糖尿病内科

治療後有痛性神経障害(RPN)とは?血糖を下げた後に足が痛い…原因・治療・治るまで

25/01/2019

🔎 このページの要点(治療後有痛性神経障害:RPN)

  • RPN(治療後有痛性神経障害)は、糖尿病治療でHbA1cが短期間に大きく下がった後に、足の灼熱感・ビリビリする痛みが強く出ることがある状態です(TINDとも呼ばれます)。
  • 多くは時間とともに軽快し、目安として半年〜1年程度で落ち着くことが多い一方、つらい時期は痛みを和らげる治療で生活(睡眠)を守ることが大切です。
  • 片足だけの急な冷感・色の変化、急激な脱力、発熱を伴う痛みなどは別の病気の可能性があるため、早めに受診してください。

糖尿病の治療を始めたり強化したあと、血糖は良くなっているのに「足が焼けるように痛い」「ビリビリして眠れない」という症状が出ることがあります。
このような経過のときに疑うのが、治療後有痛性神経障害(RPN:Reversible/Painful Neuropathy after glycemic improvement)です。文献では TIND(Treatment-Induced Neuropathy of Diabetes) と呼ばれることもあります。

まずお伝えしたいのは、RPNは「血糖が良くなったのに悪化した」ように感じて不安になりやすい一方で、時間とともに軽快していくことが多いという点です。つらい時期は無理に我慢せず、痛みの治療で睡眠と日常生活を守りましょう。

RPN(TIND)とは?

RPN(治療後有痛性神経障害)は、糖尿病の治療(食事・運動・薬物治療の強化など)によって血糖が短期間に大きく改善したあとに、主に下肢を中心に強い神経痛が出る状態です。以前は「インスリン神経炎」と呼ばれることもありましたが、原因はインスリンそのものというより、急速な血糖環境の変化が関与すると考えられています。

特徴は「痛みが強い」「夜間に悪化しやすく眠れない」「触れるだけでつらい」など、生活への影響が大きいことです。一方で、糖尿病性神経障害(慢性的に進むタイプ)とは違い、RPNは経過とともに軽快していく例が多いことが知られています。

起こりやすいタイミング・原因

RPNは、治療開始や治療強化の数週〜数か月後に出ることがあります。特に、HbA1cが短期間に大きく低下したケースで起こりやすいとされます。

  • タイミング:治療開始・変更・強化の数週〜数か月後
  • 背景:長期間の高血糖 → 短期間で血糖が改善
  • 状況:体重減少が急、食事量が急に変化、生活習慣が大きく変わった など

詳しい機序は完全に解明されていませんが、急激な血糖改善により神経周囲の血流・代謝環境が変化し、痛みが強く出る可能性が示唆されています。

症状(よくある訴え)

  • 足先〜足底、すね・ふくらはぎの灼熱感(焼けるような痛み)
  • ビリビリ・電気が走るような痛み、ズキズキする痛み
  • 夜間に悪化し、眠れない/途中で目が覚める
  • 触れるだけで痛い(衣類・布団が当たるだけでつらい)
  • 痛みが続くことで、不安・落ち込み、活動量低下が重なりやすい

「足のしびれ」よりも、まず痛みが前面に出ることが多いのがRPNの特徴です。

治るまでどのくらい?(経過の見通し)

個人差はありますが、RPNはずっと続く痛みではないことが多いです。目安として半年〜1年程度で軽快する例が多く、ピークを越えると「眠れる日」が増えたり、痛みの範囲が狭くなったりして、少しずつ改善していきます。

ただし、痛みが強い時期に我慢し続けると睡眠不足・活動低下につながり、回復が遠回りになることがあります。RPNは痛みの治療で生活を守ることがとても重要です。

診断の考え方(似た病気との区別)

RPNは、典型的には「治療強化 → HbA1cが短期間に低下 → 数週〜数か月後に強い神経痛」という経過から疑います。ただし、足の痛みには別の原因もあり、見逃すと危険なものもあります。

RPNと似た症状を起こす代表例

  • 末梢動脈疾患(PAD):片足の冷感、皮膚色変化、歩くと痛い(間欠性跛行)など
  • 帯状疱疹:皮疹が出る前に痛みだけ先行することがあります
  • 腰椎由来(坐骨神経痛など):片側優位、腰痛を伴う、姿勢で増悪するなど
  • 感染・炎症:発熱、赤く腫れる、押すと強い痛み など
  • ビタミン欠乏・甲状腺機能異常:しびれや痛みの背景に隠れることがあります

