動脈硬化、最近の研究ではどうなっているか。
動脈硬化は、血管が慢性的に炎症を起こすことによって起こります。
血管内皮細胞(動脈の内側を覆っている膜)が高血糖、高血圧、LDL-コレステロール、喫煙、ストレスなど様々な原因により損傷します。下図のように損傷した部分からは血液中のLDLコレステロールなどの有害物質が侵入し、血管壁を厚くし血管が狭くなり、その結果動脈硬化が生じるとして説明してきました。血管平滑筋細胞(動脈を構成する筋肉です)、炎症細胞の役割で説明するものが大半でした。こういう考えのもと、アスピリン、スタチンなどが推奨されてきたわけです。
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血管内皮細胞が傷害されることで生じる動脈硬化モデル
最近の動脈硬化研究は、血管外膜脂肪組織に注目している
血管周囲脂肪組織 (perivasucular adipose tissue:PVAT)が内分泌組織としての機能を持っており、TNF-α等の炎症性サイトカインや、抗炎症作用をもつアディポネクチン等、多数のサイトカインを分泌することが明らかになってきました。
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PVATが分泌する炎症性サイトカインが冠動脈スパズムを誘発し、狭心症をもたらす。
Kazuma Ohyama, et al: European Cardiology Review 2019;14(1):6–9.
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頸動脈から、大腿動脈まで、太い動脈周囲にはPVATが存在します。
心臓の冠状動脈のPVATである心外膜脂肪組織(epicardial adipose tissue:EAT)でも、TNF-αやインターロイキン1βやIL-6等の炎症性サイトカインが分泌されることが明らかになっています1)。
1) Mazurek T, et al: Human epicardial adipose tissue is a source of inflammatory mediators.Circulation. 2003 Nov 18;108(20):2460-6.
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血管周囲脂肪組織と動脈硬化病変の関係
最近の研究では、EATの容積と冠動脈病変の存在や冠動脈イベント発症との関連が示されています2)3)。
2)Dagvasumberel M, et al :Cardiovasc Diabetol. 2012 Sep 10;11:106.
3)Hirata Y, et al: J Am Soc Echocardiogr. 2015 Oct;28(10):1240-1246.
2017年、SGLT2阻害薬のカナグリフロジンがEAT容積を減少させることが報告されています。SGLT2阻害薬は心血管イベント抑制、心血管死の抑制が示されており4)、EAT減少が生命予後の改善に関与している可能性があります1)。
4) Yagi S, et al: Diabetol Metab Syndr. 2017 Oct 4;9:78.
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カナグリフロジンはEATを減少させる
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カナグリフロジンはEATを減少させる