糖新生とは?糖尿病の空腹時血糖メカニズムを専門医が図解|しもやま内科

先生、朝食を抜いても血糖が下がらないんです。インスリンも飲んでるのに……——先日、50代の男性患者さんが、血糖記録を見せながら困惑していました。朝の空腹時血糖がいつも150台で、食事を抜いても下がらないそうです。実は、これは「糖新生(gluconeogenesis)」という、肝臓が自分でブドウ糖を作り出す仕組みが過剰に働いているためで、糖尿病の患者さんでよく見られる現象なんです。

朝の血糖値が下がりにくい方へ。肝臓が空腹時にブドウ糖を作る糖新生の仕組みと、糖尿病でなぜこの機能が問題になるのかを、専門医がわかりやすく解説します。記事の最後には受診の目安もまとめています。

糖新生とは何ですか?(わかりやすく解説)

糖新生(とうしんせい)とは、糖以外の物質からブドウ糖を作る体の仕組みです。

主な材料は以下の3つです:

  • 乳酸
  • アミノ酸
  • グリセロール

食事から糖が供給されない時間帯(空腹時・夜間)に血糖値を一定に保つために、私たちの体はこの仕組みを働かせています。

糖新生の全体フロー図
空腹時に肝臓がブドウ糖を作り、血糖値を一定に保つ仕組み(糖新生)

糖新生はどこで起こりますか?

糖新生は主に肝臓で行われます。

  • 絶食の初期(18〜24時間):肝臓が中心(80〜90%)
  • 長時間の絶食:腎臓の役割が増える(10〜20%)

このように、肝臓は空腹時血糖の維持に中心的な役割を担っています。研究デザインや個人差により数値に幅がある点はご留意ください。

糖尿病で糖新生が問題になる理由

2型糖尿病では、肝臓からの糖放出が十分に抑えられないことが、空腹時高血糖の重要な原因の一つになっています。

本来、インスリンには肝臓での糖産生を抑える働きがあります。しかし、糖尿病ではこのインスリンの働きが不十分になり、夜間や早朝にも糖新生が止まらず、朝の血糖値が高くなってしまうのです。

インスリンと肝臓の働き比較図
インスリンが十分に働かないと、肝臓からの糖放出が止まらず空腹時高血糖につながります

肝臓の状態と朝の血糖の関係

肝臓は空腹時血糖の維持に中心的役割を担っているため、肝機能・肝グリコーゲン量・ホルモン環境(グルカゴン、カテコールアミン等)によって、朝の血糖の出方が左右されます。肝機能に問題がある場合や、薬物調整の必要性が疑われる場合は、専門医への相談をお勧めします。

夜間~早朝の血糖変動イメージ
夜間も糖新生が続くため、朝の血糖値が高くなることがあります

よくある質問(FAQ)

糖新生とは何ですか?

糖新生とは、乳酸やアミノ酸、グリセロールなどの糖以外の物質からブドウ糖を作る代謝経路です。主に空腹時や夜間など、食事から糖が供給されないときに働き、血糖値を一定に保つ役割を果たします。

糖新生はどこで起こりますか?

糖新生は主に肝臓で行われます。絶食の初期は肝臓の寄与が大きく、長時間の絶食では腎臓の寄与が増えると整理できます(研究により推定値に幅があります)。

糖尿病ではなぜ糖新生が問題になるのですか?

糖尿病ではインスリン作用が不足し、肝臓からの糖放出(肝糖産生)が十分に抑えられないことが、空腹時高血糖の原因の一つになります。

長時間の絶食では糖新生の割合はどう変わりますか?

絶食が進むと、内因性糖産生に占める糖新生の割合が増えます。健常者で一晩の絶食後は糖産生の約半分、42時間ではほぼ全部に近い割合になります。

受診の目安

以下のような場合は、一度ご相談ください:

  • 健診や採血で「空腹時血糖が高い」「HbA1cが高い」と言われた
  • 朝の血糖が高い・夜間〜早朝の血糖が気になる
  • 肝機能異常があり、血糖との関係が気になる

047-467-5500

しもやま内科(船橋市)

この記事の監修医師

下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長

日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年科専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医

糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。

参考文献

  • StatPearls: Physiology, Gluconeogenesis (NCBI Bookshelf)
  • Cano N. Bench-to-bedside review: Glucose production from the kidney. Crit Care. 2002
  • Endotext: Pathogenesis of Type 2 Diabetes Mellitus
  • Girard J. The inhibitory effects of insulin on hepatic glucose production are both direct and indirect. Diabetes. 2006
  • Edgerton DS et al. Insulin can inhibit hepatic glucose production… 2017
  • Lewis GF et al. Direct and indirect control of hepatic glucose production by insulin. Cell Metabolism. 2021
  • Landau BR et al. Contributions of gluconeogenesis to glucose production in fasting. 1996

よくある質問(FAQ)

糖新生とは何ですか?

糖新生(gluconeogenesis)とは、肝臓や腎臓がアミノ酸や乳酸、グリセロールなどからブドウ糖を作り出す代謝経路のことです。食事から糖質を摂取していない空腹時に、脳や赤血球などが必要とするエネルギーを供給する重要な仕組みです。

なぜ朝の空腹時血糖が高くなるの?

朝の空腹時血糖が高くなるのは、夜間に糖新生が活発になるためです。睡眠中は食事を摂らないため、肝臓が糖新生でブドウ糖を作り出し、血糖値を維持しようとします。糖尿病の方はインスリンの効きが悪いため、糖新生が抑制されず、朝の血糖値が高くなりやすいのです。

糖新生を抑える方法は?

糖新生を抑えるには、①食後の血糖変動を抑える(糖質の適切な摂取)、②肥満を解消する(内臓脂肪の減少)、③適度な運動(有酸素運動と筋トレ)、④医療機関での適切な薬物療法が効果的です。特に内臓脂肪が減ると、肝臓のインスリン感受性が改善し、糖新生が抑えられます。

糖新生と糖質制限の関係は?

糖質制限をすると、糖質の摂取が減るため血糖値は下がりやすくなります。しかし、極端な糖質制限は糖新生を逆に促進し、空腹時血糖が上がることもあります。極端な制限ではなく、適量の糖質を摂りながら体重や内臓脂肪を減らすアプローチが推奨されます。

糖新生が活発になると危険ですか?

糖新生が適度に行われること自体は生命維持に必要な正常な仕組みです。しかし、糖尿病の方で糖新生が過剰に活発になると、空腹時血糖や朝の血糖値(空腹時高血糖)が上昇し、HbA1cが悪化します。長期的には血管障害のリスクが高まるため、適切な管理が必要です。

06/03/2026