まず結論:風邪の後に突然「首の前がズキズキ痛い」「熱がまた出る」という症状が出たら、亜急性甲状腺炎の可能性があります。多くは良性の一過性の炎症で、適切な治療で改善しますが、放置すると痛みが長引くことがあります。当院では採血・甲状腺エコー検査を初診当日に実施可能です。
亜急性甲状腺炎は、「うつるの?」「バセドウ病とどう違うの?」「ステロイドは安全?」といった不安を抱きやすい疾患です。以下で詳しく解説します。
🔎 このページの要点
- 典型症状:首(のど仏周辺〜前頸部)の痛み・圧痛、発熱、倦怠感
- うつる? → 亜急性甲状腺炎そのものは感染しません(きっかけの風邪ウイルスはうつる可能性あり)
- 検査:CRP・赤沈上昇+FT4高値・TSH低値+エコーで低エコー域
- 治療:軽症は消炎鎮痛薬、痛みが強い場合は短期ステロイドが有効
- 治るまでの目安:多くは数週間〜数ヶ月で改善
亜急性甲状腺炎とは
亜急性甲状腺炎(de Quervain甲状腺炎)は、突然の「首の強い痛み」と「発熱」が特徴的な甲状腺の炎症です。風邪(ウイルス感染)の1〜3週間後に発症することが多く、30〜50代の女性に特に多く見られます。
よくある症状
- 首の前がズキズキ痛む(押すと痛い・飲み込み時に痛い・首を動かすと痛い)
- 37〜38℃台の発熱が続く
- 全身倦怠感・筋肉痛
- 動悸・手の震え・発汗(一時的なホルモン過剰による)
- 甲状腺が腫れて圧迫感がある
症状の出方と時期による変化
| 時期 | 主な症状 | ホルモン状態 |
|---|---|---|
| 急性期(発症後1〜4週間) | 強い首の痛み・発熱・倦怠感 | FT4高値・TSH低値(甲状腺中毒状態) |
| 回復期(1〜3ヶ月) | 痛みが徐々に軽減 | 一時的に低下傾向 |
| 回復期後半 | 症状ほぼ消失 | 正常化する |
| 稀な経過 | だるさ・むくみ・寒気が続く | 一時的な甲状腺機能低下 |
「うつるの?」→ 答えはいいえ
亜急性甲状腺炎そのものは感染症ではないため、うつりません。ただし、発症のきっかけとなった风邪ウイルス(上気道炎ウイルス)は家族や周囲にうつる可能性があります。
発熱・のどの痛みがあった後に「首の前が痛くなった」という特徴的な経過がポイントです。
バセドウ病・無痛性甲状腺炎との違い(鑑別が重要)
| 項目 | 亜急性甲状腺炎 | 無痛性甲状腺炎 | バセドウ病 |
|---|---|---|---|
| 首の痛み | 強い(圧痛あり) | なし | 稀 |
| 発熱 | あり(37〜38℃台) | 稀 | 稀 |
| CRP・赤沈 | 著明に上昇 | 正常〜軽度上昇 | 正常 |
| エコー所見 | 痛み部位に一致した低エコー域 | びまん性または軽度異常 | 血流増加・びまん性腫大 |
| 主な治療 | 消炎鎮痛薬±短期ステロイド | 経過観察(β遮断薬) | 抗甲状腺薬 |
| 経過 | 数週間〜数ヶ月で自然軽快 | 1〜3ヶ月程度 | 慢性(治療継続必要) |
※同じ「甲状腺ホルモンが高い」状態でも、治療が全く異なります。正確な鑑別が不可欠です。
診断基準(日本甲状腺学会ガイドライン2024準拠)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 定義 | 有痛性の破壊性甲状腺炎による甲状腺中毒症 |
| 臨床所見 | 有痛性甲状腺腫・圧痛 |
| 検査所見 | 赤沈・CRP高値、FT4高値、TSH低値 |
| エコー所見 | 内部低エコー域 |
(出典:日本甲状腺学会『甲状腺疾患診療ガイドライン2024』)
治療法
軽症例:消炎鎮痛薬(ロキソプロフェン等)で経過観察
中等症〜重症例:ステロイド(プレドニゾロン)を短期間使用。痛みは数日〜1週間で大きく軽減します。
動悸・不安感が強い場合:β遮断薬(プロプラノロール)で症状を和らげます。
治療期間は通常2週間〜数ヶ月。症状や血液データを見ながら段階的に減量・終了します。
経過の目安
| 時期 | 目安 |
|---|---|
| 発症から検査まで | 数日〜1週間以内に受診推奨 |
| 痛みが軽減するまで | 2〜4週間 |
| 完全に治るまで | 数週間〜数ヶ月 |
| 再発 | 稀(多くは一度の発症で落ち着く) |
よくある質問(FAQ)
