75gOGTT(経口ブドウ糖負荷試験)とは|糖尿病の確定診断に欠かせない検査
「健診で血糖が少し高いと言われて、75gOGTTを受けるように言われました。どんな検査なんですか?」——先日も40代の女性患者さんから、不安そうにこう質問されました。75gOGTT(経口ブドウ糖負荷試験)は、糖尿病の確定診断にもっとも確実な検査として、日本糖尿病学会でも第一選択に位置づけられています。このページでは、検査の目的から実際の流れ、診断基準の詳しい見方まで、わかりやすく解説します。
75gOGTTとは?〜検査の目的と概要〜
75gOGTTは、75gのブドウ糖(糖質)を水に溶かした溶液を飲み、飲む前と飲んだ後の血糖値を経時的に測定する検査です。正式名称を「75g経口ブドウ糖負荷試験」といい、英語では Oral Glucose Tolerance Test(OGTT)と呼ばれます。
この検査の目的は、膵臓のβ細胞が糖負荷に対してどれだけインスリンを分泌できるかを調べることです。ちょうど「車の燃費テスト」のように、負荷をかけたときにエンジン(膵臓)が正常に働くかどうかを評価します。空腹時血糖だけでは見逃してしまう「食後の高血糖」を捉えられるのが最大の強みです。
こんな方にすすめています〜検査の適応〜
75gOGTTは、以下のような方に積極的にすすめています。
- 健診で空腹時血糖が高め(110〜125mg/dL)だった方:境界型の精査として
- HbA1cが6.0〜6.4%と境界型を示す方
- 糖尿病の家族歴があり、早期発見が必要な方
- 妊娠糖尿病のスクリーニング(妊娠24〜28週に実施)
- 肥満(特に内臓脂肪型)でインスリン抵抗性が疑われる方
- 空腹時血糖は正常だが、食後の強い高血糖が疑われる方
特に、「空腹時血糖はギリギリ正常範囲なのにHbA1cが高い」というケースでは、75gOGTTを行うことで食後高血糖を見つけられることが多くあります。
検査前の注意事項〜前日夜から当日朝の準備〜
正確な結果を得るために、以下の注意事項を守ってください。
前日の注意
- 夜9時以降は絶食(水・白湯は飲んでも構いません)
- 過度な運動や飲酒は避けてください
- 夕食は普段通りで構いませんが、炭水化物を極端に減らすのは避けてください(低炭水化物食の状態で検査を行うと、ブドウ糖負荷に対する反応が実際より悪く出ることがあります)
検査当日の注意
- 朝食は摂らずに来院してください(絶食継続)
- 糖分を含む飲料(ジュース・コーヒーに入れる砂糖など)はもちろんNG。水・お茶(砂糖なし)は少量なら可
- お薬は通常通り服用して構いませんが、糖尿病治療薬を服用中の方は事前に医師にご相談ください
- 喫煙は血糖値に影響するため、検査中の喫煙はお控えください
- 風邪など体調不良の場合は、炎症やストレスで血糖値が変動するため、事前にご相談ください
検査の流れ〜採血から終了まで〜
検査は以下のステップで進みます。所要時間はおおむね2時間〜2時間半です。
- 来院・空腹時採血:まず空腹時の血糖値を測定するため採血します。この時、インスリン分泌能を評価するために「 insulinogenic index(インスリンogenic index)」を計算する目的で、同時にインスリン値を測定することもあります。
- ブドウ糖溶液を飲む:75gのブドウ糖を約200〜300mlの水に溶かした「トレーランG®」などの専用溶液を、5分以内に飲みきっていただきます。炭酸は入っていませんが、かなり甘く、「結構甘いですね」と言われる方がほとんどです。とはいえ、一気に飲むので意外とすんなりいけます。
- 安静に待機:ブドウ糖を飲んでからは、激しい動きや歩行は避け、安静にお過ごしください。運動をすると筋肉が糖を取り込んでしまい、正確な評価ができなくなります。待合室で本を読んだりスマホを操作してお待ちください。当院ではWi-Fiもご利用いただけます。
- 経時採血:通常は30分後・60分後・90分後・120分後にそれぞれ採血します。一般的な診断では「0分(空腹時)・60分後・120分後」の3点測定が基本ですが、より詳細なインスリン分泌能の評価が必要な場合には5点ないし7点測定を行うこともあります。
