妊娠を希望している方、妊娠中の方で橋本病(慢性甲状腺炎、甲状腺機能低下症)と診断された方へ。
甲状腺ホルモンは胎児の発育に不可欠であり、妊娠中は甲状腺機能の適切なコントロールがとても重要です。このページでは、妊娠希望のタイミングから出産後までの流れを、甲状腺専門医がわかりやすく解説します。

1. 妊娠と橋本病(甲状腺機能低下症)の関係とは?
橋本病は自己免疫性の慢性甲状腺炎であり、多くの場合に甲状腺ホルモンが不足(甲状腺機能低下症)します。
妊娠初期には胎児の神経発達に母体の甲状腺ホルモンが必要とされ、不足していると流産や早産、胎児発育不全などのリスクが高まるとされています。
出典:日本内分泌学会「妊娠と甲状腺疾患に関するガイドライン2021」
2. 妊娠を希望される方へ:事前の検査と管理
妊娠前から橋本病がある場合、妊娠前にTSH(甲状腺刺激ホルモン)値を2.5μIU/mL以下にコントロールしておくことが推奨されます。
- 血液検査(TSH, FT4, 抗TPO抗体)を実施
- レボチロキシン(チラーヂンS)の投与を開始・調整
- 妊娠成立前から定期的なフォローアップ
参考文献:日本甲状腺学会「甲状腺機能低下症診療ガイドライン2023」
3. 妊娠中の橋本病管理:どんな注意が必要か?
妊娠すると甲状腺ホルモンの需要が増すため、妊娠初期に甲状腺ホルモンの補充量を増量する必要がある場合があります。
- 妊娠が判明したら早めに血液検査を実施
- 妊娠12週頃までは2〜4週間ごとに検査、その後は6〜8週ごと
- 妊娠中はTSHの基準値が変わるため、専門医の管理が重要
参考:Stagnaro-Green A et al. Endocr Pract. 2012
4. 出産後・授乳期の甲状腺の変化と注意点
産後に一過性の甲状腺炎(産後甲状腺炎)を発症することがあります。橋本病を背景に持つ方は特に注意が必要です。
- 出産後3〜6ヶ月で甲状腺機能の変動を認めることがある
- 授乳中もレボチロキシンの内服は安全とされています
- 産後の検査でTSH・FT4をチェックし、薬の調整を行う
出典:American Thyroid Association Guidelines for the Diagnosis and Management of Thyroid Disease During Pregnancy and Postpartum (2017)
5. 当院での管理方針とサポート体制
船橋市の「しもやま内科」では、甲状腺専門医が妊娠希望の段階から、妊娠中・産後にわたる甲状腺機能の管理をサポートします。
- 妊娠前のTSHコントロール
- 妊娠初期からのタイムリーな検査と薬調整
- 出産後の甲状腺機能モニタリング
- 近隣産婦人科との連携体制
甲状腺ホルモンが安定していることが、安心した妊娠・出産につながります。
❓ よくあるご質問(FAQ)
橋本病と診断されたら妊娠は諦めるべきですか?
いいえ、適切に甲状腺ホルモンを補充していれば妊娠は可能です。甲状腺機能が正常に保たれていれば、妊娠・出産への影響は最小限です。
妊娠中に甲状腺ホルモンの薬を飲んでも大丈夫ですか?
はい、レボチロキシン(チラーヂン)は妊娠中も安全とされており、服用継続が推奨されます。
自己抗体(TPO抗体)が陽性でも問題ありませんか?
TPO抗体陽性の場合は流産リスクがやや高くなる報告がありますが、甲状腺機能を適切に管理すれば、多くの場合は妊娠継続が可能です。
出産後に症状が悪化することはありますか?
出産後に「産後甲状腺炎」が起こることがあります。定期的な甲状腺機能のチェックが重要です。
赤ちゃんに遺伝しますか?
橋本病は自己免疫疾患であり、遺伝的素因はあるものの、必ず遺伝するわけではありません。
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👨⚕️ この記事の監修医師
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年病専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医
糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。