🔊 このページの要点
インスリンポンプ療法(CSII)は、細い針をお腹に留置して24時間少量ずつインスリンを送り続ける治療です。食事のときはボタン操作で追加インスリンを出せるため、自然なインスリン分泌に近いコントロールが期待できます。CGMと組み合わせたSAP・ハイブリッド閉ループ(MiniMed 780Gなど)は、自動でベーサル調整や自動補正ボーラスも行えるようになってきました。しもやま内科では、1型糖尿病を中心に、ライフスタイルや血糖パターンをふまえてポンプ療法を提案しています。
「インスリンを何回も打つのがつらい」「学校や仕事中に注射しづらい」「血糖の上下がどうしても大きくなる」──そんな方にとって、インスリンポンプ療法(CSII)は有力な選択肢です。
このページは、インスリンというホルモンの基礎を解説した
「インスリンとは?(基礎編)」、
インスリン注射全体の考え方をまとめた
「インスリン治療について(総論)」
の次のステップとして、ポンプ療法(CSII)・SAP・ハイブリッド閉ループについて整理したハブページです。

インスリンポンプ療法(CSII)とは?
インスリンポンプ療法(CSII:Continuous Subcutaneous Insulin Infusion)は、腹部の皮下に柔らかいカニューレを留置し、ポンプ本体から24時間少量ずつインスリンを注入し続ける治療です。
- ベーサル(基礎)インスリン:時間帯ごとに流量を細かく設定できる
- ボーラス(追加)インスリン:食事の量や血糖に応じて、ボタン操作で追加注入
ペンでの強化インスリン療法(MDI)と同じく「基礎+追加」の考え方ですが、ポンプでは
- 時間帯ごとにベーサルを細かく変えられる
- 一回あたりの投与量を0.05〜0.1単位などきめ細かく調整できる
- お腹を出さずに服の上からボタン操作だけでボーラスを出せる
といったメリットがあります。
SAP・ハイブリッド閉ループとは?
近年は、インスリンポンプに持続血糖測定器(CGM)を組み合わせた
SAP(Sensor Augmented Pump:センサー付きポンプ)や、
AIアルゴリズムでベーサルや補正ボーラスを自動調整するハイブリッド閉ループが普及してきました。
- ポンプがCGMの血糖値を読み取り、低血糖予測時にベーサルを自動停止
- 高血糖が続くときに、自動でベーサル増量や自動補正ボーラスを行う(MiniMed 780G など)
これにより、従来のCSIIに比べて血糖の安定化(Time in Range向上)や夜間低血糖の減少が期待できます。一方で、センサー貼付や頻回のキャリブレーションなど、患者さん側の協力も欠かせません。
どんな方にインスリンポンプ療法が向いている?
インスリンポンプ療法は、すべての糖尿病患者さんに必要というわけではありません。おおよそ次のような方が対象になります。
- 1型糖尿病でMDIでも血糖変動が大きい、低血糖が多い、夜間や明け方だけ血糖が上がるなど、コントロールが難しい方
- 妊娠中・妊娠希望で、より良好な血糖コントロールが望ましい方
- 小児・思春期で、学校生活とインスリン注射の両立が難しい方
- シフト勤務など生活リズムが不規則で、時間帯ごとのベーサル調整が必要な方
- 頻回の低血糖や無自覚低血糖があり、CGMと組み合わせた安全性向上が望まれる方
2型糖尿病でも、長期経過でインスリン分泌が枯渇しMDIでも安定しない場合には、ポンプ療法を検討することがあります。
しもやま内科で使用する主なポンプ・機種
しもやま内科では、患者さんのライフスタイルや希望に応じて、以下のようなインスリンポンプ・SAPを使用しています。
- MiniMed 780G(メドトロニック):ハイブリッド閉ループ機能を備えたポンプ。自動ベーサル調整と自動補正ボーラスが特徴。
- メディセーフ ウィズ(テルモ):シンプルなCSIIとして使いやすく、細かなベーサル調整が可能。
各機種の詳しい特徴や、実際の画面・設定例については、それぞれの機種専用ページで解説します。
1型糖尿病の方や、より詳しいポンプ治療の内容を知りたい方はこちらもご覧ください。
インスリンポンプ(CSII)の主要機種を、機能・操作性・CGM連携の観点で比較します。しもやま内科では適応評価から導入、フォローまで糖尿病専門医が一貫してサポートします。
✅ 要点まとめ
- インスリンポンプ(CSII)は持続的にインスリンを注入する治療法で、1型糖尿病や強化療法が必要な2型糖尿病に有効
- 主要機種:メディセーフウィズ(国産パッチ式、簡便)/MiniMed 780G(自動補正・CGM連携)
- 選択のポイントは生活スタイル、操作性、CGMとの連携、自動補正機能の有無
- しもやま内科では導入相談から保険申請、フォローアップまで糖尿病専門医が一貫して対応
- 患者さん一人ひとりに合った最適なポンプ機種選択をサポート

インスリンポンプの選び方|主な機種の特徴を比較
インスリンポンプ療法(CSII)は、インスリンを持続的に皮下へ注入する治療法で、特に1型糖尿病や強化インスリン療法が必要な2型糖尿病の方に有効です。
近年、さまざまなタイプのポンプ機器が登場し、患者さんのライフスタイルや希望に合わせた選択が可能になっています。
主要機種の比較表
| 機種名 | メディセーフウィズ | メドトロニック 780G |
|---|---|---|
| 開発元 | テルモ(日本) | メドトロニック(米国) |
| 形状 | パッチ式(本体を直接貼付) | チューブ式(携帯型) |
| CGM連携 | なし(別途使用可能) | あり(Guardian Sensor 4) |
| 自動インスリン補正 | なし | あり(自動補正ボーラス) |
| 操作方法 | スマートフォン型リモコン | 本体操作・専用アプリ |
| 特徴 | 国産・コンパクト・導入しやすい | 先進機能・自動制御・CGM一体型 |
| 導入相談 | ▶ 詳細ページへ | ▶ 詳細ページへ |
どう選べばいい?
