MASLD・MASH(旧NAFLD・NASH)とは? 糖尿病と深く関係する脂肪肝を専門医が解説|船橋市 しもやま内科

🔊 このページの要点

  • MASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)は、飲酒習慣がなくても起こる脂肪肝です。
  • MASH(進行型)では、肝線維化が進むと肝硬変や肝がんのリスクが高まります。
  • 糖尿病・肥満・脂質異常症と強く関連し、中心病態はインスリン抵抗性です。
  • 治療の基本は、体重管理・運動・血糖コントロール(血糖変動も含む)です。
  • 健診で肝機能異常や脂肪肝を指摘されたら、早めの評価が安心につながります。

MASLD・MASH(旧NAFLD・NASH)とは?糖尿病と深く関係する脂肪肝を解説する医師のイメージ
MASLD・MASH(旧NAFLD・NASH)— 糖尿病と深く関係する脂肪肝について、わかりやすく解説します。

健診で「脂肪肝」「肝機能異常(AST/ALT高値)」を指摘される方は少なくありません。
最近は、従来のNAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)NASHという呼び方から、
MASLDMASHという正式名称へ移行しています。

とくに糖尿病のある方では、脂肪肝が「たまたま見つかった所見」ではなく、
代謝異常(インスリン抵抗性)を反映する重要なサインであることが多いです。
このページでは、名称変更のポイント、注意すべき人、検査の考え方、改善のコツをまとめます。

MASLD・MASHとは?(旧NAFLD・NASHとの違い)

MASLD(Metabolic dysfunction–associated steatotic liver disease)は、
従来「NAFLD」と呼ばれてきた病態の新しい正式名称です。ポイントは“代謝異常が背景にある脂肪肝”であることです。

その中でも、炎症や線維化を伴い進行しやすいタイプがMASH(旧NASHに相当)です。
早期は自覚症状が乏しい一方で、進行すると肝硬変や肝がんのリスクが上がるため、適切な評価が大切です。

用語の整理(このページの読み方)

  • MASLD:代謝異常を背景にした脂肪肝(旧 NAFLD の中心概念)
  • MASH:炎症・線維化を伴い進行しやすいタイプ(旧 NASH 相当)
  • 旧名称(NAFLD/NASH)で検索される方も多いため、本ページでは併記します。

糖尿病と脂肪肝がつながる理由

MASLD/MASHは、糖尿病と同じ土台(インスリン抵抗性)の上で起こりやすい病態です。
肝臓に脂肪がたまりやすくなる背景には、内臓脂肪の増加、食後高血糖、脂質異常(とくに中性脂肪高値)などが関与します。

ここで大事なのは、HbA1cだけでは見えない「血糖変動」食後高血糖が、
代謝異常のサインとして重要になることがある点です。

関連:HbA1cだけに頼らない視点(beyond HbA1c)

血糖変動・低血糖・食後高血糖などを含めて評価する考え方は、脂肪肝だけでなく腎症や心血管リスクにもつながります。
▶︎ /diabetes/beyond_hba1c/

どんな人が注意すべき?

次のような方は、MASLD/MASHの可能性や進行リスクが高いことがあります。

  • 健診で脂肪肝、またはAST/ALT高値を指摘された
  • 糖尿病、境界型糖尿病(耐糖能異常)を指摘されたことがある
  • 肥満、腹囲増加、内臓脂肪が気になる
  • 中性脂肪が高め、HDLコレステロールが低め
  • お酒をほとんど飲まないのに脂肪肝と言われた

※ やせている方でも、体質や筋肉量の低下、生活習慣などで起こることがあります。

検査と評価の考え方

脂肪肝の評価では、「肝機能(AST/ALT)」だけで判断しないことが重要です。
数値が軽度でも線維化が進んでいる場合があり、逆に数値が高くても生活改善で改善するケースもあります。

血液検査(例)

  • AST / ALT / γ-GTP(肝機能の目安)
  • HbA1c、血糖(糖代謝)
  • 中性脂肪、HDL/LDL(脂質)
  • 必要に応じて、肝線維化の指標(FIB-4 index など)

画像検査

  • 腹部エコー(脂肪肝の評価)
ポイント

  • 「数値が少し高いだけ」でも、生活習慣の見直しは将来のリスク低下につながります。
  • 脂肪肝は、糖尿病・腎症・心血管疾患と同じ方向を向いていることが多いです。

治療の基本:生活改善と血糖コントロール

現時点で、MASHに対して「これだけで治る」という単独の治療は限られます。
そのため、治療の柱は生活習慣と代謝の改善です。

1) 体重管理(目安)

可能であれば、まずは体重の5〜10%程度の変化を一つの目安にします。
急激な減量よりも、続けられる改善が大切です。

2) 食事:極端にしない・続ける

  • 甘い飲料・間食・夜遅い食事の見直し
  • 主食量の調整(極端な糖質制限は避け、継続可能な形へ)
  • たんぱく質・野菜・海藻などを意識

3) 運動:まずは「日常の増量」

  • まとまった運動が難しい場合は、NEAT(生活活動)を増やす
  • 食後の軽い歩行は、食後高血糖対策として有用

4) 血糖変動も含めた糖尿病管理

肝臓のためにも、糖尿病の治療最適化は重要です。
HbA1cだけでなく、食後高血糖や血糖変動を含めた視点で調整します。


📞 ご相談・受診のご案内

健診で脂肪肝や肝機能異常を指摘された方、糖尿病と脂肪肝の関係が気になる方は、早めの評価が安心につながります。

しもやま内科(電話):047-467-5500
※ Web予約は行っておりません。お電話でご相談ください。

よくある質問(FAQ)

Q. お酒を飲まないのに脂肪肝と言われました。なぜですか?
A. MASLDは「飲酒が原因ではない脂肪肝」ではなく、代謝異常(インスリン抵抗性)を背景に起こる脂肪肝です。糖尿病・肥満・脂質異常症などがあると起こりやすくなります。
Q. 放置するとどうなりますか?
A. 多くは生活改善で良くなる可能性がありますが、一部の方で肝線維化が進行し、肝硬変や肝がんのリスクが高まることがあります。早めに評価しておくと安心です。
Q. AST/ALTが少し高いだけなら様子見でいいですか?
A. 軽度上昇でも、体重増加や血糖・脂質の状態によっては将来のリスクと関連することがあります。数値だけで判断せず、生活習慣や必要な検査を含めて総合的に評価します。
Q. 薬は必要ですか?
A. 基本は生活改善と糖尿病治療の最適化です。状況によっては、糖尿病治療薬の選択や合併症対策を含めて検討します。
Q. どのくらいで改善しますか?
A. 個人差はありますが、食事・運動・体重の変化により、数か月単位で肝機能や脂肪肝所見が改善することがあります。焦らず、続けられる方法が大切です。

👨‍⚕️ この記事の監修医師

下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年病専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医

糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。

健診で脂肪肝や肝機能異常を指摘された方へ:
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