Q. 亜急性甲状腺炎はうつりますか?
A. 亜急性甲状腺炎そのものは感染症ではないため、うつりません。ただし、発症のきっかけになった風邪ウイルスは周囲にうつる可能性があります。
Q. 首の前が痛いのは甲状腺の病気ですか?
A. 亜急性甲状腺炎のほか、胸鎖乳突筋の筋肉痛やリンパ節の腫れなども考えられますが、発熱を伴う場合は甲状腺の炎症の可能性が高くなります。早めの受診をおすすめします。
Q. バセドウ病との違いは?
A. バセドウ病は慢性的な自己免疫疾患で、抗甲状腺薬での長期治療が必要です。一方、亜急性甲状腺炎は風邪後に突然起こる一過性の炎症で、多くは数週間で改善します。首の強い痛み・発熱・CRP高値で鑑別できます。
Q. エコー検査で何がわかりますか?
A. 痛みのある部位に一致した低エコー域が見られるのが特徴です。バセドウ病との鑑別にも大きく役立ちます。当院では初診当日にエコー検査を実施できます。
Q. 治療しないとどうなりますか?
A. 軽症で自然軽快する例もありますが、放置すると痛みが長引いたり、ホルモン異常が悪化する場合があります。早期診断と適切な管理を推奨します。
Q. ステロイド治療は副作用が心配です。
A. 短期間・少量で使用する場合、副作用のリスクは低く抑えられます。必要最小限の期間で調整し、症状改善後は速やかに減量・中止します。
Q. 痛みはどれくらい続きますか?
A. 個人差はありますが、治療開始から2〜4週間で軽減することが多いです。消炎鎮痛薬やステロイド治療で痛みを速やかに和らげられます。
Q. 再発することはありますか?
A. 多くは一度の発症で落ち着きますが、まれに再発する例もあります。症状が再燃した場合は早めにご相談ください。
Q. 妊娠中でも治療は受けられますか?
A. 妊娠中は治療薬の選択に注意が必要です。消炎鎮痛薬やステロイドの使用について医師に必ずご相談ください。当院では妊娠中の方の診療も積極的に行っています。
Q. 費用はどのくらいかかりますか?
A. 初診+血液検査+エコー検査で、3割負担の場合、約6,000〜10,000円程度が目安です。保険診療の範囲で対応できます。
当院の診療体制
しもやま内科では甲状腺専門医が、採血・エコー検査を当日実施可能です。ガイドラインに沿った診断と、症状に合わせた治療・経過管理を行います。亜急性甲状腺炎の鑑別診断や治療開始をスムーズに行える体制を整えています。
院長からのメッセージ
「風邪が治ったはずなのに熱がまた出た」「首の前が痛い」という症状が出たら、亜急性甲状腺炎を疑ってください。適切な診断と治療で、多くの患者さんは数週間で楽になります。どうぞお気軽にご相談ください。
亜急性甲状腺炎のご相談
TEL: 047-467-5500
最終更新:2026-07-21 監修:下山立志(総合内科専門医・甲状腺専門医)
参考文献
- 日本甲状腺学会編『甲状腺疾患診療ガイドライン2024』
- 日本内分泌・甲状腺外科学会『甲状腺腫瘍診療ガイドライン』
- De Quervain F. Über eine subakute, chronisch entzündliche Thyreoiditis. Mitt Grenzgeb Med Chir. 1904
最終更新日:2026-07-21
👨⚕️ この記事の監修医師
下山 立志(しもやま たつし)
しもやま内科 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本循環器学会 循環器専門医
日本老年医学会 老年科専門医・指導医
日本甲状腺学会 甲状腺専門医
糖尿病、甲状腺、副腎など内分泌疾患の診療に長年従事し、地域密着型の総合内科医として診療を行っています。