ポンプの選択は、日常生活のスタイル・操作のしやすさ・血糖変動の傾向などに応じて異なります。
例えば、コンパクトさや日本語対応を重視する方にはメディセーフウィズが適しています。一方で、血糖の自動補正やCGM連携による予防制御を重視する方には780Gが有力です。
インスリンポンプ療法のメリット・デメリット
メリット
- 時間帯ごとのベーサル調整により、夜間・早朝の高血糖や低血糖に柔軟に対応できる
- ボーラスを細かく設定でき、食事の量やタイミングに合わせやすい
- お腹を出して注射しなくても、服の上からボタン操作だけで追加インスリンを出せる
- SAP・ハイブリッド閉ループでは、血糖変動の縮小やTime in Rangeの改善が期待できる
デメリット・注意点
- ポンプ本体・消耗品(カニューレ・リザーバーなど)の費用がかかる
- 常にカニューレを装着するため、慣れるまで違和感を感じることがある
- チューブ閉塞・カニューレ抜去などでインスリンが入らない状態になると、短時間でケトーシスに進行しうる(特に1型糖尿病)
- 機械の操作・設定を理解し、定期的な交換や自己チェックを行う必要がある
「自分にとってメリットがデメリットを上回るかどうか」を一緒に検討することが重要です。
しもやま内科でのインスリンポンプ導入の流れ
しもやま内科では、おおむね次のような流れでインスリンポンプ療法を検討・導入します。
- 外来でのご相談・適応評価
現在の血糖コントロール、低血糖の頻度、ライフスタイルなどを伺い、ポンプ療法の適応があるかどうかを検討します。 - 機種選択と説明
MiniMed 780G やメディセーフ ウィズなど、候補となる機種の特徴・必要な自己管理の内容をご説明し、一緒に選択します。 - 導入時の教育
カニューレの付け替え方法、ベーサル・ボーラス設定、シックデイ時の対応などを丁寧に練習します。 - 導入後のフォローアップ
CGMデータや自己測定値を確認しながら、ベーサル設定やボーラスのパターンを微調整します。必要に応じて電話・FAXでのフォローも行います。
インスリンポンプ療法に関するよくある質問
Q1. インスリンポンプにすると、もう注射をしなくて済みますか?
日常的なインスリン投与はポンプから行うため、ペンでの自己注射回数は大幅に減ります。ただし、トラブル時のバックアップとしてペン製剤を持っておくことが推奨されます。
Q2. 仕事中や学校で、ポンプが目立ちませんか?
ポンプ本体は小型で、ポケットや衣服の下に装着できます。チューブがある機種でも、服の内側に沿わせれば外からはほとんど見えません。
Q3. 旅行や入浴のときはどうすればよいですか?
防水性能のある機種では装着したまま入浴・水遊びが可能な場合もありますが、多くは一時的に外す必要があります。その間のベーサルをどうカバーするかも含め、導入時に個別に説明します。
Q4. すべての1型糖尿病患者がポンプにしたほうが良いのでしょうか?
ポンプ療法は非常に有効な選択肢ですが、機械の操作や管理に負担を感じる方もいます。MDIで十分安定している方は、そのままの治療が適している場合もあります。一人ひとりの状況に応じて判断が必要です。
船橋市でインスリンポンプ療法(CSII・SAP)を検討している方へ
しもやま内科は、東葉高速線「飯山満駅」徒歩圏内にある内科・糖尿病内科・甲状腺内科のクリニックです。船橋市をはじめ、習志野市・八千代市・鎌ケ谷市など近隣エリアから、1型糖尿病・高度な治療が必要な2型糖尿病の患者さんが通院されています。
- 糖尿病専門医によるインスリンポンプ療法(CSII)・SAPの導入とフォロー
- MiniMed 780G などハイブリッド閉ループ機器の設定・運用サポート
- メディセーフ ウィズなど各種ポンプの比較検討・機種選択の相談
「ポンプ療法に興味はあるが自分に向いているかわからない」「現在の治療で血糖が安定しない」といったお悩みも、お気軽にご相談ください。
インスリンポンプ療法のご相談・ご予約はお電話で承ります
☎ 047-467-5500
※Web予約は行っておりません。お手数ですが診療時間内にお電話ください。
👨⚕️ この記事の監修医師
しもやま内科 院長
日本内科学会 認定内科医・総合内科専門医
日本糖尿病学会 専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年科専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医糖尿病、甲状腺疾患、循環器疾患、老年期疾患などの診療に長年携わり、インスリンポンプ療法やSAPを含む高度な糖尿病治療にも取り組んでいます。