α-グルコシダーゼ阻害薬

26/09/2018

α-グルコシダーゼ阻害薬の作用と副作用

α-グルコシダーゼ阻害薬の作用

α-グルコシダーゼ阻害薬の作用

α-グルコシダーゼ阻害薬は、小腸上部(十二指腸)においてα-グルコシダーゼを強力に阻害します。
通常、糖質は小腸上部において急激に消化・吸収されますが、α-グルコシダーゼ阻害薬の作用によって空腸から回腸へと移動する過程で緩やかに消化・吸収されるようになります。
その結果、血糖値のピークが時間的に後ろにずれ、かつピークの値も下がります。α-グルコシダーゼ阻害作用を十分なものにするためには、食事を食べ始める前に服用しておく必要があります。

ブドウ糖を携帯してください!

砂糖では低血糖からの回復に時間がかかる。

α-グルコシダーゼ阻害薬はデンプンなどの多糖類や砂糖などの二糖類の消化のスピードを遅くすることで、食後に血糖値が急に上昇するのを防ぐ薬です。
ブドウ糖は単糖類なのですぐに身体に吸収されますが、砂糖は二糖類ですからブドウ糖になるまで消化されてから吸収されます。低血糖時に砂糖(ショ糖)を摂取しても、血糖値の上昇は遅いです。α-GIと他の糖尿病治療薬、特にインスリン分泌促進作用をもつ薬剤との併用により低血糖を生じた場合は、ショ糖ではなくブドウ糖等の単糖類を服用する必要があります。α-グルコシダーゼ阻害薬を服用されている方は、ブドウ糖を携帯してください。

アカルボースのエビデンス

STOP-NIDDM

アカルボースの心血管イベント抑制・2型糖尿病発症抑制作用

IGT(食後高血糖=予備軍です)アカルボース投与群(青線)は、偽薬群(赤線)に比べ2型糖尿病の発症を36%、心血管疾患の発症を49%抑制することが示されました。

Chiasson JL, Josse RG, Gomis R, Hanefeld M, Karasik A, Laakso M, STOP-NIDDM Trial Research Group: Acarbose treatment and the risk of cardiovascular disease and hypertension in patients with impaired glucose tolerance: the STOP-NIDDM trial. JAMA 2003; 290: 486-494.

ボグリボースのエビデンス

Victory Study ボグリボースのエビデンス

ボグリボースの2型糖尿病発症抑制作用

日本人の高リスクIGT(糖尿病予備軍)症例において、生活習慣の改善に加えてボグリボース治療を行うことにより2型糖尿病発症が予防されることが示されました。2型糖尿病発症リスクはボグリボース投与群(赤の線)で偽薬群(破線)に比べて有意に低く、血糖が正常化した割合もボグリボース群で有意に高いことがわかりました。

Kawamori R, Tajima N, Iwamoto Y, Kashiwagi A, Shimamoto K, Kaku K, Voglibose Ph-3 Study Group: Voglibose for prevention of type 2 diabetes mellitus: a randomised, double-blind trial in Japanese individuals with impaired glucose tolerance. Lancet 2009; 373: 1607-1614.

アカルボース(グルコバイ)、ボグリボース(ベイスン)、ミグリトール(セイブル)の副作用

消化器症状の副作用が有名です。
腹部膨満感、放屁などがよくみられ、下痢や排便回数増加、便秘もみられます。
消化器症状の発生頻度は、投与を少量より開始し漸増することで減らすことができます。症状が出現しても投与を継続するうちに徐々に消失することもあります。投薬の際に、この点をしっかり説明すると患者さんの不安を軽減できます。
頻度は低いものの、腸管ガスの増加により腸閉塞様症状をみることがあるため、開腹手術や腸閉塞の既往のある患者さんでは特に注意が必要です。