📘 要点
- 2型糖尿病の約50〜70%に脂肪肝が合併します
- MASLDの約20%がMASHへ移行するとされています
- 脂肪肝があると、心筋梗塞や脳卒中のリスクが2〜3倍になります
- SGLT2阻害薬でALTが8〜12U/L程度下がると報告されています
- 体重を5〜10%減らすことが、肝機能改善に役立ちます
- ALTが高い状態が続くときは、早めにご相談ください
糖尿病と脂肪肝(MASLD/MASH)は密接に関連しています。2型糖尿病の約50〜70%に脂肪肝が合併し、肝機能(ALT/AST)上昇の原因となります。当院では糖尿病治療と同時に脂肪肝の管理を行い、SGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬などを活用して肝機能改善を目指します。
糖尿病と脂肪肝は切っても切れない関係です。2型糖尿病の約50〜70%に脂肪肝が合併し、放置すると肝硬変や肝がんのリスクが高まります。当院では糖尿病と脂肪肝を同時に管理し、肝機能改善を目指します。
糖尿病と脂肪肝(MASLD/MASH)の関係とは?
糖尿病と脂肪肝は双方向に影響し合う関係にあります。
| 項目 | 糖尿病が脂肪肝を悪化させる理由 | 脂肪肝が糖尿病を悪化させる理由 |
|---|---|---|
| インスリン抵抗性 | 肝臓でのインスリン抵抗性↑ | 肝臓からの糖放出増加 |
| 炎症・酸化ストレス | 肝細胞への負担増 | 全身のインスリン抵抗性↑ |
| 治療への影響 | 一部の薬で肝機能に注意が必要 | 肝機能低下で薬剤選択が制限される場合あり |
MASLDとMASHの違いを知る
2020年に国際的な脂肪肝の名称が見直され、従来のNAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)・NASH(非アルコール性脂肪性肝炎)は、それぞれMASLD(代謝関連脂肪性肝疾患)・MASH(代謝関連脂肪性肝炎)へと移行しました。
| 項目 | MASLD(旧NAFLD) | MASH(旧NASH) |
|---|---|---|
| 定義 | 代謝異常に伴う脂肪蓄積のみ | 脂肪蓄積+炎症+肝細胞障害 |
| 進行リスク | 比較的低い(安定する場合が多い) | 高い(線維化・肝硬変へ進行) |
| 診断方法 | エコー・血液検査で推測 | 肝生検または画像+線維化マーカー |
| 病態 | 単純性脂肪肝(steatosis) | 脂肪性肝炎(steatohepatitis) |
MASLDと診断されても、多くの方は進行しません。しかし、約20%がMASHへ移行し、さらにその一部が線維化・肝硬変へ進むため、定期的な評価が重要です。特に糖尿病がある方はMASHへの移行リスクが高いため、積極的な管理が必要です。
なぜ糖尿病で肝機能(ALT/AST)が上がるのか?
糖尿病の方はインスリン抵抗性により、肝臓に脂肪が溜まりやすくなります(MASLD)。肝細胞に脂肪が蓄積すると炎症が起こり、肝機能指標(ALT・AST)が上昇します。
- ALT(GPT):肝細胞の炎症を示す指標。脂肪肝で上昇しやすい
- AST(GOT):肝細胞・心筋・骨格筋に存在。肝臓の炎症が進行すると上昇
- γ-GTP:アルコール以外でも脂肪肝で上昇することが多い
肝機能の数値(ALT/AST)が高い状態が続く場合は、脂肪肝(MASLD/MASH)の可能性が高く、早期の介入が肝機能改善につながります。
肝機能障害・脂肪肝を合併している場合のリスク
脂肪肝を放置すると、以下のように進行します:
脂肪肝(MASLD)→ 脂肪性肝炎(MASH)→ 肝線維化 → 肝硬変 → 肝がん
特に注意が必要なのは:
- 心血管イベントリスク増加:脂肪肝があると心筋梗塞・脳卒中リスクが2〜3倍
- 腎機能低下:糖尿病+脂肪肝で腎症進行が加速
- がんリスク:肝がんだけでなく大腸がんなども増加
SGLT2阻害薬と脂肪肝治療
近年、糖尿病治療薬であるSGLT2阻害薬(SGLT2i)が脂肪肝(MASLD/MASH)にも有効であることが複数の臨床試験で示されています。SGLT2阻害薬は腎臓での糖再吸収を抑制することで血糖を下げると同時に、体重減少や内臓脂肪減少を促し、肝臓の脂肪蓄積を改善します。
SGLT2阻害薬の脂肪肝への効果:
- ALT・ASTの低下:複数の研究で8〜12U/L程度のALT低下が報告
- 肝脂肪量の減少:MRI-PDFF評価で脂肪含有量が有意に減少
- 線維化マーカーの改善:FIB-4 indexやM2BPGiの改善データあり
- 体重減少効果:2〜4kgの減量が脂肪肝改善に寄与
当院では、糖尿病と脂肪肝を併せ持つ患者さんに対して、SGLT2阻害薬を積極的に選択しています。特に肝機能(ALT/AST)が高い方には第一選択肢の一つとしてご提案しています。
当院での糖尿病+脂肪肝の管理方針
