「近所の内科でマンジャロを処方してもらったんですが、吐き気がひどくて続けられなくて……専門医に相談した方がいいですか?」——先日、45代の女性患者さんが、辛そうな表情で相談されました。2型糖尿病でHbA1cが8.5%あり、体重も10年で15kg増加したそうです。
マンジャロ(チルゼパチド)はGLP-1とGIPの両方を刺激する画期的な薬ですが、用量の漸増や飲み方の工夫で副作用を軽減できることもあります。専門的な管理が重要です。
- チルゼパチド(マンジャロ)はGIPとGLP-1の両方に作用する世界初のデュアル受容体作動薬です。
- 週1回の皮下注射で、血糖コントロールと体重減少の両方に効果があります。
- 主な副作用は吐き気や下痢ですが、少量から開始して漸増すれば軽減できます。
- 保険適用の2型糖尿病治療薬として、当院でも処方可能です。
- セマグルチド(オゼンピック)と比べて、体重減少効果が強い傾向があります。

チルゼパチド(マンジャロ)とは?
チルゼパチドは、GIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)とGLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)の両方の受容体に作用する、世界初の持続性GIP/GLP-1受容体作動薬です。
日本では2023年9月に2型糖尿病治療薬「マンジャロ®皮下注」として承認され、保険診療で使用可能となりました。1回の注射で1週間効果が持続するため、患者さんの負担を軽減できます。
チルゼパチドの効果
血糖コントロールの改善
日本国内の第III相臨床試験(SURPASS-J-MONO試験)では、チルゼパチド5mg以上の投与群でHbA1cが平均で約2.4〜2.7%低下し、HbA1cが7.0%未満に達した割合が94%以上という結果が報告されました。
体重減少効果
チルゼパチドは食欲を抑える作用もあり、体重減少効果が期待できます。海外のSURPASS試験では、最大15mg投与群で平均約11kgの体重減少が認められました。肥満を伴う2型糖尿病の方にとって、血糖と体重の両方を改善できる点が大きなメリットです。
心血管リスクへの影響
大規模臨床試験(SURPASS-CVOT)は継続中ですが、既存のGLP-1受容体作動薬と同様に、心血管イベントの抑制効果が期待されています。
適応症と対象となる方
- 2型糖尿病の治療(保険適用)
- 特に以下の方に適しています:
- 肥満を伴う2型糖尿病
- 既存の経口薬やGLP-1受容体作動薬で十分な効果が得られていない方
- インスリン治療を避けたい方
- 週1回の投与で簡便性を求める方
投与方法と用量
チルゼパチドは週1回の皮下注射で使用します。ペン型の注射器にセットされた状態で処方されるため、針の交換だけで簡単に自己注射できます。
用量段階(標準的な漸増法)
| 期間 | 用量 | 目的 |
|---|---|---|
| 開始〜4週間目 | 2.5mg/週 | 副作用を最小限に抑えながら適応 |
| 5〜8週間目 | 5mg/週 | 初期効果の確認 |
| 9週間目〜 | 7.5mg/週以上(必要に応じて2.5mgずつ増量) | 最大15mg/週まで個別に調整 |
必ず医師の指示に従い、自己判断で用量を変更しないでください。
副作用と対策
主な副作用
チルゼパチドの主な副作用は消化器症状です。開始初期に多くみられ、多くの場合は数週間で軽減します。
- 吐き気(悪心):最も多い副作用。約20〜25%の方にみられる
- 下痢・便秘:腸の動きが変化することがある
- 嘔吐:吐き気が強い場合にみられることがある
- 食欲低下:体重減少と関連してみられることがある
- 腹痛:一過性のことが多い
副作用を軽減する方法
- 少量から開始して漸増する:2.5mgから始め、4週間ごとに増量
- 食事の量を減らす:満腹感が強まるため、無理に食べない
- 脂質の多い食事を避ける:消化器症状を悪化させることがある
- 水分を十分摂る:下痢や嘔吐で脱水にならないように
- 症状が強い場合は医師に相談:一時的に減量や休薬を検討
注意が必要な副作用
- 急性膵炎:激しい腹痛や背中の痛みが続く場合は緊急受診
- 甲状腺髄様癌(MTC)の既往がある方:使用禁忌
- 低血糖:SU剤やインスリンと併用する場合は注意
価格と自己負担額
チルゼパチド(マンジャロ)は保険診療で処方可能です。自己負担額は健康保険の種類(被保険者の年齢・所得)によって異なります。
| 用量(週1回) | 薬価(参考) | 自己負担額の目安(3割負担) |
|---|---|---|
