糖尿病内科

MiniMed 780Gで進化するSAP療法|自動補正ボーラスと血糖コントロール|しもやま内科

02/05/2018

この記事のポイント

  • MiniMed 780Gは「自動ベーサル調整」+「自動補正ボーラス」を備えた次世代のSAPです
  • 食事ミスやカーボカウントの誤差も補正し、血糖の安定化を強力にサポート
  • 糖尿病専門医が最新SAP機器の導入・運用をサポートしています

センサー付きインスリンポンプ(SAP)780Gの装着イメージ|しもやま内科

SAP療法とは?

SAP(Sensor Augmented Pump:センサー連動インスリンポンプ療法)は、持続皮下インスリン注入療法(CSII)に持続血糖測定(CGM)を組み合わせ、リアルタイムでの血糖値変動に応じてインスリン注入量を調整する高度な治療法です。低血糖を予防するだけでなく、血糖の目標範囲維持を助けるハイブリッドクローズドループ技術として世界的に推奨されています。

(出典:日本糖尿病学会 編「インスリン療法の手引き 2023」/NCCN Guidelines® Diabetes Technology 2023)

スマートガード機能の進化について

Medtronic 780Gは、センサー付きインスリンポンプ(SAP)の中でも最新機種で、目標血糖補正まで自動で行うスマートガード機能(Auto Correction)を搭載しています。これにより、持続皮下インスリン注入療法中の低血糖予防だけでなく、高血糖の是正にも対応可能になりました。Guardian 4 センサーとの連携により、ハイブリッドクローズドループ技術がさらに進化しています。

(出典:Medtronic MiniMed 780G システム製品情報, 2024年 Medtronic社)

MiniMed 780Gの自動調整機能について

MiniMed 780Gは、カーボカウントに基づいてベーサルインスリンとボーラスインスリンの両方を自動で調整できる最新のSAP(Sensor Augmented Pump)です。以下では、各機能の詳細を図解とともにわかりやすく解説します。

1. ベーサルインスリンの自動調整

血糖のトレンドに応じて、ベーサルインスリンが5分ごとに自動で増減され、低血糖・高血糖のリスクを抑えます。

MiniMed 780Gの自動ベーサル・ボーラス調整を解説する図解:食前に血糖値が上がりかけたとき、ベーサルインスリンが自動で調整される様子を示すイラスト

2. ボーラスインスリンの自動補正(Auto Correction Bolus)

🍽 ボーラスインスリンも「自動」で調整される?

MiniMed 780Gでは、「自動基礎インスリン調整(Auto Basal)」に加え、「自動補正ボーラス(Auto Correction Bolus)」機能も搭載されています。

これは、カーボカウントで食事の炭水化物量を入力していても、入力ミスや吸収遅れで高血糖傾向になったときに、自動で追加ボーラスを投与して補正する機能です。

📏 具体例:カーボカウント後に血糖値が高くなったとき…

  • 食前血糖:110 mg/dL
  • 食事:カーボ量 60g(例:ご飯+焼き魚+味噌汁)
  • カーボ比(ICR):1単位あたり10g → 6単位投与
  • ISF:1単位で50 mg/dL下がる
  • 目標血糖:110 mg/dL

このケースで、もし食後に200mg/dL超の血糖上昇がみられた場合、システムは「入力したボーラスだけでは不十分」と判断し、1〜2単位の追加ボーラスを自動投与します(15分ごとに再評価)。

MiniMed 780Gの自動補正ボーラスを解説する図解:お菓子を食べたあと、血糖値の上昇に合わせてボーラスインスリンを自動で追加調整する仕組みを説明したイラスト

🤔 つまり何が便利?

  • 補正忘れをシステムが自動対応
  • カーボ入力ミスのリカバリーにも有効

📌 注意点

ただし、食事前のカーボ入力とマニュアルボーラスは必要です。自動補正はあくまで補助機能として働きます。

✅ まとめ表:MiniMed 780Gの特徴

項目 従来のSAP MiniMed 780G
食前ボーラス 手動 手動(カーボ入力)
高血糖補正 手動入力 自動補正ボーラス
カウントミスの影響 高血糖になりやすい 自動で補正
補正の頻度 限定的 15分ごとに再評価

📊 トレンド別:自動補正ボーラスの挙動

  • 🟧 上昇トレンド(↑):210mg/dL以上 → 約2単位の補正
  • 🟨 安定トレンド(→):150〜160mg/dL → 約0.5〜0.8単位の補正
  • 🟩 下降トレンド(↓):140mg/dL → 補正なし、自動ベーサル調整で対応

📌 自動補正の仕様

  • 5分ごとに血糖と予測値を評価
  • 最大:1時間に12回まで投与可能
  • 1回の投与量は少量(通常0.1〜2.0単位)

🔄 まとめ図

MiniMed 780Gを使ったSAP療法でのボーラスインスリン自動調整の仕組みを図解したイラスト:患者の血糖値や食事申告に基づいてボーラスを自動で最適化

これらの機能により、MiniMed 780Gはカーボカウントの価値を最大限に引き出す仕組みとなっています。詳しくは、しもやま内科へご相談ください。

SAP機種の比較

機種 特徴 自動補正 対応センサー
Minimed 780G 目標補正まで自動制御するハイブリッドクローズドループ搭載 あり(Auto Correction) Guardian 4
Minimed 640G 低血糖予防の自動停止機能 なし Guardian 3
(参考)従来ポンプ センサーなしで手動操作 なし なし

770Gについては現在、新規導入は推奨しておらず、当院でも780Gを中心にご案内しています。

イメージ

Medtronic 780G

780Gは、目標血糖補正まで自動で行う次世代のスマートガード機能を搭載しています
(Medtronic社 2024年資料より)。

よくある質問

MiniMed 780Gでは、食事のたびにカーボ入力が必要ですか?
はい。自動補正ボーラスは補助機能であり、食前のカーボ入力とマニュアルボーラスは必須です。
カーボ入力を間違えた場合、自動補正は対応してくれますか?
はい。MiniMed 780Gでは、入力ミスによる高血糖を5〜15分ごとに検出し、自動で少量の補正ボーラスを投与して調整します。
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👨‍⚕️ この記事の監修医師

下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年病専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医
糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。

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