🔎 要点まとめ
- PCOSの方は妊娠後も、流産・妊娠糖尿病・妊娠高血圧・早産のリスクが相対的に高くなります。
- 妊娠初期はhCGの影響でTSHが低く出ることがあり、FT4が正常なら多くは生理的範囲内です。
- アンドロゲン高値(テストステロンなど)の評価は、卵巣性/副腎性の鑑別を意識して行います。
- 妊婦健診と並行して、血糖・血圧・体重・甲状腺機能を内科的にフォローすることが重要です。
- しもやま内科は産婦人科と連携し、母体と赤ちゃんの安全を第一に管理します。
PCOSと妊娠の関係
PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)は排卵障害を背景に不妊の原因となる一方、妊娠成立後も糖代謝や血圧、ホルモン環境に影響を及ぼすことがあります。妊娠中は産科での管理が基本ですが、内科の関与があると合併症の早期発見・早期対応に役立ちます。
妊娠中に注意すべき主なポイント
1. 流産リスク
PCOSでは初期流産リスクがやや高いと報告があります。過度に恐れる必要はありませんが、初期症状(出血・腹痛・強い張り)には早めの相談を。
2. 妊娠糖尿病(GDM)
インスリン抵抗性を背景にGDMの発症が増える傾向があります。通常24〜28週で実施される経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)を確実に受け、必要に応じて食事・運動・インスリン治療を検討します。
3. 妊娠高血圧症候群(PIH)
妊娠中期以降の血圧上昇に注意し、定期的な家庭血圧測定や塩分管理を行います。浮腫・頭痛・視覚異常などの症状があれば受診を。
4. 甲状腺機能の評価
妊娠初期はhCGの作用でTSHが一過性に低下することがあります。FT4が基準内でTSHのみ低い場合は生理的変化であることが多いですが、抗体陽性や自覚症状がある場合は追加評価を行います。
妊娠時一過性甲状腺機能亢進症(TSHが低いときの考え方)はこちら
妊娠中のホルモン変化とその見方
TSH低値とFT4の解釈
妊娠初期にTSHが低くても、FT4が正常であれば多くは問題ありません。甲状腺自己抗体(TPOAb/TgAb)や症状の有無で総合判断します。
アンドロゲン(テストステロン等)が高い場合
PCOSでは軽度〜中等度の上昇がみられますが、著明高値では卵巣由来(黄体化嚢胞など)や副腎由来(腫瘍など)も鑑別に入れます。DHEA-Sは副腎性評価に有用です。多くのケースで胎盤のアロマターゼが胎児を保護しますが、母体・胎児双方の観点から慎重なフォローが望まれます。
しもやま内科でできること
- 血糖・血圧・体重・脂質のモニタリングと生活習慣サポート
- 甲状腺機能の評価(TSH/FT4、必要に応じて抗体)と治療調整
- アンドロゲン高値の背景評価(卵巣性/副腎性の鑑別の支援)
- 産婦人科・生殖医療施設との連携による一体的管理
FAQ:よくあるご質問
Q1. PCOSでも妊娠できますか?
A. 可能です。排卵誘発や体重管理などで妊娠に至る方も多く、妊娠後は合併症管理を丁寧に行います。
Q2. 妊娠初期にTSHが低いと言われました。大丈夫ですか?
A. 妊娠初期はhCGの影響でTSHが低く出ることがあります。FT4が正常なら多くは生理的で、経過観察が基本です。
Q3. テストステロンが高いと言われました。赤ちゃんへの影響は?
A. 胎盤がホルモンを代謝するため問題が起きないことが多いですが、値が著しく高い場合は原因を評価し、産科と連携して慎重にフォローします。
Q4. 妊娠糖尿病になりやすいのでしょうか?
A. PCOSはインスリン抵抗性を背景にGDMリスクが上がります。スクリーニング検査を確実に受け、必要な対策を行います。
Q5. 妊娠高血圧が心配です。自宅でできる対策は?
A. 家庭血圧計での定期測定、塩分控えめの食事、適切な体重管理が効果的です。異常時は早めに受診を。
Q6. どの科を受診すべきですか?
A. 基本は産科の管理のもと、内科(内分泌)で糖代謝・血圧・甲状腺などを並走フォローします。当院は連携体制を整えています。
Q7. サプリや市販薬は飲んでも良いですか?
A. 妊娠中は自己判断での服用を避け、主治医にご相談ください。葉酸など必要なものは適切な量で。
この記事の監修医師
下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長/日本内科学会 総合内科専門医/日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医/日本循環器学会 循環器専門医/日本老年医学会 老年病専門医・指導医/日本甲状腺学会 甲状腺専門医
内分泌代謝領域(糖尿病・甲状腺・副腎など)を中心に、産科と連携した妊娠期の内科的管理にも取り組んでいます。