糖尿病内科

糖尿病教室(3) インスリンの働きを知ろう。

12/04/2019

インスリンの働きがわかると糖尿病がわかる

糖尿病は、インスリンの「血糖値を下げる働き」が落ちるために起こります。
インスリンの分泌が落ちている場合(1型糖尿病など)、
インスリンが分泌されているけれども効いていない場合(2型糖尿病:インスリン抵抗性がメイン)
の2つに分けることができます。

ブドウ糖とインスリンの流れを「正常」と「インスリン作用不足」で比較した図(取り込み低下により血糖が高くなる)
図:ブドウ糖とインスリンの流れ(比較)
インスリンは血液中のブドウ糖を細胞に取り込ませる役割。作用不足では取り込みが弱くなり、血糖が高いままになりやすくなります。

インスリンって何?

インスリンは膵臓から出されるホルモンです。血糖を下げることができる唯一のホルモンです。

食事を摂ると血糖が上がりますが、すぐにインスリンも出され血糖値は下がります。
普通の人は、空腹時血糖は100mg/dL未満です。食後でも140mg/dLを超えません。
この狭い範囲に血糖がうまくコントロールされているのはインスリンのおかげと言って良いでしょう。

人類の歴史は、その大半が飢餓との戦いでした。獲物が取れれば食事にありつくことができますが、食料が得られなければ空腹の状態が続きます。
空腹だからといって血糖値が下がってしまえば動けなくなり、そのまま死んでしまいます。
そのため、飢餓状態でも血糖を上げる機構が必要です。ヒトを含む動物には血糖値を上げるホルモン(インスリン拮抗ホルモン)が複数備わっています(低血糖を防ぐため)。

一方で、血糖値を下げるホルモンはインスリンしかありません。
3食しっかり食べられて、しかも美味しくてカロリーが高い食べ物がいくらでも手に入る現代では、インスリンの作用が追いつきにくい人が増えます。

皮肉なことですが、腹いっぱい食べられる時代になって、この病気が増えてきたのです。

図解を詳しく見る(食後の血糖とインスリンの流れ)

食後の血糖とインスリンの流れ

「食事 → 吸収 → インスリン分泌」のポイントだけ、3枚で確認します。

ご飯を食べます。ご飯はデンプンです。

ご飯を食べます。ご飯はデンプンです。

ご飯に含まれるデンプンは、ブドウ糖が多数連なったものです。咀嚼され、胃を経て小腸に運ばれます。

ブドウ糖が小腸から吸収される

ブドウ糖が小腸から吸収される

ブドウ糖は小腸から吸収され、血液中に入ります。ここから血糖が上がり始めます。

たちまち膵臓からインスリンが分泌される

たちまち膵臓からインスリンが分泌される

血糖が上がり始めると、膵臓からインスリンが分泌され、各組織への取り込みが進みます。

インスリンは肝臓・骨格筋・脂肪細胞で作用する

ブドウ糖が取り込まれる先は、肝臓、筋肉(骨格筋)、脂肪(脂肪細胞)です。

インスリンによりブドウ糖が取り込まれる主な場所(肝臓・骨格筋・脂肪細胞)を示す図
図:インスリンが作用する場所
ブドウ糖の主な取り込み先は「肝臓・骨格筋・脂肪細胞」です。

血液中のブドウ糖は、インスリンによって肝臓、骨格筋、脂肪細胞に取り込まれます。

  • 肝臓:ブドウ糖はグリコーゲンに変えられて貯蔵され、絶食時には放出されて低血糖を防ぎます。
  • 骨格筋:ブドウ糖はエネルギー源として利用されます。
  • 脂肪細胞:ブドウ糖は脂肪として蓄えられます。

インスリンはこのようにして血糖を下げています。

インスリンが足りていない、効果が不十分な場合にはどうなる?

インスリンが足りない(インスリン分泌不足)、
あるいはインスリンが効いていない(インスリン抵抗性
場合には、血液中から肝臓・筋肉・脂肪細胞へのブドウ糖の取り込みが弱くなります。

その結果、血液中にブドウ糖が残りやすくなり(=血糖値が下がりにくい)、高血糖につながります。
これが、糖尿病で血糖が下がりにくい理由です。

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