- 褐色細胞腫は副腎にできるホルモン産生腫瘍です
- 動悸・発汗・頭痛・発作性高血圧が代表的な症状です
- 多くは良性ですが、一部に悪性(転移を伴う)例があります
- 血液・尿検査と画像検査で診断し、治療の基本は手術です
褐色細胞腫とは
褐色細胞腫とは、腎臓の上にある副腎のうち、副腎髄質(カテコラミンを産生する部位)から発生する腫瘍です[1,2]。
副腎髄質が分泌するカテコラミン(アドレナリン、ノルアドレナリンなど)は、血圧・心拍・代謝などを調節する重要なホルモンであり、過剰分泌により全身症状が出現します[2]。
褐色細胞腫は頻度としてはまれですが、見逃すと高血圧クリーゼなど重篤な合併症につながり得るため、適切な疑いと検査の組み立てが重要です[1,2]。
褐色細胞腫は「10% disease(10%病)」と呼ばれます
褐色細胞腫・パラガングリオーマ(傍神経節腫瘍)は、古くから「10% disease」として知られています[1,2]。
代表的には、以下のような特徴が“約10%”の単位で語られてきました(概念としての目安)[1]。
- 一部に悪性(転移を伴う)例がある[1,2]
- 副腎以外(傍神経節)に発生することがある[1,2]
- 両側性に発生することがある[1,2]
- 遺伝性が関与する例がある[1,2]
発症年齢や臨床像には幅があり、典型症状がそろわない場合もあるため、「何となく合わない高血圧」「発作的な症状」を手がかりに評価することがあります[1,2]。
褐色細胞腫の病態と症状
褐色細胞腫ではカテコラミンが過剰に分泌されることで、高血圧や頻脈、代謝亢進などが生じます[2]。
高血圧は持続型・発作型・混合型があり、運動、ストレス、飲酒、排便、腹部圧迫などを契機に血圧が急上昇することがあります[1,2]。
実際の外来診療では、「若年で降圧薬が効きにくい高血圧」や「動悸・発汗・頭痛を発作的に繰り返す方」をきっかけに、
褐色細胞腫を疑って検査を進めることがあります[1,2]。
代表的な症状として、以下が挙げられます[1,2]。
- 動悸・頻脈
- 頭痛
- 大量の発汗
- 顔面蒼白
- 体重減少
- 耐糖能異常(血糖上昇、糖尿病)
高血圧・高血糖・代謝亢進は、古典的に「Howardの三主徴」として説明されることがあります[1]。
褐色細胞腫の検査・診断
褐色細胞腫が疑われる場合、生化学的検査(血液・尿)と画像検査(CT/MRI等)を組み合わせて診断します[1,2]。
- 血液検査・尿検査:カテコラミンおよび代謝産物(メタネフリン等)を評価[2]
- 画像検査:腫瘍の部位・大きさを確認(CT/MRI 等)[2]
検査の順序や条件(薬剤や採血条件など)で結果の解釈が変わることがあるため、疑い例では内分泌疾患に習熟した医療機関での評価が望まれます[1,2]。
褐色細胞腫の治療と経過
治療の基本は腫瘍の外科的摘出です。多くの場合、手術により高血圧や症状は改善します[1,2]。
一方で、悪性(転移を伴う)例や遺伝性が疑われる例では、再発・転移の可能性をふまえた長期フォローが必要です[1,2]。
治療は手術に加えて、病状に応じて薬物療法や放射線治療などを組み合わせることがあります[1,2]。
褐色細胞腫に関するよくある質問
褐色細胞腫は癌(がん)ですか?
多くは良性ですが、転移を伴う悪性例があり得ます[1,2]。悪性かどうかは“見た目だけ”では確定しにくく、転移の有無や経過を含めて評価します[1,2]。
褐色細胞腫の症状は必ず出ますか?
典型症状がそろわない場合もあります[1,2]。高血圧だけ、動悸だけなど非典型のこともあるため、「原因がはっきりしない高血圧」「発作性の症状」が続く場合は相談のきっかけになります[1,2]。
褐色細胞腫はどこにできますか?
多くは副腎に発生しますが、副腎以外(傍神経節)にできることもあります[1,2]。
放置するとどうなりますか?
高血圧クリーゼ、不整脈など重篤な合併症につながり得ます[1,2]。疑われた場合は、自己判断で放置せず、適切な検査で確認することが重要です[1,2]。
治療すれば治りますか?
腫瘍を摘出できれば改善が期待できる例が多い一方、悪性例などでは長期フォローが必要です[1,2]。
👨⚕️ この記事の監修医師
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年病専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医内分泌性高血圧や副腎疾患を含む内分泌疾患の診療に携わり、
「原因がはっきりしない高血圧・動悸・発汗」などの評価を日常診療で行っています。
参考文献
- 日本内分泌学会.
褐色細胞腫・パラガングリオーマ診療ガイドライン(最新版公開情報).
https://www.j-endo.jp/modules/news/index.php?content_id=283 - Lenders JWM, et al.
Pheochromocytoma and Paraganglioma: An Endocrine Society Clinical Practice Guideline.
J Clin Endocrinol Metab. 2014;99(6):1915–1942. doi:10.1210/jc.2014-1498.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24893135/