- 検査終了・食事:2時間後の採血が終わったら、すぐに食事を摂っていただけます。当院では軽食をお持ちいただくか、検査後に近隣の飲食店をご利用いただくことも可能です。
- 結果説明:採血結果は通常当日〜数日後には判明します。後日、医師から結果の説明と今後の方針についてお話しします。
75gOGTTの診断基準(日本糖尿病学会 2025-2026年版)
75gOGTTの診断は、空腹時血糖値と2時間後血糖値の組み合わせで判定します。日本糖尿病学会の診断基準を下表にまとめました。
| 分類 | 空腹時血糖 | 2時間後血糖 |
|---|---|---|
| 正常型 | 110mg/dL未満 | 140mg/dL未満 |
| 境界型(耐糖能異常) | 110〜125mg/dL | 140〜199mg/dL |
| 糖尿病型 | 126mg/dL以上 | 200mg/dL以上 |
※空腹時血糖と2時間後血糖のどちらか一方が糖尿病型の基準を満たせば、別日にもう一度検査を行い、再度基準を満たせば「糖尿病」と確定診断されます。
WHO基準との違い
世界保健機関(WHO)の診断基準では、空腹時血糖の正常上限を100mg/dL未満としています。日本糖尿病学会の基準(正常:110mg/dL未満)とは若干の差があります。これは日本人を対象とした大規模研究のデータに基づくもので、日本人では空腹時血糖110〜125mg/dLの範囲でも将来の糖尿病発症リスクが有意に高まることが示されています。
結果の見方〜正常型・境界型・糖尿病型〜
正常型
空腹時110mg/dL未満かつ2時間後140mg/dL未満であれば「正常型」です。ただし、正常型であっても肥満や家族歴がある方は、年に1回程度のフォローアップをおすすめします。
境界型(IFG/IGT)
以下のいずれかに該当する場合を「境界型」といいます。
- IFG(Impaired Fasting Glucose:空腹時血糖異常):空腹時110〜125mg/dL
- IGT(Impaired Glucose Tolerance:耐糖能異常):2時間後140〜199mg/dL
- 両方の合併:IFGかつIGT
境界型は「まだ糖尿病ではありませんが、将来糖尿病になるリスクが高い状態」です。しかし、ここで生活習慣を改善すれば、正常に戻る可能性も十分にあります。当院では、境界型の方に対して個別の食事指導・運動指導を積極的に行い、糖尿病への進行を防ぐサポートをしています。実際に「境界型と言われてショックだったけど、先生の指導で半年後には正常値に戻れました」と喜ばれる患者さんも少なくありません。
糖尿病型
空腹時126mg/dL以上または2時間後200mg/dL以上を満たす場合です。初回の検査で基準を満たした場合は、別日に再検査を行って確定診断とします。ただし、強い高血糖(空腹時血糖250mg/dL以上など)や典型的な糖尿病の症状(口渇・多飲・多尿・体重減少)を伴う場合は、1回の測定でも診断可能です。
75gOGTTとHbA1cの違い〜それぞれの役割〜
糖尿病の診断には75gOGTTのほかに、空腹時血糖とHbA1cも用いられます。それぞれの特徴を比較します。
| 検査 | 測定するもの | 特徴 | 糖尿病診断カットオフ |
|---|---|---|---|
| 空腹時血糖 | その時点の血糖値 | 簡便・安価。体調の影響を受けやすい | 126mg/dL以上 |
| HbA1c | 過去2〜3ヶ月の平均血糖 | 長期的コントロール指標。採血前の食事の影響を受けない | 6.5%以上 |
| 75gOGTT(2時間値) | 糖負荷後の血糖反応 | 食後高血糖を捉えられる。確定診断に最も確実 | 200mg/dL以上 |
75gOGTTは「食後の血糖処理能力」を評価できる点が最大の利点です。空腹時血糖やHbA1cが正常範囲でも、75gOGTTで初めて「食後高血糖」が明らかになるケースが少なくありません。一方でHbA1cは簡便で再現性が高く、治療中の血糖コントロール評価には最適です。
なお日本糖尿病学会では、糖尿病診断のためにこれら3つの検査が揃った場合、いずれか2つが基準を満たせば糖尿病と診断できることになっています(例:空腹時血糖126mg/dL以上かつHbA1c6.5%以上など)。