| 2.5mg | 約6,000円/週 | 約1,800円/週 |
| 5mg | 約9,000円/週 | 約2,700円/週 |
| 7.5mg | 約12,000円/週 | 約3,600円/週 |
| 10mg | 約15,000円/週 | 約4,500円/週 |
| 12.5mg | 約18,000円/週 | 約5,400円/週 |
| 15mg | 約21,000円/週 | 約6,300円/週 |
高額療養費制度の適用で、月額の自己負担上限額が設定されることがあります。詳細は所属する健康保険組合へご確認ください。
他の糖尿病治療薬との比較
| 薬剤名 | 有効成分 | 作用機序 | HbA1c低下 | 体重変化 | 投与間隔 |
|---|---|---|---|---|---|
| マンジャロ | チルゼパチド | GIP/GLP-1 両作用 | 約2.4〜2.7% | 約8〜11kg減 | 週1回 |
| オゼンピック | セマグルチド | GLP-1 単作用 | 約1.5〜1.8% | 約4〜6kg減 | 週1回 |
| トルリシティ | ダルグルチド | GLP-1 単作用 | 約1.0〜1.2% | 約2〜3kg減 | 週1回 |
| ビクトーザ | リラグルチド | GLP-1 単作用 | 約1.0〜1.2% | 約2〜3kg減 | 1日1回 |
| リベルサス | セマグルチド(経口) | GLP-1 単作用 | 約1.2〜1.5% | 約3〜5kg減 | 1日1回 |
※数値は概算であり、個人差があります。
マンジャロとゼップバウンドの違い
同じチルゼパチドを有効成分とする薬剤ですが、適応症が異なります。
- マンジャロ(マンジャロ®皮下注):2型糖尿病治療薬として承認。当院でも保険診療で処方可能です。
- ゼップバウンド(ゼップバウンド®皮下注):肥満症治療薬として承認。肥満症治療薬の適切な使用のためのガイドラインに準拠した認可医療機関でのみ処方可能です。
2型糖尿病の方はマンジャロ、肥満症のみで糖尿病がない方はゼップバウンドが適応となります。
使用上の注意と禁忌
- 甲状腺髄様癌(MTC)の個人歴または家族歴がある方:使用禁忌
- MEN2(多発性内分泌腫瘍症2型)の方:使用禁忌
- 急性膵炎の既往がある方:慎重に使用
- 妊娠中・授乳中の方:安全性が確立していないため、原則使用しない
- 重度の胃腸障害のある方:症状を悪化させることがある
よくある質問(FAQ)
チルゼパチド(マンジャロ)はどんな薬ですか?
GIPおよびGLP-1というホルモンに働きかけ、血糖値と体重を同時に改善する週1回注射の2型糖尿病治療薬です。インクレチン関連薬の一種で、セマグルチド(オゼンピック)よりも強力な血糖低下と体重減少効果が期待できます。
どんな方がチルゼパチドを使えますか?
保険診療では2型糖尿病の治療に使用されます。特に肥満を伴う方や、既存のGLP-1受容体作動薬で十分な効果が得られていない方に検討されます。甲状腺髄様癌の既往がある方やMEN2の方は使用できません。
副作用にはどのようなものがありますか?吐き気が続く場合は?
吐き気、下痢、食欲低下などの消化器症状が主に見られます。通常は少量から開始して漸増することで軽減されます。吐き気が強く続く場合は、医師に相談して用量調整や一時的な休薬を検討してください。
毎週通院が必要ですか?
チルゼパチドは週1回の自己注射で使用する薬です。使用方法の説明を受けた後は、ご自宅で注射可能です。1か月〜3か月に1回の受診で処方を受ける形になります。
セマグルチド(オゼンピック)との違いは?
チルゼパチドはGIPとGLP-1の両方に作用するのに対し、セマグルチドはGLP-1のみに作用します。臨床試験では、チルゼパチドの方がHbA1c低下と体重減少効果が強い傾向があります。ただし、副作用(特に消化器症状)も強く出やすいことがあります。
当院では、チルゼパチド(マンジャロ)を含む最新の糖尿病治療薬の処方が可能です。副作用の管理や、他の薬剤との比較も丁寧にご説明いたします。まずはお気軽にご相談ください。
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最終更新日:2026-06-21
👨⚕️ この記事の監修医師
下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年科専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医
糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。