MASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)は、飲酒習慣がなくても起こる脂肪肝です。特に2型糖尿病患者では65%に認められ、糖尿病があるとNASH(進行型)のリスクが1.9倍増加します。しもやま内科では、肝臓と糖尿病の相互関係を理解し、総合的な管理を行っています。
健診で「脂肪肝」「肝機能異常(AST/ALT高値)」を指摘される方は少なくありません。最近は、従来のNAFLD・NASHという呼び方から、MASLD・MASHという正式名称へ移行しています。とくに糖尿病のある方では、脂肪肝が「たまたま見つかった所見」ではなく、代謝異常(インスリン抵抗性)を反映する重要なサインです。
MASLD・MASHとは?(旧NAFLD・NASHとの違い)
MASLD(Metabolic dysfunction–associated steatotic liver disease)は、従来「NAFLD」と呼ばれてきた病態の新しい正式名称です。ポイントは「代謝異常が背景にある脂肪肝」であることです。
その中でも、炎症や線維化を伴い進行しやすいタイプがMASH(旧NASHに相当)です。早期は自覚症状が乏しい一方で、進行すると肝硬変や肝がんのリスクが上がるため、適切な評価が大切です。
糖尿病とMASLDがつながる理由
MASLD/MASHは、糖尿病と同じ土台(インスリン抵抗性)の上で起こりやすい病態です。肝臓に脂肪がたまりやすくなる背景には、内臓脂肪の増加、食後高血糖、脂質異常(とくに中性脂肪高値)などが関与します。
糖尿病患者でのMASLD有病率
- アメリカ:糖尿病患者の65%にNAFLDを認める
- 日本:空腹時血糖正常群27%、異常群43%、糖尿病患者群では62%
- NASHの有病率は糖尿病があると1.9倍増加
- 糖尿病はNAFLDの線維化進行の危険因子
MASLDは糖尿病の発症危険因子
MASLDと診断された時点で糖尿病でなくても、経過中に高率(MASLDでない人の3.5倍)に糖尿病を発症します。MASLDは独立した糖尿病の発症危険因子なのです。
- 糖尿病がないMASLD患者の30〜40%に耐糖能異常を認める
- NASHでは20〜75%に糖尿病や耐糖能異常を認める
MASLDも糖尿病も、その根源はインスリン抵抗性という共通した因子であるため、切っても切れない関係にあるのです。
ヘパトカイン:肝臓から分泌される影響因子
肝臓から分泌されるサイトカインを「ヘパトカイン」と称しますが、これが耐糖能障害に関与しています。
- Selenoprotein P (SeP):インスリン抵抗性を誘導し、血管新生を抑制
- LECT2:骨格筋におけるインスリン抵抗性を誘導
- Fetuin-A:慢性炎症を引き起こす
肝臓がんのリスク
これまで肝臓がんの原因の大半を占めていたウイルス性肝炎の治療薬が登場し、C型肝炎ウイルスを体内からほぼ取り除けるようになりました。今後はウイルス性に代わって脂肪肝による肝臓がんの患者が増加することが心配されています。
脂肪肝は自覚症状が乏しく進行性かどうかを見分けにくいため、治療が遅れることも多いです。糖尿病患者に脂肪肝が隠れていることは多く、肝細胞癌の原因になりえます。地雷のようなものです。
実際、糖尿病患者の死因の17.5%が肝疾患であることが報告されており、膵癌、大腸癌についで肝細胞癌が多いです。一方、肝臓が悪くなると糖尿病の治療効果が悪くなり、糖尿病があると肝臓病の治療効果が悪くなる悪循環が生じます。
どんな人が注意すべき?