妊娠糖尿病診断における75gOGTTの位置づけ
妊娠中に75gOGTTを行うのは、主に妊娠糖尿病(GDM)の診断のためです。妊娠糖尿病は、妊娠中に初めて発見・診断された糖代謝異常で、多くの場合、出産後には改善します。しかし、母子ともに将来の2型糖尿病リスクが高まることが知られています。
妊娠糖尿病の診断基準(日本産科婦人科学会)
日本では、妊娠24〜28週に75gOGTTを実施し、以下の基準のうち1つでも超えれば「妊娠糖尿病」と診断されます。
- 空腹時血糖:92mg/dL以上
- 1時間後血糖:180mg/dL以上
- 2時間後血糖:153mg/dL以上
一般の糖尿病診断基準よりかなり厳しい数値であることがわかります。これは母体と胎児への影響を最小限にするため、早期かつ厳格に管理する必要があるからです。当院でも妊婦さんの75gOGTTに対応しております。ご妊娠中の方で血糖が気になる方はお気軽にご相談ください。
📌 妊娠糖尿病について詳しく:
妊娠糖尿病検査(75gOGTT)のページで、診断後の管理やリスクについて詳しく解説しています。
費用・保険適用
75gOGTTは保険診療の対象です。糖尿病の診断や妊娠糖尿病のスクリーニングなどの医学的な適応がある場合、保険が適用されます。検査費用は、施設によって異なりますが、3割負担の方でおおむね3,000〜5,000円程度です(採血の本数や測定項目によって変動します)。
自由診療(保険なし)での実施は通常ありませんが、保険の効かない健康診断オプションとして提供されることもあります。
緊急性のある症状〜こんな症状がある方はすぐに受診を〜
⚠️ 以下の症状がある方は、75gOGTTよりも先に医療機関を受診してください
- 異常な口渇(喉の渇き)が続く
- 尿の回数・量が明らかに増えた
- 体重が急に減った(食事量は変わらないのに)
- 視力が急に低下した・ものがぼやける
- 倦怠感が強く、日常生活に支障が出ている
これらの症状がある場合、すでにかなり高血糖が進行している可能性があります。まずは医師の診察を受け、必要に応じて緊急の血糖測定と治療開始を優先します。
このページと「糖尿病の検査」ページの関係
このページは、糖尿病の検査(トップページ)で紹介している75gOGTTの詳細解説ページです。糖尿病の検査全体の概要や、他の検査(HbA1c・GAなど)との比較については、糖尿病の検査ページをご参照ください。
よくある質問(FAQ)
75gOGTTとは何ですか?
検査前に食事をしてもいいですか?
75gOGTTの基準値(正常値)は?
費用はいくらですか?保険は使えますか?
検査時間はどれくらいかかりますか?
妊娠中に75gOGTTを受けても大丈夫ですか?
境界型と言われました。どうすればいいですか?
75gOGTTとHbA1cはどちらが正確ですか?
砂糖水が苦手で飲めない場合は?
糖尿病型と診断されたらどうすればいいですか?
75gOGTTを受けるタイミングは?何曜日でもいいですか?
まとめ
75gOGTTは、糖尿病の早期発見と確定診断に欠かせない検査です。「まだ症状がないから大丈夫」と思わずに、健診で血糖を指摘された方や、家族歴のある方は、一度検査を受けることをおすすめします。境界型での発見なら、生活習慣の改善で正常に戻るチャンスもあります。しもやま内科(船橋市)では、糖尿病専門医が75gOGTTの結果を丁寧に説明し、あなたに合った次のステップを一緒に考えます。お気軽にご相談ください。
📖 関連ページ:
糖尿病の検査(トップページ) — 検査全体の概要
HbA1cの詳細 — 過去2〜3ヶ月の平均血糖値
グリコアルブミン(GA) — 過去2週間の血糖コントロール
妊娠糖尿病検査 — 妊婦さんの75gOGTT
糖尿病内科トップへ戻る
最終更新日:2026-08-25
👨⚕️ この記事の監修医師
下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年科専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医
糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。