🔎 このページの要点(治療後有痛性神経障害:RPN)
- RPN(治療後有痛性神経障害)は、糖尿病治療でHbA1cが短期間に大きく下がった後に、足の灼熱感・ビリビリする痛みが強く出ることがある状態です(TINDとも呼ばれます)。
- 多くは時間とともに軽快し、目安として半年〜1年程度で落ち着くことが多い一方、つらい時期は痛みを和らげる治療で生活(睡眠)を守ることが大切です。
- 片足だけの急な冷感・色の変化、急激な脱力、発熱を伴う痛みなどは別の病気の可能性があるため、早めに受診してください。
糖尿病の治療を始めたり強化したあと、血糖は良くなっているのに「足が焼けるように痛い」「ビリビリして眠れない」という症状が出ることがあります。
このような経過のときに疑うのが、治療後有痛性神経障害(RPN:Reversible/Painful Neuropathy after glycemic improvement)です。文献では TIND(Treatment-Induced Neuropathy of Diabetes) と呼ばれることもあります。
まずお伝えしたいのは、RPNは「血糖が良くなったのに悪化した」ように感じて不安になりやすい一方で、時間とともに軽快していくことが多いという点です。つらい時期は無理に我慢せず、痛みの治療で睡眠と日常生活を守りましょう。
RPN(TIND)とは?
RPN(治療後有痛性神経障害)は、糖尿病の治療(食事・運動・薬物治療の強化など)によって血糖が短期間に大きく改善したあとに、主に下肢を中心に強い神経痛が出る状態です。以前は「インスリン神経炎」と呼ばれることもありましたが、原因はインスリンそのものというより、急速な血糖環境の変化が関与すると考えられています。
特徴は「痛みが強い」「夜間に悪化しやすく眠れない」「触れるだけでつらい」など、生活への影響が大きいことです。一方で、糖尿病性神経障害(慢性的に進むタイプ)とは違い、RPNは経過とともに軽快していく例が多いことが知られています。
起こりやすいタイミング・原因
RPNは、治療開始や治療強化の数週〜数か月後に出ることがあります。特に、HbA1cが短期間に大きく低下したケースで起こりやすいとされます。
- タイミング:治療開始・変更・強化の数週〜数か月後
- 背景:長期間の高血糖 → 短期間で血糖が改善
- 状況:体重減少が急、食事量が急に変化、生活習慣が大きく変わった など
詳しい機序は完全に解明されていませんが、急激な血糖改善により神経周囲の血流・代謝環境が変化し、痛みが強く出る可能性が示唆されています。
症状(よくある訴え)
- 足先〜足底、すね・ふくらはぎの灼熱感(焼けるような痛み)
- ビリビリ・電気が走るような痛み、ズキズキする痛み
- 夜間に悪化し、眠れない/途中で目が覚める
- 触れるだけで痛い(衣類・布団が当たるだけでつらい)
- 痛みが続くことで、不安・落ち込み、活動量低下が重なりやすい
「足のしびれ」よりも、まず痛みが前面に出ることが多いのがRPNの特徴です。
治るまでどのくらい?(経過の見通し)
個人差はありますが、RPNはずっと続く痛みではないことが多いです。目安として半年〜1年程度で軽快する例が多く、ピークを越えると「眠れる日」が増えたり、痛みの範囲が狭くなったりして、少しずつ改善していきます。
ただし、痛みが強い時期に我慢し続けると睡眠不足・活動低下につながり、回復が遠回りになることがあります。RPNは痛みの治療で生活を守ることがとても重要です。
診断の考え方(似た病気との区別)
RPNは、典型的には「治療強化 → HbA1cが短期間に低下 → 数週〜数か月後に強い神経痛」という経過から疑います。ただし、足の痛みには別の原因もあり、見逃すと危険なものもあります。
RPNと似た症状を起こす代表例
- 末梢動脈疾患(PAD):片足の冷感、皮膚色変化、歩くと痛い(間欠性跛行)など
- 帯状疱疹:皮疹が出る前に痛みだけ先行することがあります
- 腰椎由来(坐骨神経痛など):片側優位、腰痛を伴う、姿勢で増悪するなど
- 感染・炎症:発熱、赤く腫れる、押すと強い痛み など
- ビタミン欠乏・甲状腺機能異常:しびれや痛みの背景に隠れることがあります
必要に応じて、神経学的評価に加えて、採血(栄養・甲状腺など)、足の血流評価、皮膚所見の確認などを組み合わせて判断します。
治療:痛みを抑え、血糖も守る
RPNの治療は大きく2本柱です。①痛みを和らげる治療 と、②血糖改善のペースを主治医と相談しながら整えることです。
1)痛みを和らげる薬(代表例)
- プレガバリン(例:リリカ等)
- デュロキセチン(例:サインバルタ等)
- 体質・併存症・眠気の出方などをみて調整(必要なら併用や切り替え)
痛み止めは「痛みをゼロにする」よりも、まず眠れる・歩ける・日常が回るところまで引き上げるのが現実的な目標です。効果判定と副作用確認のため、数週単位で微調整します。
2)睡眠の確保(回復を早める土台)
RPNの痛みは夜に強くなることがあり、睡眠不足が痛みの感じ方を増幅させます。眠れない痛みが続く場合は、痛みの薬の調整に加え、睡眠面の対策も同時に行います。
3)血糖目標の「ペース」を相談する
RPNは「急な改善」が引き金になりやすいと考えられているため、状況によっては、主治医と相談しながら血糖目標の到達ペースを調整することがあります。
大切なのは、自己判断で治療を中断して血糖を乱すことではありません。治療を続けつつ、無理のないペースで整えるのが基本です。
自宅でできる工夫(睡眠・足のケア)
- 足を温めすぎない:灼熱感が強い場合、強い温熱が不快になることがあります(心地よい範囲で)
- 刺激を減らす:締め付けの少ない靴下、布団が触れてつらい場合は足元の工夫(タオルで支える等)
- 就寝前のルーティン:入浴→軽いストレッチ→照明を落とす→スマホを早めに切る
- 足の観察:皮膚の色、腫れ、傷、熱感、爪周りを毎日チェック
痛みが強いと活動量が落ちやすいですが、可能な範囲での軽い歩行やストレッチは、血流や睡眠に良い影響が出ることがあります(無理は禁物です)。
受診を急ぐサイン(RPN以外の可能性)
- 片足だけが急に冷たい、色が白い/紫、脈が触れにくい
- 急に力が入らない、しびれがどんどん上がる
- 発熱や赤く腫れる、押すと強い痛み、傷が治らない
- 胸痛・息切れなど、全身症状を伴う
この場合は神経痛以外(血流障害、感染、脊椎由来など)の評価が必要です。早めにご相談ください。
よくある質問
RPNはどのくらいで治りますか?
インスリンが原因ですか?
HbA1cがどれくらい下がると起こりやすい?
痛み止め(プレガバリン/デュロキセチン等)はいつまで飲みますか?
片足だけ痛いのもRPNですか?
自己判断で糖尿病治療を中断してもいいですか?
受診の目安は?
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📞 つらい足の痛み、我慢しないでご相談ください
「治療後に足が痛くて眠れない」「急にビリビリが強くなった」など、RPNが疑われる症状は早めの評価と痛みの調整が大切です。気になる症状がある方はお電話でご相談ください。
👨⚕️ この記事の監修医師
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年病専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。