシーが起こる可能性がある場合は、エピネフリン自己注射器(エピペン)を常に携帯し、使用方法を知っておくことが重要です。
管理
症状が起きた場合には、抗ヒスタミン薬を内服して安静にしてください。症状が強い場合はエピペンを使用してください。それにもかかわらず症状が進んでゆく場合には、ただちに医療機関を受診する必要があります。症状が頻繁に起きる場合には、抗ヒスタミン作用を定期的に内服することをお勧めします。