SGLT2阻害薬の心・腎保護作用が投与後のケトン体増加を介するという仮説

06/09/2016

SGLT2阻害薬の心・腎保護作用が投与後のケトン体増加を介するという仮説が登場

心疾患の既往のある2型糖尿病患者を対象としたEMPA-REG OUTCOMEでは予後改善が期待しうると思われる。心血管死亡や全死亡の低下は素晴らしいものだ。EMPA-REG OUTCOMEの予後改善効果は,脳卒中や心筋梗塞の発症を抑えてのことではない点が僅かに疑問として残っていたが、最近ではSGLT2阻害薬の心・腎保護作用が本薬剤投与後のケトン体増加を介するという仮説が登場している。ケトン体は悪いものとしか思っていなかったので意外や意外、といったところである。

Diabetes Care. 2016 Jul;39(7):1108-14.
Diabetes Care. 2016 Jul;39(7):1115-22.

正直、私はこれを完全に理解したとは言えないのだが、「糖尿病患者では心・腎において、糖代謝よりもエネルギー効率のはるかに悪い脂肪酸代謝が優位となっている。SGLT2阻害薬により、ケトン体(βハイドロキシ酢酸:BHOB)が増加するとエネルギー効率の良いケトン体を使えるようになるため、特に心・腎の予後を改善する。」という仮説である。

この仮説が真実なら、心保護作用は利尿作用以外に上記で説明できることになる。hyperfiltrationの時期を過ぎたような進行した腎症でも予後の改善が期待できることが説明できるだろう。EMPA-REG OUTCOMEの結果を患者さんに説明して同意が得られれば、積極的に処方をする価値がある。しかしながら、久山町研究でHct上昇が冠動脈疾患や脳梗塞リスクを上昇させるというデータがあるために(Atherosclerosis 2015; 242:199-204)、脱水はできるようにだけ避けるようにしっかりと指導することが必要だ。