必要に応じて、神経学的評価に加えて、採血(栄養・甲状腺など)、足の血流評価、皮膚所見の確認などを組み合わせて判断します。

治療:痛みを抑え、血糖も守る

RPNの治療は大きく2本柱です。①痛みを和らげる治療 と、②血糖改善のペースを主治医と相談しながら整えることです。

1)痛みを和らげる薬(代表例)

  • プレガバリン(例:リリカ等)
  • デュロキセチン(例:サインバルタ等)
  • 体質・併存症・眠気の出方などをみて調整(必要なら併用や切り替え)

痛み止めは「痛みをゼロにする」よりも、まず眠れる・歩ける・日常が回るところまで引き上げるのが現実的な目標です。効果判定と副作用確認のため、数週単位で微調整します。

2)睡眠の確保(回復を早める土台)

RPNの痛みは夜に強くなることがあり、睡眠不足が痛みの感じ方を増幅させます。眠れない痛みが続く場合は、痛みの薬の調整に加え、睡眠面の対策も同時に行います。

3)血糖目標の「ペース」を相談する

RPNは「急な改善」が引き金になりやすいと考えられているため、状況によっては、主治医と相談しながら血糖目標の到達ペースを調整することがあります。
大切なのは、自己判断で治療を中断して血糖を乱すことではありません。治療を続けつつ、無理のないペースで整えるのが基本です。

自宅でできる工夫(睡眠・足のケア)

  • 足を温めすぎない:灼熱感が強い場合、強い温熱が不快になることがあります(心地よい範囲で)
  • 刺激を減らす:締め付けの少ない靴下、布団が触れてつらい場合は足元の工夫(タオルで支える等)
  • 就寝前のルーティン:入浴→軽いストレッチ→照明を落とす→スマホを早めに切る
  • 足の観察:皮膚の色、腫れ、傷、熱感、爪周りを毎日チェック

痛みが強いと活動量が落ちやすいですが、可能な範囲での軽い歩行やストレッチは、血流や睡眠に良い影響が出ることがあります(無理は禁物です)。

受診を急ぐサイン(RPN以外の可能性)

  • 片足だけが急に冷たい、色が白い/紫、脈が触れにくい
  • 急に力が入らない、しびれがどんどん上がる
  • 発熱や赤く腫れる、押すと強い痛み、傷が治らない
  • 胸痛・息切れなど、全身症状を伴う

この場合は神経痛以外(血流障害、感染、脊椎由来など)の評価が必要です。早めにご相談ください。

よくある質問

RPNはどのくらいで治りますか?
個人差はありますが、目安として半年〜1年程度で軽快していく例が多いです。ピークを越えると「眠れる日」が増えるなど、段階的に改善していくことが一般的です。
インスリンが原因ですか?
以前は「インスリン神経炎」と呼ばれましたが、現在はインスリンそのものというより、血糖が短期間に改善したこと(環境変化)が関与すると考えられています。インスリン以外の治療強化でも起こりえます。
HbA1cがどれくらい下がると起こりやすい?
「短期間に大きく下がった」ケースで起こりやすいとされます。具体的な閾値は個人差があるため、治療の経過と症状のタイミングを合わせて判断します。
痛み止め(プレガバリン/デュロキセチン等)はいつまで飲みますか?
「眠れる」「日常生活が回る」状態を維持しながら、痛みの軽快に合わせて段階的に調整します。急にやめるのではなく、数週単位で主治医と相談しながら微調整するのが安全です。
片足だけ痛いのもRPNですか?
RPNでも左右差はありえますが、片足だけの強い痛み・冷感・色の変化がある場合は血流障害や他の原因も考える必要があります。気になる場合は早めに受診してください。
自己判断で糖尿病治療を中断してもいいですか?
おすすめできません。血糖が乱れると別の合併症リスクが上がります。治療は続けつつ、必要に応じて「ペース」や薬の組み合わせを主治医と相談して整えるのが基本です。
受診の目安は?
痛みで眠れない、日常生活が回らない、症状が急に悪化する場合は早めにご相談ください。片足の急な冷感・色の変化、発熱や腫れ、急な脱力を伴う場合は急いで受診が必要です。

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📞 つらい足の痛み、我慢しないでご相談ください

「治療後に足が痛くて眠れない」「急にビリビリが強くなった」など、RPNが疑われる症状は早めの評価と痛みの調整が大切です。気になる症状がある方はお電話でご相談ください。

代表電話:047-467-5500

👨‍⚕️ この記事の監修医師

下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年病専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。

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