- 健診で脂肪肝、またはAST/ALT高値を指摘された
- 糖尿病、境界型糖尿病(耐糖能異常)を指摘されたことがある
- 肥満、腹囲増加、内臓脂肪が気になる
- 中性脂肪が高め、HDLコレステロールが低め
- お酒をほとんど飲まないのに脂肪肝と言われた
※ やせている方でも、体質や筋肉量の低下、生活習慣などで起こることがあります。
検査と評価の考え方
脂肪肝の評価では、「肝機能(AST/ALT)」だけで判断しないことが重要です。数値が軽度でも線維化が進んでいる場合があり、逆に数値が高くても生活改善で改善するケースもあります。
血液検査(例)
- AST / ALT / γ-GTP(肝機能の目安)
- HbA1c、血糖(糖代謝)
- 中性脂肪、HDL/LDL(脂質)
- 必要に応じて、肝線維化の指標(FIB-4 index など)
画像検査
- 腹部エコー(脂肪肝の評価)
- 必要に応じてCT、MRI、エラストグラフィー(線維化評価)
ポイント:6ヶ月間の治療中に肝酵素が改善しない場合、肝生検を考慮する必要があります。単純な肝脂肪症は軽度ですが、脂肪性肝炎(NASH)および線維化が予後の可能性があり、肝細胞癌のリスクが高いため、適切な評価が重要です。
治療の基本:生活改善と血糖コントロール
現時点で、MASHに対して「これだけで治る」という単独の治療は限られます。そのため、治療の柱は生活習慣と代謝の改善です。
1) 体重管理(目安)
可能であれば、まずは体重の5〜10%程度の減少を一つの目安にします。急激な減量よりも、続けられる改善が大切です。
2) 食事:極端にしない・続ける
- 甘い飲料・間食・夜遅い食事の見直し
- 主食量の調整(極端な糖質制限は避け、継続可能な形へ)
- たんぱく質・野菜・海藻などを意識
3) 運動:まずは「日常の増量」
- まとまった運動が難しい場合は、NEAT(生活活動)を増やす
- 食後の軽い歩行は、食後高血糖対策として有用
4) 血糖変動も含めた糖尿病管理
肝臓のためにも、糖尿病の治療最適化は重要です。HbA1cだけでなく、食後高血糖や血糖変動を含めた視点で調整します。
5) 薬物治療
いくつかの糖尿病薬が脂肪肝の治療に有効であるとされています。
- SGLT2阻害薬:イプラグリフロジン、ルセオグリフロジンなどが脂肪肝を改善するデータあり
- GLP-1受容体作動薬:体重減少効果とともに脂肪肝改善が期待
- ピオグリタゾン:NASHに対する効果が認められる
- メトホルミン:インスリン抵抗性改善
- スタチン、ビタミンE、ペントキシフィリン:推奨されている治療薬
MASLDに有効な糖尿病治療薬
MASLD(脂肪肝)を合併する糖尿病患者には、SGLT2阻害薬やピオグリタゾンなど、肝機能改善が期待できる治療薬があります。各薬剤の詳細については糖尿病治療薬ガイドをご参照ください。
よくある質問(FAQ)
Q. お酒を飲まないのに脂肪肝と言われました。なぜですか?
MASLDは「飲酒が原因ではない脂肪肝」ではなく、代謝異常(インスリン抵抗性)を背景に起こる脂肪肝です。糖尿病・肥満・脂質異常症などがあると起こりやすくなります。
Q. 糖尿病があると脂肪肝になりやすいのですか?
はい。日本では糖尿病患者の62%にMASLDが認められ、NASHのリスクも1.9倍増加します。糖尿病とMASLDはインスリン抵抗性という共通の土台を持っています。
Q. 放置するとどうなりますか?
多くは生活改善で良くなる可能性がありますが、一部の方で肝線維化が進行し、肝硬変や肝がんのリスクが高まることがあります。糖尿病患者の死因の17.5%が肝疾患です。
Q. AST/ALTが少し高いだけなら様子見でいいですか?
軽度上昇でも、体重増加や血糖・脂質の状態によっては将来のリスクと関連することがあります。数値だけで判断せず、生活習慣や必要な検査を含めて総合的に評価します。
Q. 薬は必要ですか?
基本は生活改善と糖尿病治療の最適化です。状況によっては、SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬、ピオグリタゾンなどの糖尿病治療薬が脂肪肝改善にも寄与することがあります。
Q. どのくらいで改善しますか?
個人差はありますが、食事・運動・体重の変化により、数か月単位で肝機能や脂肪肝所見が改善することがあります。焦らず、続けられる方法が大切です。
船橋市でMASLD・糖尿病治療をご検討の方へ
しもやま内科は東葉高速線「飯山満駅」徒歩圏内にある内科・糖尿病内科・甲状腺内科クリニックです。船橋・習志野・八千代・鎌ケ谷などからご来院多数。
- 糖尿病専門医によるMASLD/MASHの評価・管理
- 肝機能・肝線維化マーカーの総合的評価
- SGLT2阻害薬・GLP-1受容体作動薬など脂肪肝改善も期待できる治療薬の選択
- 生活習慣指導と継続可能な改善プランの作成
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👨⚕️ この記事の監修医師
下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長
日本内科学会 認定内科医・総合内科専門医
日本糖尿病学会 専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年科専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医
関連ページ
- SGLT2阻害薬:脂肪肝改善効果も期待できる糖尿病治療薬
- GLP-1受容体作動薬:体重減少と脂肪肝改善
- ピオグリタゾン:NASHに対する効果
- メトホルミン:インスリン抵抗性改善