🔊 このページの要点
甲状腺の「しこり(結節)」は良性が多い一方、悪性も含まれます。まず超音波と採血で評価し、必要に応じて細胞診や画像検査を追加。所見に応じて「経過観察」か「精査・治療」へ分岐します。
本ページは、甲状腺の「しこり(結節)」についての総論・ハブです。用語の整理、代表的な原因、診断の考え方、良性/悪性の分岐と各子ページへの導線をまとめました。健診で指摘された直後の方は 「健診で指摘された方へ(LP)」 もご覧ください。
用語の整理(結節・腫大・炎症)
- 結節(nodule):甲状腺内に限局した“しこり”。単発/多発、充実性/嚢胞性など。
- 腫大:甲状腺全体が大きく見える状態(びまん性)。橋本病などで見られる。
- 炎症:無痛性甲状腺炎・亜急性甲状腺炎など、一過性に腫れることがある。
しこりの主な原因
- 良性結節:腺腫様甲状腺腫、嚢胞、濾胞腺腫 など
- 慢性炎症による腫大:橋本病(慢性甲状腺炎)
- 悪性腫瘍:乳頭癌、濾胞癌、髄様癌、まれに未分化癌
- 一過性の炎症:無痛性甲状腺炎、亜急性甲状腺炎
診断アルゴリズム(超音波→採血→FNA)
- 甲状腺超音波(エコー):形状・境界・内部エコー・石灰化・血流・頸部リンパ節を評価。
- 採血:TSH・FT3/FT4、必要に応じて自己抗体・腫瘍関連マーカー。
- 穿刺吸引細胞診(FNA):エコー所見やサイズ基準に基づき施行。
- 追加画像:状況によりCT/MRI、シンチグラフィーなど。
※ 詳細なFNA適応や経過観察間隔は、エコー所見・年齢・合併症を総合して個別に決定します。
良性/悪性の分岐と「次の一手」
良性と判断された場合
- 定期エコーでサイズ・所見の変化を確認
- 症状・サイズ次第で穿刺吸引や手術を検討
- ▶ 良性の甲状腺結節(解説)
悪性が疑われる/診断された場合
- 病型・進行度評価(頸部リンパ節、遠隔転移の有無)
- 手術の可否と範囲を検討、必要に応じ放射性ヨウ素や薬物療法
- ▶ 甲状腺がん(総論)
自立性機能性甲状腺結節(AFTN)
AFTN(Autonomously Functioning Thyroid Nodule)は、TSHに依存せず甲状腺ホルモンを産生する良性の機能性結節です。甲状腺中毒症の原因となることがあり、一般的にホットノードとして検出されます。
検査の流れ
- 採血:FT3/FT4高値、TSH低値(抑制)
- エコー:内部構造・血流・石灰化の評価
- アイソトープシンチ(123I または 99mTc):結節の機能評価
治療の考え方
- 外科的切除(葉切除):若年者・結節が大きい・審美面など
- 放射性ヨウ素治療(131I):高齢者・再発例・手術困難例など
- 抗甲状腺薬は一時的な対症療法として用いられることがあります
ポイント:良性でも機能亢進がある場合は対応が必要です。評価は専門医にご相談ください。
📄 よくあるご質問(FAQ)
良性の可能性はどのくらい?
多くは良性です。エコー所見と必要に応じた細胞診で慎重に評価します。
橋本病が原因の腫大もありますか?
はい。自己免疫による慢性甲状腺炎で全体が腫れるケースがあります。
採血で何がわかりますか?
甲状腺ホルモンの状態、自己抗体、状況に応じて腫瘍関連マーカーを確認します。
FNA細胞診は痛い? 危険は?
短時間で終わる検査で、重い合併症はまれです。必要に応じ局所麻酔を使用します。
小さければ経過観察でよい?
サイズとエコー所見、年齢・合併症などを総合して観察間隔を決めます。
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👨⚕️ この記事の監修医師
下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年病専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年病専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医
糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。