当院では、糖尿病と脂肪肝を包括的に管理します:
- 定期的な血液検査:HbA1c・血糖値と同時にAST・ALT・γ-GTPをモニタリング
- 肝臓エコー:脂肪蓄積の程度を視覚的に評価
- Fib-4 index:線維化(硬さ)の進行を簡易的にスクリーニング
- 必要時精密検査:FibroScan(肝硬さ測定)やMRI-PDFFなど
肝機能改善に有効な治療アプローチ(薬・生活習慣)
| 薬剤クラス | MASLD/MASHへの影響 | ALT/AST改善のエビデンス | 注意点 |
|---|---|---|---|
| SGLT2阻害薬 | 良好(脂肪減少+肝機能改善) | 複数試験でALT 8〜12U/L低下 | 脱水・腎機能確認 |
| GLP-1受容体作動薬 | 非常に良好 | 肝脂肪・炎症抑制のエビデンス蓄積 | 消化器症状 |
| メトホルミン | やや良好 | 軽度のALT改善 | 腎機能確認 |
| チアゾリジン薬(ピオグリタゾン) | 良好(MASHにも有効) | 肝炎症改善のエビデンスあり | 体重増加・浮腫 |
| インスリン | 状況による | 血糖コントロールで間接的改善 | 低血糖・体重増加注意 |
糖尿病の薬による肝機能改善は、血糖コントロールの改善と体重減少が主なメカニズムです。特にSGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬は、脂肪肝に対する直接的な効果も期待できます。当院では肝機能の程度や患者さんの状態に応じて最適な薬剤を選択します。
線維化進行を防ぐために重要なこと(Fib-4 indexなど)
肝臓の線維化(硬さ)を簡易的に評価するFib-4 indexは、以下の計算式で算出されます:
Fib-4 index = (年齢 × AST) ÷ (血小板数 × √ALT)
- <1.3:線維化の可能性低い
- 1.3〜2.67:グレーゾーン(要経過観察)
- >2.67:高度線維化の可能性(精密検査推奨)
当院では、Fib-4 indexが高い方や経過観察が必要な方に、FibroScan(肝硬さ測定)やエラストグラフィーを実施し、線維化の程度を正確に評価しています。
| ALT/ASTを改善する生活習慣ポイント |
|---|
|
こんな症状は早めに相談を
肝臓に関する以下の症状がある場合は、早めに受診してください:
- 皮膚や白目が黄色い(黄疸)
- 強い倦怠感が続く
- お腹が張る(腹部膨満・腹水)
- 足や顔のむくみ
- 出血しやすい・あざができやすい
- 急激な体重減少
糖尿病で肝機能が気になる方も、お気軽にご相談ください。
主な参考資料:日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」(南江堂、2024年5月30日発行)/日本呼吸器学会(監修)「睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020」(南江堂、2020年発行)
作成・更新:2026-08-28|本ページは一般的な医学情報の提供を目的としたものです。診断・治療については受診のうえご相談ください。
監修医師について
監修:下山 立志(しもやま たつし)
船橋市しもやま内科 院長。日本糖尿病学会専門医・日本内科学会認定医。糖尿病と脂肪肝(MASLD/MASH)の関連診療を専門とし、SGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬を含む最新の薬物療法と生活習慣指導を組み合わせた包括的な治療を提供しています。
よくある質問(FAQ)
糖尿病で肝機能が上がるのはなぜですか?
脂肪肝があると糖尿病の治療はどう変わりますか?
MASLDとMASHの違いは?
肝機能の数値(ALT/AST)が高いとどうすれば?
SGLT2阻害薬は脂肪肝に効く?
糖尿病の薬で肝機能は改善する?
ALT/ASTが高い場合、どのタイミングで専門医を受診すべきですか?
線維化が進んでいるかどうかはどうやって調べるのですか?
糖尿病の薬は肝臓が悪いと使えないことがありますか?
肝硬変だとHbA1cやグリコアルブミン(GA)が当てにならないのですか?
受診の目安は?どんなときに早めに相談すべきですか?
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最終更新日:2026-08-28
👨⚕️ この記事の監修医師
下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年科専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医
糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。