自覚症状がなくても着実に進む糖尿病合併症
糖尿病の自覚症状は、かなりひどくならないと生じない
糖尿病の自覚症状といえば、喉が渇く、大量の水分を摂る、尿量が多い、急激にやせる、疲れやすい といったところが有名です。ところが、これらは糖尿病がひどくならないと生じません。軽い糖尿病の方は自覚症状のないケースが大半です。HbA1c 10%以上になれば自覚症状が出てくる方が増える印象がありますが、HbA1c 8%程度と決して良くない血糖コントロールであっても症状のない方はたくさんいらっしゃいます。
では、放っておいてよいのでしょうか?
答えはもちろん、NO!!です。
糖尿病の合併症を抑えるにはHbA1c 7%未満にしておく必要がある。
日本の研究、欧米の研究、色々ありますが、まとめると、HbA1c7%以下にしておけば合併症リスクは低く抑えられます。それより高い状態で放置すると合併症がじわじわと進んでしまいます。
HbA1c7%未満、は合併症予防のためにとても大事な目標です。
※近年の知見では、高齢者においてHbA1cを下げすぎると低血糖が増えてかえってリスクが増すことがわかっています。高齢者の血糖コントロール目標については、HbA1cから「質の良いHbA1c」の時代へ をご参照下さい。
糖尿病の3大合併症
糖尿病の3大合併症ですが、糖尿病では目に見えないような小さな血管がやられてしまいます(細小血管障害といいます)。そのような血管は全身にありますので全身がやられてしまいますが、特にそういった血管が多い、網膜、腎臓、神経がやられてしまいます。
し(神経障害)・め(網膜症)・じ(腎症)と覚えてください。
神経障害になると足の痛み、痺れ、感覚が鈍くなったり、便秘、下痢、立ちくらみがしやすくなります。
網膜症になると、視力が低下し、しまいには失明してしまいます。
腎症が生じると蛋白尿がでて腎不全となりむくんだり尿が作られなくなります。最終的には腎不全になり、人工透析が必要になります。
全身の太い血管もやられます。
え(壊疽)・の(脳梗塞)・き(虚血性心疾患)も覚えてください。
太い動脈の代表である手足の血管が詰まります。糖尿病性壊疽になり、下肢の切断に至ります。
脳の血管も詰まりやすくなります。糖尿病から脳梗塞を起こす方が非常に多いです。
心臓の動脈(冠状動脈)が詰まりやすくなります。詰まりかけは狭心症、完全に詰まってしまうと心筋梗塞です。生命にかかわります。
このように、糖尿病は自覚症状がなくてもじわじわと様々な合併症が進み、ある日突然倒れる病気です。
自覚症状がないからと放置せず、しっかり治療を受けてください。
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