動脈硬化性疾患を診る

29/09/2018

動脈硬化

近年,食生活の欧米化など,ライフスタイルの変化により,日本人の急性心筋梗塞などの虚血性心疾患が増加していることが報告されている.虚血性心疾患が増加している一因としては,動脈硬化の進展に寄与する心血管イベントリスク因子である生活習慣病を合併している患者の増加があげられるが,なかでも特に糖尿病は心血管死のリスクが高いことが報告されており,これらの患者の大血管障害・微小血管障害と併せて,患者の健康寿命は大いに損なわれている.このような患者には,脂質・血糖・血圧を中心とした治療管理によって心血管イベントの発症を予防することが重要であることはいうまでもない.循環器内科の役割は大きい.

2012年に改訂された日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012年版」では,糖尿病があればカテゴリーⅢに分類され,LDL-Cの目標値は120未満となる.また,冠動脈疾患の既往があれば,LDL-Cの目標値は100未満となる.

しかし近年,海外のガイドラインでは,動脈硬化性心血管疾患をより強力なスタチンを用いて減少させることを目指しており,日本人においてこの高強度スタテン療法が動脈硬化性心血管疾患のさらなる抑制に有効であるかは議論のあるところである.

頸動脈エコーによるIMTの測定は,手技を修得すれば非侵襲的に簡便に日常診療のなかで実施でき,糖尿病患者をはじめとした心血管イベントハイリスク患者のリスク評価に有用な検査であるといわれている.実際に頸動脈IMTと心血管イベント・脳血管イベント発症リスクの関連性についての報告は国内外で多数報告されている.