🔊 このページの要点(糖尿病教室②)
- 糖尿病治療の目的は「合併症を防ぎ、生活の質を守ること」です。
- 糖尿病は症状がないまま進むことがあるため、健診で指摘された段階が“始めどき”です。
- 日本では、糖尿病が強く疑われる者が約1,100万人と推計されています(国の調査)。

合併症予防と治療の目的を、やさしく整理します。
糖尿病治療は何のためにする?
「症状がないのに糖尿病治療は必要?」「HbA1cが少し高いだけでも薬が必要?」「忙しくて通院が続かない…」
――そんな疑問を持つ方は少なくありません。
糖尿病の治療は、つらい症状を抑えるためだけではなく、放置によって起こりうる合併症(目・腎臓・神経・心血管)を防ぎ、生活の質を守るために行います。
表:糖尿病治療のゴール
「数値を下げる」ことが目的ではなく、将来の合併症を防いで生活を守ることが目的です。
| 最終目標 | 合併症を予防し、元気に生活できる期間(健康寿命)を守る。 |
|---|---|
| 当面の目標 | 血糖だけでなく、血圧・体重・脂質なども含めて“安全に”整える。 |
| よくある誤解 | 「症状がない=放っておいてよい」ではありません。症状が出る頃には進んでいることがあります。 |
糖尿病治療の目的は「合併症を防ぎ、生活の質を守ること」
糖尿病は、初期には自覚症状が乏しいことが多い一方で、血糖が高い状態が長く続くと、目・腎臓・神経、そして心筋梗塞や脳卒中などの心血管イベントにつながるリスクが高まります。
だからこそ糖尿病治療は、「今つらい症状を抑える治療」というより、将来の合併症を予防して、日常生活を守るための治療です。
日常診療では、血糖値だけでなく、血圧・体重・血清脂質(コレステロール・中性脂肪)なども含めて、総合的に整えることが大切です。
でも、治療を受けていない方は少なくありません
表:日本の糖尿病に関する推計(国の調査)
数字は年で変動します。ここでは最新公表の概要に基づく要点だけを整理します。
| 糖尿病が強く疑われる者 | 約1,100万人(推計) |
|---|---|
| 糖尿病の可能性を否定できない者 | 約700万人(推計) |
| ポイント | 症状が出にくい一方で、気づいた時が対策の始めどきです。 |
働き盛りほど「受診・治療の継続」が難しいことがあります
健診で指摘されても忙しさから受診が遅れたり、途中で通院が途切れてしまうことがあります。糖尿病は「症状がないうちに手を打てる病気」なので、気になった段階で一度、状況整理だけでもしておくと安心です。
糖尿病を放置しないために(ここだけ覚えてください)
- 健診でHbA1cや血糖が高いと言われたら、まずは現状把握(採血・生活状況・合併症チェック)。
- 「薬=一生」と決めつけず、生活改善+必要なら薬を組み合わせて“安全に”進める。
- 目・腎臓・神経のチェックは、症状が出る前に行うのが大切。
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