🔊 このページの要点
バセドウ病と妊娠は、妊活期から妊娠中・分娩・産後にかけて段階ごとの管理が大切です。
甲状腺専門医が各ステージの注意点と対応をわかりやすく解説します。
バセドウ病と妊娠は、妊活期から妊娠中・分娩・産後にかけて段階ごとの管理が大切です。
甲状腺専門医が各ステージの注意点と対応をわかりやすく解説します。

🔍 要点まとめ
- 妊活期は甲状腺機能の安定化、抗甲状腺薬の見直し、TRAb測定が重要 [1][2]
- 妊娠中は4週ごとのホルモン検査、TRAbは各期で確認 [1]
- 妊娠後期は胎児エコーで甲状腺腫や頻脈などをチェック [1]
- 分娩時は母体クリーゼ予防と新生児の甲状腺機能評価を実施 [1][2]
- 産後は再燃リスクが高く、定期検査と授乳中の薬管理が必要 [1][2]
❶ 妊活期:妊娠前に準備しておくこと
妊娠を希望する場合は、まず甲状腺機能を正常範囲に整えておくことが大切です(FT4・FT3正常、TSH 0.5~2.5 mIU/L 目安)[1]。特に妊娠初期は胎児が母体の甲状腺ホルモンに依存するため、異常を抱えたままの妊娠は流産・早産や発達への影響につながる可能性があります [1][2]。
- 抗甲状腺薬の見直し:メルカゾール(チアマゾール/MMI)は妊娠初期の一部奇形リスクと関連するため、妊活期はプロピルチオウラシル(PTU)への切り替えを検討します [1]。
- TRAb測定:高値の場合は胎児・新生児甲状腺機能亢進症のリスクがあるため、妊娠前に治療戦略(薬物・手術・RI治療の可否)を再評価します [1][2]。
❷ 妊娠中:薬の調整と定期フォロー
妊娠初期(1~12週)
妊娠が判明したら、MMI内服中であれば速やかにPTUへ切り替えます。TSHとFT4は4週ごとに確認し、TRAbは初期・中期・後期で測定します [1]。
妊娠中期(13~27週)
抗甲状腺薬の必要量は減ることがあるため、過量投与で母体・胎児が機能低下にならないよう、FT4は「正常上限~やや高め」を目安に調整します [1]。
妊娠後期(28週~分娩)
TRAb高値では、28~32週に胎児エコーで胎児頻脈(≥170 bpm)、甲状腺腫、水腫などをチェックし、異常があれば周産期センターと連携します [1]。
❸ 分娩時:母体と新生児の安全のために
- 母体管理:分娩ストレスは甲状腺クリーゼを誘発しうるため、薬は基本継続し、脱水・感染を避けます。帝王切開では状況に応じてステロイド投与を検討します [1][2]。
- 新生児管理:妊娠中にTRAb高値だった場合は、生後3~5日に新生児の甲状腺機能(TSH, FT4, TRAb)を評価します [1]。
❹ 産後:再燃リスクと授乳時の注意
- 再燃リスク:産後6か月以内は再燃しやすいため、1~2か月ごとに検査を行います [1][2]。
- 母乳育児:PTUは授乳中でも使用可能(~300 mg/日)、MMIも少量(~20 mg/日)であれば許容されます。服薬は授乳直後が推奨です [1]。
- 次回妊娠準備:非ホルモン避妊(IUDなど)を検討し、再妊娠時はTRAb再評価を含め治療方針を見直します [1]。
❓ よくあるご質問(FAQ)
妊娠前にどの程度まで甲状腺を整えれば良いですか?
FT4・FT3が正常、TSH 0.5~2.5 mIU/Lが一つの目安です [1]。
妊娠が判明したら薬はすぐ切り替えますか?
メルカゾール内服中ならPTUへの切り替えが推奨されます [1]。
産後に病気が再燃することはありますか?
あります。特に産後6か月以内はリスクが高く、定期検査が必要です [1][2]。
母乳育児と抗甲状腺薬は両立できますか?
可能です。PTUは授乳中でも使用でき、MMIも少量であれば許容されます [1]。
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妊娠を希望される方、妊娠中・産後の甲状腺管理で不安のある方は、お電話でご相談ください。
しもやま内科(船橋市)
電話:047-467-5500
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👨⚕️ この記事の監修医師
下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長/日本内科学会 総合内科専門医/日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医/日本循環器学会 循環器専門医/日本老年医学会 老年病専門医・指導医/日本甲状腺学会 甲状腺専門医
妊娠期・周産期の甲状腺管理に多数の診療経験があり、産科・小児科との連携体制を整えています。
しもやま内科 院長/日本内科学会 総合内科専門医/日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医/日本循環器学会 循環器専門医/日本老年医学会 老年病専門医・指導医/日本甲状腺学会 甲状腺専門医
妊娠期・周産期の甲状腺管理に多数の診療経験があり、産科・小児科との連携体制を整えています。
参考文献
- American Thyroid Association. 2017 Guidelines for the Diagnosis and Management of Thyroid Disease During Pregnancy and the Postpartum. Thyroid. 2017;27(3):315–389.
- 日本甲状腺学会/日本内分泌学会 編. 甲状腺疾患診療ガイドライン. 金原出版(最新版・該当章)。