甲状腺ホルモンと性ホルモン
甲状腺ホルモンをつくりだす甲状腺とは、喉仏の下、首の下の方にある小さな臓器です。小さいながらも身体にとっては必要不可欠な存在で、主に新陳代謝を盛んにさせる働きをしています。
一度、甲状腺異常が起こると全身のホルモンバランスが崩れ、それに追随して性ホルモンの分泌にも支障をきたします。
また、甲状腺ホルモンは成長を促す働きもあるので、卵胞の成長にも関与しています。正常な状態であれば問題ないのですが、甲状腺機能が低下してしまうと卵胞は発育することができないため、無排卵などの月経異常を引き起こします。反対に、甲状腺機能が亢進していれば月経期間が短くなる傾向があります。
甲状腺機能の異常には、次のようなものがあります。
甲状腺機能亢進症
その9割ほどがパセドウ病によって引き起こされています。
パセドウ病とは自己免疫疾患の一種で、体内で甲状腺を刺激する物質がつくられるために自身の甲状腺が過剰に刺激され、甲状腺ホルモンが通常よりも多く分泌してしまう疾患です。
この状態になると、異常に代謝が活発化してエネルギーを多く使うようになります。そのため、熱が産生されて発汗が促されたり、脈拍が速くなります。胃腸の動きも活発化しすぎてしまうので、下痢も引き起こされます。
甲状腺機能低下症
その多くは、慢性甲状腺炎(橋本病)が原因となって引き起こされています。
橋本病とは、体内に甲状腺を攻撃する物質ができることで甲状腺がダメージを受け、発症する自己免疫性疾患の一種です。
これが進行すると甲状腺機能低下症となります。症状としては、脈は遅くなり、むくみや疲れがみられるようになります。また、胃腸の働きも鈍るので便秘にもなりやすく、卵巣機能も低下します。
さらに、甲状腺ホルモンが出なくなるため、その分泌を促すホルモンが大量に放出されます。これが、同時にプロラクチンの分泌も促進させることになり、結果的に高プロラクチン血症も引き起こされます。そうなると、卵巣への抑制が働くようになりますので排卵障害や無月経になり、不妊症にもつながることになります。