🔊 このページの要点
妊活・不妊治療前はTSH(甲状腺刺激ホルモン)を確認し、必要に応じて最適化します。一般に既往の甲状腺機能低下症の方はTSHを2.5未満に保つことが一つの目安です。TSHが4.0以上では治療を検討します。自己抗体やART(体外受精)では個別対応が必要です。
🤖 AIによるこのページの要約
- 妊活・不妊治療前にTSHを測定し、既知の低下症は多くでTSH<2.5を目標に最適化。
- TSH 2.5〜4.0の軽度高値は状況により経過観察または治療を検討。TSH≥4.0では治療で妊娠率向上・流産減少と関連する報告があります。
- 自己抗体(TPOAb)陽性やART予定では個別化。低用量レボチロキシンを考慮する場面があります。
- 妊娠判明後は早期に採血し、4〜6週ごとに再評価。内服は空腹時/就寝前、相互作用薬は時間をあけます。

妊活や不妊治療(ART/体外受精・顕微授精)を始める前に、TSH(甲状腺刺激ホルモン)を確認しておくと、妊娠初期のホルモン環境を整えやすくなります。既往の甲状腺機能低下症がある方はもちろん、流産歴・不妊歴・自己抗体陽性などの要素がある場合は、妊娠前からの最適化が実務的です。
誰が事前にTSHをチェックすべき?
- 既知の甲状腺機能低下症(橋本病、術後、RAI後 など)
- 不妊・流産歴がある、またはART実施予定の方
- 自己抗体(TPOAb)陽性を指摘された方、家族に甲状腺疾患が多い方
- 月経不順、倦怠感、むくみ、寒がり、脈拍低下など甲状腺低下症状を疑う場合
妊活・不妊治療前のTSH目標の考え方
状況 | 目安と対応 | ポイント |
---|---|---|
既知の低下症で妊娠を希望 | TSHを2.5 mIU/L未満に最適化を目安 | 妊娠初期に需要増。事前に“余裕”を作ると初期コントロールが安定。 |
TSH 2.5〜4.0(軽度高値) | 経過観察 or 低用量治療を個別検討 | 流産リスクは必ずしも高くない報告あり。症状・抗体・不妊背景で方針決定。 |
TSH ≥ 4.0(サブクリニカル〜) | 治療のメリットが見込める場面が多い | 妊娠率向上・流産減少と関連する報告。まずはLT4導入を検討。 |
TPOAb陽性 × ART予定 | 状況により低用量LT4を考慮 | 妊娠成立〜初期の変動を見越し“予防的”に整える選択肢。 |
Hashimoto(抗体陽性)で自然妊娠希望 | 新しい知見では2.5よりもやや低めの事前目標が有利かもしれない | 早期妊娠でのTSH上昇を防ぐ目的。個別最適化・過量投与は避ける。 |
※ 目標はあくまで目安です。個々の検査値・症状・不妊治療計画に応じて調整します。
実務フロー(当院の進め方)
- 初回評価:TSH(必要に応じてFT4/FT3)、TPOAb、既往歴、不妊治療計画の確認。
- 目標設定:既知の低下症はTSH<2.5目安。TSH≥4.0は治療軸。2.5〜4.0は個別判断。
- 治療・調整:レボチロキシン(LT4)を必要量から開始/増減。内服のコツと相互作用も参照。
- 再評価:4〜6週ごとにTSH(必要に応じFT4)。安定化までフォロー。
- 妊娠判明後:早期に採血し、必要なら用量見直し。以降も4〜6週ごとのモニタリング。
内服・生活の実務ポイント
- 服用タイミング:空腹時(朝食前30〜60分)または就寝前(最終食後3〜4時間)。
- 相互作用:鉄・カルシウム・Mg・制酸剤・胆汁酸吸着薬・大豆食品などは原則4時間以上あける。
- 飲み忘れ:気づいた時に1回分。重ね飲みはしない。連日の逸脱は受診で調整。
ART(体外受精・顕微授精)に進む方へ
- 自己抗体(TPOAb)陽性やTSH高めの場合、低用量LT4を考慮する場面があります。
- 採卵・移植スケジュールに合わせ、判定前後の再採血で早期妊娠の変動に対応。
- 施設間で方針差があるため、産婦人科・不妊クリニックと共有の上で進めます。
受診の目安
- 妊活を始める/不妊治療に進む前に一度はTSHを確認したい
- 甲状腺の既往・手術歴・RAI歴がある、自己抗体を指摘された
- TSHが高めと言われた/内服やサプリが増えた(相互作用の調整が必要)
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この記事の監修医師
下山 立志(しもやま たつし)/しもやま内科 院長(船橋市)
- 日本内科学会 総合内科専門医
- 日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
- 日本甲状腺学会 専門医
- 日本循環器学会 専門医
- 日本老年医学会 老年科専門医・指導医
妊活・不妊治療前のTSH最適化から妊娠初期のフォローまで、内科の立場で実務的に伴走します。まずはご相談ください。