内分泌内科

バセドウ病と妊娠|TRAb再検はいつ?胎児への影響・薬の切替と管理ポイント|しもやま内科(船橋市)

17/09/2025

🔊 このページの要点
バセドウ病があっても、妊娠・出産は適切な管理で十分に可能です。
重要なのは、妊活期から産後までの各段階で甲状腺ホルモンとTRAb(TSH受容体抗体)を計画的に確認することです。
甲状腺専門医が「いつ・何を確認するのか」を具体的に整理します。

🔍 要点まとめ(TRAb再検が重要な理由)

  • 妊活期:甲状腺機能を安定化し、TRAbを測定して妊娠前のリスクを評価
  • 妊娠初期:抗甲状腺薬の切替(MMI→PTU)とTRAbの初回評価
  • 妊娠18–22週:胎児甲状腺が機能し始めるため、TRAb再検で胎児影響を評価
  • 妊娠30–34週:新生児甲状腺機能亢進症の予測のためTRAb再評価
  • 産後:再燃リスクが高く、母体・新生児ともにフォローが必要

❶ 妊活期:妊娠前に必ず確認しておきたいこと

妊娠を希望する場合、まず甲状腺機能を安定した状態に整えることが重要です。
目安としては、FT4・FT3が正常範囲、TSHは0.5~2.5 mIU/L程度が望ましいとされています[1]。

特に妊娠初期は、胎児が母体の甲状腺ホルモンに依存するため、
コントロール不良のまま妊娠すると流産・早産、胎児発育への影響が生じる可能性があります[1,2]。

  • 抗甲状腺薬の見直し:
    メルカゾール(チアマゾール/MMI)は妊娠初期の一部奇形リスクと関連するため、
    妊活期からプロピルチオウラシル(PTU)への切替を検討します。
  • TRAb(TSH受容体抗体)の測定:
    TRAb高値は胎児・新生児甲状腺機能亢進症のリスクとなるため、
    妊娠前に測定し、治療戦略(薬物・手術・放射性ヨウ素治療の適応)を再評価します。

❷ 妊娠中:ホルモン管理とTRAb再検のタイミング

妊娠初期(~12週)

妊娠が判明したら、MMI内服中の場合は速やかにPTUへ切替を行います。
TSH・FT4は4週ごとに確認し、TRAbを妊娠初期に測定します。

妊娠中期(13~27週)

妊娠中期になると抗甲状腺薬の必要量が減少することがあります。
過量投与により母体・胎児が甲状腺機能低下にならないよう、
FT4を「正常上限~やや高め」に保つことを目安に調整します。

この時期(18–22週)は胎児甲状腺が機能し始めるため、
TRAbの再検が非常に重要です。

妊娠後期(28週~分娩)

TRAbが高値の場合は、30–34週に再度TRAbを測定し、
胎児甲状腺腫、胎児頻脈(≧170回/分)、胎児水腫などを
胎児エコーで評価します。異常があれば周産期センターと連携します。

❸ 分娩時:母体と新生児を守るために

  • 母体管理:
    分娩ストレスは甲状腺クリーゼを誘発し得るため、
    抗甲状腺薬は原則継続し、脱水・感染を予防します。
  • 新生児管理:
    妊娠中にTRAb高値であった場合、
    生後3~5日に新生児のTSH・FT4・TRAbを評価します。

❹ 産後:再燃リスクと授乳時の注意点

  • 再燃リスク:
    産後6か月以内は再燃しやすいため、1~2か月ごとの定期検査が重要です。
  • 母乳育児:
    PTU(~300 mg/日)、MMI(~20 mg/日)は授乳中も使用可能とされ、
    服薬は授乳直後が推奨されます。
  • 次回妊娠に向けて:
    再妊娠前にはTRAbを再評価し、治療方針を見直します。

❓ よくあるご質問(FAQ)

妊娠前にどの程度まで甲状腺を整えればよいですか?
FT4・FT3が正常、TSH 0.5~2.5 mIU/Lが一つの目安です。
TRAbはなぜ妊娠中に何度も測るのですか?
TRAbは胎盤を通過し、胎児・新生児の甲状腺に影響するため、胎児甲状腺機能が変化する時期に合わせて再検します。
産後に病気が再燃することはありますか?
あります。特に産後6か月以内は再燃リスクが高く、定期的な検査が必要です。
母乳育児と抗甲状腺薬は両立できますか?
はい。PTUや少量のMMIは授乳中も使用可能とされています。

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👨‍⚕️ この記事の監修医師

下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長/日本甲状腺学会 甲状腺専門医 ほか
妊娠期・周産期の甲状腺管理に多数の診療経験があり、産科・小児科と連携した診療を行っています。

参考文献

  1. American Thyroid Association. 2017 Guidelines for the Diagnosis and Management of Thyroid Disease During Pregnancy and the Postpartum. Thyroid. 2017;27:315–389.
  2. 日本甲状腺学会/日本内分泌学会 編. 甲状腺疾患診療ガイドライン(金原出版).

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