亜急性甲状腺炎

19/06/2017

亜急性甲状腺炎

亜急性甲状腺炎

亜急性甲状腺炎の特徴

亜急性甲状腺炎は、甲状腺組織が炎症の為に壊れてしまい、甲状腺内に貯まっていた甲状腺ホルモンが血液中に漏れ出て甲状腺ホルモンが多い時の症状がでます。また、甲状腺が硬くはれ、その部位に痛みを感じます。この病気は自然に治っていきますが、症状が強い時は治療が必要です。40〜50歳代の女性に多く、20歳以下の人にはほとんど発症しません。また再発は少ないですが、1%程度みられます。

亜急性甲状腺炎の病理

亜急性甲状腺炎は、甲状腺に多核巨細胞と組織球からなる肉芽腫を形成する非化膿性炎症性疾患です。通常数か月で自然治癒する予後良好な疾患です。上気道感染が先行することが多く、ウイルス感染が原因と考えられていなすが、原因ウイルスは同定されていません。無痛性甲状腺炎と同様に、甲状腺組織の破壊に伴い、一過性の甲状腺中毒症状がみられます。

症状としては、動悸、息切れなどの甲状腺ホルモンが多い時の症状とともに、甲状腺の痛みや発熱などの症状がでます。炎症を起こした甲状腺は非常に硬いしこりのようにはれます。また、時々甲状腺の痛みと腫れは、右から左というように移動することがあります。

通常このような症状は、1〜2か月ほどで良くなっていきます。しかし、甲状腺が壊れる病気ですので、甲状腺の機能が回復するまでは一時的に甲状腺ホルモン量が低くなります。たいていの方はまた正常に戻りますが、まれにそのまま低い状態が続くことがあります。その時は、甲状腺ホルモン剤を長期間にわたって内服する必要があります。

検査所見ではCRPと赤沈が高値を示し、遊離T4が高値およびTSHが低値であり、甲状腺超音波検査で疼痛部に一致した低エコー域を認めるのが特徴です。除外診断として橋本病の急性増悪などがあります。

治療

本症の治療は甲状腺を中心とした頸部の疼痛と発熱に対する対症療法です。重症の場合プレドニゾロン30mg分3投与とし、1ないし2週毎に5mg漸減します。甲状腺機能、CRP、赤沈、超音波検査での低エコー領域の消失を確認してからプレドニソロンを中止します。治療開始後2,3日以内に疼痛などの症状は劇的に消失します。プレドニソロンの減量を急ぐと再燃することが少なくないので注意が必要です。軽症の場合は非ステロイド性抗炎症薬を投与して経過を観察してもよいでしょう。

亜急性甲状腺炎(急性期)の診断ガイドライン(参考文献2)より引用)
a)臨床症状
有痛性甲状腺腫
b)検査所見
1. CRPまたは赤沈高値
2.遊離T4高値. TSH低値(0.1μU/ml以下)
3.甲状腺超音波検査で疼痛部に一致した低エコー域
1)亜急性甲状腺炎
a)およびb)の全てを有するもの
2)亜急性甲状腺炎の疑い
a)とb)の1および2
除外規定
橋本病の急性増悪,嚢胞への出血,急性化膿性甲状腺炎,未分化癌
付記
1.上気道感染症状の前駆症状をしばしば伴い,高熱をみることも稀でない.
2.甲状腺の疼痛はしばしば反対側にも移動する.
3.抗甲状腺自己抗体は原則的に陰性であるが,経過中弱陽性を示すことがある.
4.細胞診で多核巨細胞を認めるが,腫瘍細胞や橋本病に特異的な所見を認めない.
5.急性期は放射性ヨード(またはテクネシウム)甲状腺摂取率の低下を認める.